大崎甜花が旅するポケットモンスターの世界+α   作:形のない者

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 この星の不思議な生き物ポケットモンスター……ちぢめてポケモン!
 今、甜花とポケモンたちの、出会いと冒険と戦いの物語がはじまる!



第6話 おおぐいすぎるポケモン! まだ見ぬ猛者!!!!!!

 午後2時。太陽も傾き始めた頃。1番道路を歩く大崎甜花は、手持ちのラルトスとロトム、そして同行者のハナコと共にマサラタウンを出たばかり。

 

「うーん。旅用の服だけじゃなくて、リュックサックも必要よねー。

 それと熱中症を避けるために帽子も必須だし……」

 

「あ、えと……でも、それだと……お金、いっぱい使っちゃうから……」

 

「あらやだ! そんな心配しなくていいのよ! これはハナコさんの出血大サービスなんだから! 腕によりをかけてコーディネートしてあげるから、覚悟なさーい!」

「あ……はい……」

 

 甜花は、思わぬハナコの迫力に、やや物怖じしてしまう。

 

「……あら?」

 

 その時、道路脇の草むらがガサガサと音を立て、一匹のポケモンが飛び出してきた。

 

「ゴンッ!」

「あら! 甜花ちゃん! あれはゴンベよ! さぁ急いで、ポケモンを出して戦うのよ!」

「えぇ……!?」

 

 野生のゴンベは、甜花たちの存在に気付くなり、鋭い目つきで臨戦態勢に入る。

 相手は戦う気満々。焦る甜花は動揺し、オロオロと慌ててしまう。

 

「……ロト……!」

 

 それを見るに見かねたロトムが、売られた喧嘩は買ってやると、誰よりも前に飛び出した。

 

「む、むーちゃん!?」

「ラルゥ!?」

 

 ラルトスは怯えるあまり、甜花の足にすがりついている。

 一方のハナコは眼光鋭く戦況を見据えており、甜花を叱咤した。

 

「今よ! 甜花ちゃん! ロトムに技を命令するの!」

「あ、えと……!」

 

 甜花はロトムが覚えている技を知らない。

 そのためポケットから図鑑を取り出そうとし、ロトムが覚えている技を確認しようとする。

 

『…………』

 

 そよぐ風の中、睨み合うロトムとゴンベ。

 一触即発の雰囲気の中────先手は、体重が重いはずのゴンベが取った。

 

「ロトッ!?」

 

 見た目にそぐわぬ俊敏さで間合いを詰めてきたゴンベは、地面より約二メートルの高さに浮かぶロトムに対し、飛び上がりつつ渾身のスカイアッパーを繰り出す。しかしゴーストタイプに格闘技は無効。アッパーはロトムの体をすり抜けてしまう。目を丸くして驚くゴンベは身を翻して着地。

 

 直後────

「ロトトトト! ロトトトトトトトト!!」

 ────ロトムの こいつ馬鹿だ! と嘲笑う鳴き声が響き渡った。

 

「ごぉん……?」

 

 ゴンベの眉間に怒りのシワが寄り、血管が膨れ上がる。

 

「甜花ちゃん。落ち着いて! 焦らなくていいわよ!」

「あ、えと、えと……図鑑、どこにしまったっけ……!?」

 

 甜花は初めてのポケモンバトルに戸惑う。いつもは画面に映る四つの選択肢からコントローラーを操作して技を選ぶだけ。だがリアルタイムで進行するポケモンバトルに頭が追いつかない。

 

 次の瞬間、ゴンベはなんでも物を溜め込む黒い毛並みの下から“炎の石”を取り出した。

 それを使って何をするつもりなのか。ロトムは首をかしげる。

 

 一方の甜花は、わたわたとポケットからペットボトルやお菓子の袋を放り投げてポケモン図鑑を探していた。

 

 ────その時だった。

 ふいにゴンベは大口を開けて、なんと()()()()()()()()()()

 

「ロトォ!?」

「────え?」

 

 甜花たちは口をあんぐりと開けて驚く。

 いくら大食いポケモンでも消化しきれないであろう鉱物を腹に入れてしまったゴンベは、急激に体温が上昇していき、体中から多量の汗を蒸発させて、全身が高熱となり黒い毛並みが赤い毛並みへと変わっていく。

 

「な、何が起こっているの……!?」

「わ、分かんない……! でも、ゴンベは……こんなポケモンじゃ……!」

 

 たじろぐ一同。その隙を突いてゴンベが吼えた。

 

「ゴン────!」

 刹那、地面を抉る踏み込みから駆け出したゴンベは、その右足に炎のエネルギーを込めて、

「ベェ────!」

 瞬間的に跳躍し、呆気に取られていたロトムに炎の蹴り……ブレイズキックを喰らわせた。

 

「ロトォ────!」

「む、むーちゃん……!」

 

 炎熱の打撃で蹴り飛ばされたロトムは甜花の足元に転がり、体に火傷の痕を残して目を回す。一方のゴンベはロトムが戦闘不能になったことを確認すると、地面に唾をペッ! と吐き捨てて草むらの中に去っていった。

 

「あ、む、むーちゃん……むーちゃん……!」

「ラ……ラルゥ! ラルゥー……!」

 

 甜花とラルトスの呼び声にロトムは応えられない。ぐるぐると目を回して地面に横たわっている。膝をついた甜花はその体を持ち上げて揺さぶるが、どうも完全に気絶しているらしい。

 

「……っ。ごめんね……むーちゃん……甜花、何も、指示……できなくて……」

「らるぅ……」

 

 俯いた甜花の目尻に涙が溜まっていく。

 その悲しみと悔しさに反応して、ラルトスのツノが青くなる。

 

 そこでハナコが叱咤した。

 

「甜花ちゃん! 落ち込んでいる暇はないわ! さぁ立ち上がって! 立ち上がるのよ!」

「……!」

「よくロトムを見なさい! ロトムちゃん、やけどしているわ! 今は回復道具もないし、オーキド研究所に戻ればあるかもしれないけど、そんな時間はない……でもトキワシティはすぐそこだから、急いでポケモンセンターに駆け込むのよ!」

「……! そ、そうか……わかった……急ごう……!」

 

 濡れた目尻を袖で勢いよく拭った甜花は立ち上がり、平原を越えた先の街まで走り出した。

 

          *

 

 夕方の3時頃。トキワシティのポケモンセンターに到着した甜花は、ジョーイさんにロトムを任せて、ロビーで一息ついていた。

 

「甜花ちゃん。走って汗だくで疲れたでしょ? はい、よく冷えたミックスオレ。ラルトスちゃんにも!」

「あ……ありがとう、ございます……」

「ラルゥ!」

 

 額に汗を流すハナコは、ゴクゴクとミックスオレを飲み干す。

 対する甜花はミックスオレの蓋を開けてラルトスに渡し、自分もちびちびと飲み始めた。

 

「…………」

 

 甜花はポケモンセンターに着いてから、ずっと俯いている。

 その落ち込んだ様子を見て察したハナコは、甜花のそばに座り、優しく語りかけた。

 

「……そう落ち込まないの。私だって、初めてのバトルはあんなものだったわ」

「……え?」

 

「ポケモンの技も全然知らなくて、ただ『攻撃しなさい!』とか『かわして!』とか、ポケモンからしたら無茶な命令ばかりしていたわ。それでも彼らは、いつもポケモンセンターから出てくると、笑顔で抱きついてくれるの。『次こそは頑張ろうね』って、私の顔を見て、慰めてくれるのよ」

 

「…………」

 

「だから……反省するのはいいけど、後悔はしちゃダメよ。

 それじゃあ、一緒に戦ってくれたポケモンたちが可哀想じゃない」

 

 ハナコは縮こまったその肩を抱き寄せる。

 

「まぁ、私が偉そうに言えることじゃないけどね。

 あなたの悩みは、あなただけのものなんだから」

 

 甜花は首を振る。

 前半の偉そうという言葉にはしきりに横に。

 そして後半の言葉には……ゆっくりと縦に。

 

 やがてポケモンの回復が完了した音が鳴った。

 

「ロトムのトレーナーの方! 回復が終わりましたよー!」

「──!」

 

 ソファから立ち上がった甜花は、急いで受付に向かう。

 

「はい。マサラタウンの大崎甜花さん。こちらロトムです。元気になりましたよー」

「ロトォ!」

「────っ! むーちゃん……!」

 

 担架で運ばれてきたロトムは、甜花の顔を見るなり、嬉しそうに浮遊して周囲を旋回する。

 

「あ……むーちゃん……怒って、ないの……?」

「……ロトォ?」

 

 甜花の言葉に、ロトムは首をかしげる。

 その時、甜花のポケモン図鑑に──びびび──という電子音が鳴った。

 

『まぁ しょうじき どちゃくそ へたくそ だとは おもったけど

 こんどは おなじ しっぱいを しなければ いいだけだし

 ……あんまり きにしないでさ ……また バトルしようよ!』

 

「……っ!」

「ロトト!」

 

 図鑑から視線を上げた甜花は、ロトムの笑顔に救われる。

 

『それにしても へたくそ だったけどね?』

「あうう……」

 

 そして相変わらずのロトムの嫌味に、甜花は申し訳ないと俯いてしまった。

 

 

 

 一方、受付では。ジョーイさんとハナコが困惑しつつ話していた。

 

「それにしても不思議です。この辺りは炎タイプの野生ポケモンがあまり出現しなくて、ここまで重度のやけどを負って運ばれてくるポケモンはなかなかいないんです……」

「あ、ジョーイさん。それはですね……なんと相手は、野生のゴンベだったんですよ!」

「まぁ! それは本当ですか? それじゃあ、あそこのトレーナーたちが話していたことは本当だったんですね……」

「……?」

 

 ハナコは首をかしげて、ジョーイさんの視線を追う。

 そこにはロビーの端で集まり話し合うトレーナーたちがいた。

 

「おい聞いたか? リーフの石を食べるゴンベの噂!」

「聞いたも何も見たよ! 俺はそいつに自慢のゼニガメをワンパンでやられたんだ!」

「えー? 私が見たゴンベは雷の石を食べてたけどー?」

「俺が見たゴンベは水の石を食べてたぜ! ありゃ化物だ! 突然変異のポケモンに違いない!」

 

 その時、ロトムとラルトスを連れた甜花が、ハナコのところに戻ってくる。

 

「あ……ハナコさん。あの……」

 

 甜花は、自分を励ましてくれたことにお礼を言おうとする。

 

 しかし次の瞬間、

「ちょっと来なさい! 甜花ちゃん!」

「ふえぇ!?」

 ハナコは甜花の腕を取って、ずんずんとトレーナーたちの間に割って入っていった。

 

「ねぇ、あなたたち。その話、私たちにも聞かせてくれないかしら?」

「え? えぇ……?」

 

 なぜか自信満々に両腕を組んで仁王立ちするハナコと、話の流れが掴めなくて困惑する甜花。

 

「……なんだよ、おばさん」

「あんたには関係のないことだ!」

「そうよ! このゴンベは私たちが捕まえるんだから!」

「邪魔すんなよな!」

 

「そう言わないの! こっちはね────!」

 

 競争心に燃えるトレーナーたちの抗議。それにハナコが何かを言い返そうとした瞬間。突如としてポケモンセンターの扉が開かれて、瀕死のフシギダネを担いだトレーナーが叫びをあげた。

 

「で────出たぞ! あのゴンベだ! 街の中まで入ってきてる!!」

『な、なんだってー!?』

 

 ドドドド……と、ゴンベを狙うトレーナーたちは外に走り去る。

 もぬけの殻となったポケモンセンター。そこに残されたハナコは、甜花に向き直って提案する。

 

「ねぇ、甜花ちゃん! あのゴンベに、リベンジしたくはないかしら?」

「……リベンジ……?」

「ロトロトォ!」

 

 ロトムは血気盛んに頷く。やはり負けっぱなしはしゃくらしい。

 

「私の見立てによれば、あのゴンベは相当強いわ。さっきのトレーナーたちの中で、あのゴンベにかすり傷一つ与えられるトレーナーは、きっと一人もいないでしょうね!」

 

「う、うん……だって、むーちゃん……レベル80だし……」

「ラルゥ!」

 

 甜花は身も蓋もないことを言う。

 

「でも、甜花ちゃんなら勝てるわ! さっきはいきなりのバトルで戸惑っただけ。だから今度こそリベンジするのよ!」

「えー……」

 

 なぜそんなことをしなければならないのかと言いたそうに甜花は苦い顔をする。

 

「とにかく行きましょう! あ、その前にロトムの技を図鑑で確認するのよ!」

 

「う、うん……あの、でも……えと……甜花の、洋服は……?」

「それはリベンジが終わったあと!」

「えぇぇー……!?」

 

 かくして甜花はハナコに連れられて、ゴンベのリベンジマッチに出かけた。

 

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