マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

106 / 288
第106話 同じタイプのスタンド

 魔道具工房バタフライでアイリスに特別なお土産を渡した俺達はアルストツカ洋裁店に戻り、まだアラクネ達の着せ替え人形を続けていたミュールを回収した。

 

 アンバーは装備の前金と服の代金を支払って山と積まれた服をマジックバッグに詰め込むと、フリフリのリボンが付いたかわいい服を着たままフラフラしているミュールの手を引いて店の向かいにある喫茶リブトンへと移動する。

 

「いらっしゃいませー! 3名様ですねー! こちらのお席へどうぞー!」

 

 昼のランチタイムということもあり、今日も客入りは多いようだ。

 俺達は4人掛けのテーブル席に腰掛けると、席に案内してくれたワーウルフの店員さんにとりあえず生という感じでヨーグルトミルクティーを人数分注文した。

 

 店員さんも慣れたもので、すぐに3人分のヨーグルトミルクティーをピッチャーから透明なグラスに注いでテーブルに置くとサッと離れていった。

 

「ミュールよ、よく頑張ったのう。今日はお主の好きなだけ食べるがよい」

 

 いつも彼女は好きなだけ食べてるけどね。

 という俺の心の声は置いておいて、アンバーのその言葉を受けてグルグル目をしていたミュールは正気を取り戻した。

 

「ハッ、あちしは一体……?」

「オシャレをしてみた気分はどうだ?」

 

 俺が尋ねるとミュールはフリフリのスカートを手で押さえて眉間にしわを寄せた。

 

「なんだかスースーして落ち着かない気分にゃ」

 

 生まれて初めてスカートを()いた女装男子みたいなこと言ってる。

 まあ、忍者娘としては動きやすさを重視したいのは当たり前か。

 普段着もダサいTシャツにジーパン一択だもんな。

 

「ミュールよ、忍者に潜入任務は付き物じゃ。お主も忍者を(こころざ)すのならこれくらい着こなしてみよ」

 

 この世界の忍者はそんな漫画みたいな華麗な職業じゃないと思うのだが……。

 ミュールにとっては違うようで、彼女は目を輝かせながら鼻息を荒くした。

 

「言われてみれば確かにそうにゃ! あちしはまだまだ成長の可能性を残していたみたいだにゃ!」

 

 ビシッとポーズを決めたミュールのお腹からグーと音が鳴った。

 

「お腹が減ったにゃ……」

「よしよし、お昼ご飯を注文しようねー」

 

 俺はしょんぼりしながらヨーグルトミルクティーを(すす)って空きっ腹をごまかすミュールに分厚いメニュー表を差し出したのだった。

 

 

 さて、昼食を終えたら次はいよいよフライスに会いに行く番だ。

 俺達はタクシーに乗って東の郊外にあるフライス整備工場へ向かったのだが……。

 

「隣にこんな建物なんてあったっけ?」

 

 荒野にポツンと浮かぶフライス整備工場の隣には、円形の白い(へい)に囲まれた豆腐ハウスがドカンと建っていた。

 

「無かったぞ」

「そうだよね」

 

 タクシーから降りた俺達が締め切られた鉄門にある表札を見てみると、そこには「ミスリル鉱物研究所」と書かれていた。

 

「ミスリルか……」

 

 この世界におけるミスリルの立ち位置は特殊だ。

 ミスリルは世界でもっとも硬くもっとも希少で、そしてもっともありふれた鉱石。

 

 その別名は「月光石」。

 天高く浮かぶ青白い月から落ちてきた、魔力を生み出す魔法の石だ。

 

「まあよい、フライスに聞けば分かることじゃろう」

 

 アンバーはとことこ歩いて整備工場の中で車の整備しているドワーフの一人に声を掛けた。

 

「わしじゃ。フライスはおるか?」

 

 どうやら今日は「フライスはおるかー!」と叫ぶつもりはないらしい。

 

「む、アンバーか。フライスならあっちにいるぞ」

 

 機械油に汚れた手で休憩所の方を指差したドワーフはすぐに自分の作業に戻った。

 いつもお仕事お疲れ様です。

 

 俺がペコペコ会釈(えしゃく)しながら横を通り過ぎて整備工場の奥に進むと、休憩所でボロい椅子に座りながら客と話しているフライスの姿が見えた。

 

「ですから、次はベルニウムにしましょう!」

「儂としてはゴロニウムを推したいんだが。ベルニウムなんて作ったところで使いようもないしな」

 

 機械油に汚れたツナギを着ているフライスの向かいで何やら大げさに身振り手振りをしながら話しているのは、白衣を着たエルフの男だった。

 彼は絹のように細く波打つ金髪を肩まで伸ばして、丸い眼鏡を掛けている。

 

「いやいや、ベルニウム結晶の美しさは世界一です! きっと好事家(こうずか)に高く売れますって!」

「貴様が欲しいだけではないのか?」

「それは――」

「お主ら、何を話しておるんじゃ」

 

 アンバーが会話に割り込むと、その声に気付いた2人がこちらに顔を向けた。

 

「やっと帰ってきたのか。待ちくたびれたぞ」

「いやぁ、すいません。南の国は誘惑が多くて……」

「フライスさん、もしやこの方々が?」

 

 俺達を見たエルフの男がフライスに尋ねると、フライスは自慢の(ひげ)()でながら頷いた。

 

「紹介しよう。Bランク探索者パーティー『こん棒愛好会』のアンバー、そしてハルト・ミズノだ」

「ミュールもいるにゃ」

「それと新メンバーのミュールか」

 

 フライスによる俺達の紹介が終わると、今度はエルフの男が立ち上がって自己紹介を始めた。

 

「私は魔道学院所属の鉱物学者レクナムと申します。昔は精力的にフィールドワークなどをしていましたがね、現在は隠居中の身です」

 

 彼はちょっぴり照れた感じで俺達に懐から取り出したギルドカードを提示した。

 

 レクナム 513歳 ランクD 鉱物学者(ミネラロジスト) Lv106

 魔力S 筋力C 生命力C 素早さC 器用さA

 

 長生きしているだけあって随分(ずいぶん)とレベルが高いようだ。

 ちなみに本業探索者じゃない人間は上級探索者の義務(引退後の探索者ギルドからの招集(しょうしゅう)とか)を(きら)ってランクを上げないことが多い。

 

「フライスさんの論文を拝見させて頂きましてね。いやぁ、アレは本当に凄いですよ! 産地のダンジョンが消滅したことで入手が絶望的なレアメタルをいともたやすく生み出すことができる! これは鉱物研究における革新的な技術革命です!」

 

 レクナムは話しているうちにどんどんテンションが上がっていった。

 今にも飛び上がりそうな勢いで、全身を使ってその喜びを表現している。

 

「あー、スタック銅のアレね。嬉しいのはよく分かったけど、わざわざフライスの家の隣に引っ越してくる必要までは無かったのでは……?」

 

 スタック銅にエレメンタルコアでエンチャントを施すと魔力を注ぐだけで無限に再生するってやつ。

 

 アンバーの愛用しているメツニウム銅合金製の金砕棒(かなさいぼう)、いかずち丸に使われている技術だ。

 

「こいつはその研究に必要なエレメンタルコアを自弁(じべん)する為にこのアクアマリンに移住してきたそうだ」

「鉱物研究は魔道学院でもマイナーな分野で……予算がね、出ないんですよ……」

 

 レクナムのテンションがあっという間に急下落した。

 体育座りして床を指先でいじいじしている。

 

「しかし研究所を建てる予算はあったようですが?」

「あれは自分で建てました」

 

 レクナムは床をいじっていた指先を上に向けると、虚空に白い石を生み出した。

 

「まさか、同じタイプのスタンド……!」

 

 俺は虚空に石を生み出すとサッとこねてハムマンを形作った。

 それを見たレクナムも白い石をこねてハムマンに変えた。

 俺とレムナムはハムマンフィギュアを交換するとガシッと握手した。

 

「ハルトさん、私とともに土属性スキルを極めましょう!」

「もちろんだとも、心の友よ……!」

 

 同族の土属性スキル使いに初めて出会った俺は感動に打ち震えた。

 いいよね、土属性。

 土属性、最高……。

 

「アホが増えたにゃ」

「むぅ、イチャイチャしおって。()けるのう……」

 

 あっという間に友達になった俺とレクナムはルンルン気分でミスリル鉱物研究所へと歩いていったのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。