マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第112話 ドロップアイテム

 翌朝、いつもより少し遅く起きた俺とアンバーが朝食の為に1階へ降りたところ、今まさにモモちゃんが学校に登校しようとしている場面に遭遇した。

 

「いってきまーす!」

「いってらっしゃい」

 

 椅子に腰掛けて新聞を読んでいる親父さんが返事をすると、制服を着てピンクのランドセルを肩に掛けた状態のモモちゃんは入口の扉を押し開けて外出していった。

 

「ちょっと遅れちゃったね。おはようございます」

「おはようなのじゃ」

「おはようさん。すぐに飯の支度をするからな、待っていてくれ」

 

 新聞をテーブルに置いた親父さんが椅子から立ち上がって厨房に向かったので、俺とアンバーはテーブルに突っ伏しているミュールの向かいの席に座って朝食が届くのを待つことにした。

 

「ミュール、どうしたんだ」

「うぅ~」

 

 うめき声を上げながら手をバタバタとしているミュールの姿を見て俺は察した。

 彼女はモモちゃんの洗礼を受けたようだ……。

 

「うーじゃ分からん。お主は何を食わされたのじゃ」

「ハムマン焼き……中にとびきり辛いのが入ってたにゃ……」

 

 顔を上げて返事をしたミュールの唇は赤く腫れ上がっていた。

 うわぁ、痛そう。

 

 俺がお土産にあげた金属製のハムマン焼きの型をモモちゃんは早速試したようだ。

 作るのが簡単な割に色んなレパートリーが楽しめるからお料理好きの幼女に丁度いいと思ったんだけど、どうやらモモちゃんはそれを悪用したようである。

 

「お主、まさか食べ切ったのか」

「あちしには捨てるなんて勿体(もったい)ないことできないにゃ……」

「食い意地を張るのも考え物だな。とはいえ、ここではそれが正解だ」

 

 俺が彼女に右手を向けてヒーリングを使うとミュールの唇の腫れは治まった。

 

「って言うかハイヒーリングの杖渡したはずだろ。装具は買ったか?」

「あっ、すっかり忘れてたにゃ」

 

 うっかりうっかり、みたいな感じで照れているミュールにアンバーが尋ねる。

 

「ミュールよ、昨日は朝からどこに行っておったのじゃ」

「それなんだけどにゃ――」

 

 昨日は朝からフライスに借りたバイクでツーリングに出かけたらしい。

 彼女はゆっくりとアクアマリン湖を一周した後ミノダムバーガーで昼食を取り、それから夕方までフライスのところでバイクの整備のやり方を教わっていたそうだ。

 

「珍しいな、機械系に興味があるのか」

「引退後のキャリアを考えるのが一流の探索者だって父ちゃんが言ってたにゃ」

 

 探索者稼業も楽じゃないからな。

 ちょっとした油断が命取りになる業界だからこそ、レベルを上げて十分に稼いだら元気なうちに探索者を引退して別の仕事を始めるのだ。

 

「若いのにしっかりしておるのう」

「ふふん、あちしは未来のエンジニアにゃ!」

 

 目指すだけならタダだからな。

 超一流の機工士(マシーナリー)とのコネを存分に活かすといいだろう。

 

 

 さて、朝食を済ませたら本日のお仕事の時間である。

 俺達はいつものように岩塊(がんかい)台地下層に向かうと、中央部の不人気エリアで10mサイズのマーブルゴーレムを狩り始めた。

 

 アンバーが四肢を砕いて解体したマーブルゴーレムに、ー台のバイクに二人乗りしている俺とミュールが近づいたところで止めを刺す。

 石の触手で魔石を回収している間にアンバーは次のマーブルゴーレムを解体する。

 

 効率を重視した狩りは得てして単調な作業になりがちだ。

 とはいえこれは現実なので、事故には細心の注意を払う必要がある。

 

 アンバーが砕いたゴーレムの破片がこちらに飛んでくることもあるし、気付かないうちに背後にリポップしたゴーレムが(せま)ってきていたこともある。

 リアルな異世界では寄生プレイも楽ではないのだ。

 

 俺が土属性スキルの熟練度上げをしながらマーブルゴーレム狩りを続けていると、バイクの後ろに乗って化身スキルの練習を行っていたミュールが声を上げた。

 

「あっちに宝箱があるにゃ!」

 

 さっきからずっと黙っているなと思ったら、彼女はこっそり探知スキルを使って出現品(ドロップアイテム)を探していたらしい。

 

「マジで?」

「マジにゃ! 早くアンバーを呼ぶにゃ!」

「おう!」

 

 平坦な地形をしている岩塊(がんかい)台地は出現品(ドロップアイテム)が出現しても徘徊するマーブルゴーレムに踏み潰されて消滅していることが多い。

 だからここで出現品(ドロップアイテム)が見つかるのは本当に珍しいことなのである。

 

 バイクを走らせた俺は、解体したマーブルゴーレムの上でかいおう丸を振りかぶっているアンバーに声を掛けた。

 

「アンバー、ミュールが宝箱見つけたって!」

「なんじゃと……!」

 

 驚きつつもしっかりマーブルゴーレムに止めを刺したアンバーはさっと魔石を回収すると、魔石を片手にひょいとこちらに降りてきた。

 

「ミュールよ、案内してみよ」

「こっちにゃ、こっち!」

 

 バイクから降りて走り出したミュールを二人で追いかけると、ミュールが立ち止まって指差した先の浅い(くぼ)みに隠れるようにして赤褐色の(ひつぎ)が転がっていた。

 

「おお、本当にあったわい」

「開けるにゃ!」

 

 ミュールが(ひつぎ)を開けると、中にはいくつかの装飾品が入っていた。

 俺が一つの指輪を摘んでポーチの入口に近付けると、パシンと弾かれた。

 

「装具だ。当たりだな」

 

 この世界の迷宮都市にはダンジョン葬という風習が存在する。

 

 ダンジョンが異物を吸収する性質を利用した墓を作って管理する必要がないエコな風習なのだが、その時に副葬品として納めた魔道具や装飾品はこうしてダンジョンの出現品(ドロップアイテム)として出現するようになるのだ。

 

 このスタック銅の(ひつぎ)も特別な処理が施されていて、内部に入れたものが再現された時に残りやすくなっているらしい。

 

 ちなみにこれは富裕層向けの(ひつぎ)で、通常は再現されない木の(ひつぎ)を使って葬儀を行う。

 これもまた、ハズレの宝箱が出る確率を減らす為の仕組みである。

 

「丁度いいタイミングだったな。これはミュールに使わせるとしよう」

「ミュールの手柄じゃからな。それが良かろう」

「早く、早くあちしに頂戴(ちょうだい)にゃ!」

「まあ待て、渡すのは鑑定が終わってからだ」

 

 意地の悪いやつが魔道具に罠を仕掛けることもあるからな。

 俺はダンジョンで拾ったマジックバッグに手を突っ込んで腕を無くした探索者の話を忘れてはいなかった。

 

「明日アイリスに見て貰おう。ほらミュール乗って、狩りに戻るよ」

「むーん、分かったにゃ」

 

 俺はポーチから取り出した袋に出現品(ドロップアイテム)を詰めると再びバイクに(またが)った。

 

 それからもミュールは魔力が尽きるまで探知スキルを使っていたようだが、一つも出現品(ドロップアイテム)は見つからなかった。

 まあ、それも当然のことである。

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