マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜 作:我島甲太郎
俺とアンバーはマーヤさんの着せ替え人形と化したミュールを置いてアルストツカ洋裁店を出ると、とことこと人通りの少ない商店街を歩いて魔道具工房バタフライの前に立った。
「さて、アルメリアさんは居るかなぁ」
俺が蝶のデザインがあしらわれた扉を開くと、カランカランと鈴の音が鳴った。
店内は相も変わらず、魔道具があちこちに積まれてごちゃごちゃしている。
そして、店のカウンターの向こうにある作業台の前には……。
「あらぁ二人とも、帰ってきたのねぇ」
元祖褐色スク水ダークエルフのアルメリアが座っていた。
どうやら彼女は豪華な装飾が施された置き時計の魔道具を修理していたようだ。
分解されたパーツが作業台の上にある浅い箱の中に散らばっている。
「うむ、ただいまなのじゃ」
「アルメリアさんもお変わりがないようで何よりです」
うんうん、アルメリアの巨乳を見るとアクアマリンに帰ってきたって感じがする。
この旅の中で俺は沢山のおっぱいを見てきたが、やはり彼女のおっぱいはサイズ、形、身体とのバランス……全てを満たした特別なものだった。
「悪いけど今は手が離せないから、アイリスを呼ぶわねぇ」
アルメリアが耳のイヤリングに指を添えて念話を使うと、上に続く階段から褐色スク水ダークエルフ二号のアイリスが降りてきた。
「やっほー、二人ともお帰りー」
「ただいま、アイリス」
「ただいまなのじゃ。お主は元気にしておったか?」
「まあねー」
なんだか機嫌のいいアイリスはカウンターの椅子に腰掛けると、カウンターから身を乗り出して尋ねてきた。
「二人ともカナンに行ったんでしょ。アザミ兄さんには会った?」
「会った。彼には本当に色々と世話になったよ」
アザミには便利な魔道具をいっぱい貰ったからな。
特に水中で会話ができる潜水マスク「マーメイドの喉笛」にはこれから先、何度もお世話になることになりそうだ。
「ママに負けず劣らずの変態だったでしょ。イイ年した男なのに女物の水着なんて着ちゃってさー」
アザミはアルメリア・ダークエルフ族だから許されているものだとばかり思っていたが、どうやら男がスク水を着るのは普通に異常だったらしい。
「変態って。人生を
「ハルトくんはその趣味のせいで婚約者に逃げられたって話、聞いてないの?」
「……そういえばそんなこと言ってたな、オーブリー」
お金で買ったダークエルフの男娼、だったか。
15歳の多感な時期に母親が
「あれっ、オーブリーってアザミ兄さんの婚約者だった人でしょ。ハルトくん会ったことあるの?」
「うんまあ、色々と……な、アンバー」
俺がアンバーに目を向けると、彼女はうむと頷いた。
「積もる旅の話は山ほどある。とはいえ、まずはわしらがアクアマリンを出てからの話をせねばなるまいな」
「おお、待ってましたー!」
喜色を浮かべたアイリスがカウンター横に置かれていたケトル型の魔道具を使ってお茶を用意すると、アンバーがお土産のカナン銘菓を山ほどカウンターに積んだ。
俺達が店内に転がっていた椅子をカウンター前まで持ってきて腰掛けると、楽しい午前のお茶会が始まった。
アルメリアとアイリスは身内も同然、隠し事は一切なしだ。
ここだけの話と前置きをしつつアンバーがティアラキングダムで体験した出来事を話していると、ジョニアート美術館に差し掛かった辺りで修理作業をしながら話を聞いていたアルメリアが反応した。
「ふぅん、アリウムに会ったのねぇ……」
「アルメリアさんの子供にはもう4人も会っているんですけど、実際のところ子供は何人いるんですか?」
「全部で34人よ。もっとも、音信不通になった子や死んでしまった子も合わせてのものだけれど……」
アルメリアは少し寂しそうな、
「お、多い……のか?」
アルメリアにはサッカーチームが3つ作れちゃうくらいの子供がいたようだ。
ふと、俺はこの世界のエルフの一人当たりの生涯出生人数が気になった。
「多いよー。エルフなんて一生に3人も産めば多いって言われるくらいだもん」
「マジか……」
まあ、アルメリアみたいなドスケベエルフがいっぱい居たらエルフが増えすぎて世界がヤバいことになってしまうもんな。
ネフライト王国の鎖国政策万歳である。
「うふふ、わたくしは子宝に恵まれるエルフの秘薬を持っているのよ。アンバーちゃん、いつでも分けてあげるから欲しくなったら言って
そんな便利な魔法のおクスリがあるからアルメリアは子沢山なのか。
ドラッグストアに売ってるの見たことないけど、一体いくらするんだろうね。
「わしがそれを必要とすることはまずないじゃろうが……もし仮に必要になったらお主に頼むとするかのう」
アンバーは俺の手を握ってほっぺたを赤く染めた。
「必要になったらな」
俺達はナマでヤりまくっているが特に避妊らしいことはしていない。
なぜなら女性探索者向けに生理を止める医薬品が安価で普及しているからだ。
副作用も特にないみたいだし、この世界の医療はだいぶ先を進んでいるな。
「はいはい、お熱いことで。それで続きは?」
アイリスがジトーっとした目で俺達を見ながら続きを
「ええと、ジョニアート美術館に入ったところからじゃったな。そこでアリウムと出会ったわしらが彼女のガイドを受けながらジョニアートを鑑賞しておると、出口に差し掛かったところで――」
「—―というわけじゃ」
だいぶ
ミュール、きっとお腹空かせて待っているだろうな……。
「せっかくイーラの五層まで行ったんだからさー、ホムラサラマンダーくらい狩ってきてくれたらよかったのにー」
単行本2冊分に渡る冒険譚を聞き終わったアイリスの感想はその一言だけだった。
彼女は未だにいかずち丸になったライトニングコアに未練たらたらのようだ。
「そう言うと思っておったぞ。ほれ」
待ってましたと言わんがばかりに、アンバーはポーチから一つの化粧箱を取り出してカウンターに置いた。
「えっ、嘘っ!? 本当に……?」
アイリスが恐る恐る化粧箱を開けると、中から
希少な炎属性のAランクエレメンタルコア……通称サラマンダーコアである。
実はホムラワイバーンとの戦闘中に俺のレベルが上がって魔力が全回復したので、1匹だけマジックボムで狩ってから帰ったのだ。
俺達は探索者だからな、余裕があるのに手ぶらで帰るなんて有り得ないぜ。
「うわー、本物だぁ……。何を作ろうかなー……」
アイリスは手に取った宝玉を舐めるように眺めまわしている。
うーむ、こんなに喜んでいるアイリスの姿は見たことがない。
やっぱり彼女は根っからの魔道具職人なんだなぁ。
「アンバー、そろそろミュールを迎えに行こうか」
彼女も誘ってこれから一緒にランチでも、と思ったがこの状態になったアイリスにはもう言葉が通じそうにない。
今回ばかりは好きなだけ夢を見させてあげよう。
「そうじゃのう。アルメリアよ、わしらはここらでお暇させて貰うとするわい」
「またねぇー」
置き時計の修理を終えて謎のオブジェみたいな魔道具の修理を始めていたアルメリアが適当に返事をしたので、俺達はそっと魔道具工房バタフライを後にした。