マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

121 / 288
第121話 巨竜原生林

 翌朝、探索者ギルドのロビーで俺とミュールのBランク昇格試験の受付を済ませた俺達は岩塊(がんかい)台地下層へと向かった。

 

 四層への移動は魔道具職人(クラフター)組合のエレメンタル狩りが一段落ついた昼過ぎに行う予定だ。

 

 ということで俺達はマーブルゴーレム狩りで暇を潰した後に、精霊樹海最寄りの休憩所で持参した弁当を片手に昼食休憩を取っていた。

 

 樹海の入口で魔道具職人(クラフター)のエルフ達がお手製の魔杖(まじょう)でトレインしてきたエレメンタル相手にド派手な戦いを行っている様子をレンガ敷きの休憩所からしばらく眺めていると、狩りを終えた彼らがこちらにやってきた。

 

 今日のエレメンタル狩りの参加者は10人くらいいるようだが、手を振りながらこちらに走ってきた白衣のエルフは俺の知り合いだった。

 というか鉱物学者のレクナムだった。

 

 彼は研究とレベル上げの為に頻繁(ひんぱん)にこのエレメンタル狩りに参加している。

 取り分は他の参加者より少ないので、スタック銅の再生実験は遅々としてしか進んでいなかった。

 

 目の前で立ち止まったレクナムは息を切らせて(そんなに急ぐことか?)折りたたみ椅子に座っている俺に声を掛けてきた。

 

「ハルトさん、午前の狩りが終わりましたよ! 今のうちです!」

「分かってるよ。じゃあなレクナム、また来週会おう」

「はい!」

 

 立ち上がって小さなテーブルと折りたたみ椅子をポーチに片付けた俺は、先に行って顔見知りのエルフに挨拶をしていたアンバーの背中を追い掛けた。

 その隣にはマーヤ特製の新しい忍者装束(しょうぞく)を着たミュールも立っている。

 

「—―ですから、アンバーさんもお気をつけてください」

「うむ。お主の忠告はしかと聞かせて貰ったぞ」

 

 アンバーの後ろに立った俺は軽く彼女の肩を叩いた。

 

「おっと、連れがきたようじゃ。ではわしらはそろそろ四層へ向かうとしよう」

「いってらっしゃい、アンバーさん」

「うむ、いってくるのじゃ」

 

 俺達は休憩所でこちらに手を振るエルフ達に別れを告げると精霊樹海に侵入した。

 ミュールを先頭にして、曲がりくねった木の生えた森を進んでいく。

 

 午前のまとめ狩りで狩りつくしたのか、四層へのゲートに向かう最短ルートを行く道中ではエレメンタルの姿は一体も見えなかった。

 

「ゲートが見えたにゃ」

 

 ミュールが指差した先に木々の中に隠れるようにして大きなゲートが開いていた。

 ゲートの周囲には一切の手が加えられておらず、野ざらしのままの状態だ。

 

 アクアマリン迷宮の三層と四層を繋ぐゲートはどちらもシェルターでは周囲の安全が確保できないタイプの異界にあるのでこういう風になっている。

 ゲートの真上の空間にもエレメンタルはリポップしちゃうからしょうがないね。

 

「3つ数えたら行くよ。1、2、3、プロテクション!」

 

 ゲートの(ふち)に立った俺が半透明の青い障壁を張ると同時に、三人はゲートに飛び込んだ。

 

「エリアソナー!」

 

 ふわりとした感覚とともに俺達が四層へ飛び出すと、すぐにミュールが探知スキルを放って周囲を警戒した。

 

 がさりと音を立てて草むらに着地した俺の目の前に広がるのは、シダ植物の生い(しげ)る原始の森。

 ここがアクアマリン迷宮四層、巨竜原生林だ。

 

「ミュールよ、どうじゃ?」

「反応はポツポツあるけど……あっ、あっちに道があるにゃ!」

「よし、まずはそっちへ向かおう」

 

 俺が石の流体で生い(しげ)る草木を伐採しながら先へ進むと、木々がなぎ倒されて作られた道幅30mはあろうかという広い獣道に辿り着いた。

 

 進行方向を指し示すかのように点々と続く大きな足跡……巨竜原生林を練り歩く全長100mもの巨体を誇る首長竜、ジャイアントギガサウルスのものに間違いない。

 

「でっかい足跡にゃー」

 

 ミュールはジャイアントが二人は並んで寝られそうな大きな足跡をしげしげと眺めているが、そんな状態でも索敵は(おこた)っていないようで彼女の赤い猫耳はピクピクと動いていた。

 

「セオリーでは足跡を逆走するのじゃったな」

「そうだね。極力ジャイアントギガサウルスとの接触は避けよう」

 

 草食竜のジャイアントギガサウルスは巨体の割にあんまり強くないからな。

 それでいてリポップは遅いから倒しまくると後で困ることになる。

 彼には俺達の為にも道作りに専念して貰いたい。

 

 両脇にひょろ長い木性のシダ植物が街路樹のように立ち並ぶ獣道を逆走することしばらく、前方を行くミュールが警告を発した。

 

「右後方から沢山の足音がするにゃ!」

「お出ましか……」

 

 俺達が身構えて待っていると、ザッザッザッという間隔の空いた草を踏みしめる足音が近付いてきた。

 

 木陰から次々に飛び出してきたのは強靭な後ろ足を持つ走竜、ホッピングラプトルの群れだ!

 ホッピングラプトルはぴょんぴょんと不規則に跳ねながらこちらに(せま)ってくる。

 

「ミュールよ、こやつらは任せたぞ!」

「進化したあちしの力を見せてやるにゃ!」

 

 アンバーのGOサインを受け、化身して飛び出したミュールが空中ですれ違い様にホッピングラプトルの首を切り落とした。

 

 空中にいる無防備な状態のミュールを見て左右から彼女に食らい付こうと跳躍したホッピングラプトル。

 

 ミュールは空中でその身を(ひるが)して攻撃をするりと(かわ)すと、青く光った小太刀を振るい二頭のホッピングラプトルを返り()ちにする。

 着地したミュールはシュババッと走り、ホッピングラプトルの群れに突撃した。

 

 だがホッピングラプトル達も負けてはいない。

 無双するミュールではなく後方にいる俺達を狙い、古代シダのしなる細長い(みき)をバネのように使いこちらに向かって勢いよく飛んできた。

 

 空中でグッとその強靭な後ろ足に力を込めてジェットストリームライダーキックをお見舞いしようとするホッピングラプトルを、俺の前に立ったアンバーが抜き打ちしたかいおう丸で次々と吹き飛ばしていく。

 

「ほれほれ、どんどんくるがよい!」

「頭上、注意にゃ!」

 

 戦闘中ながらもミュールは警戒を忘れない。

 ミュールの警告の直後、ヒューッという風切り音が後方から聞こえてきた。

 

「—―プロテクション!」

 

 俺が半透明の青い障壁を張ると、ガシャァンというガラスの割れるような音とともにバリアに打ち付けられた飛竜の大きな翼が砕け散った。

 

 地面を削りながら墜落したのは、銀色に輝く鋭利な翼をしたプテラノドン。

 鉄さえ切り裂く剃刀(かみそり)の翼を持つ、ブレードウィングプテラだ!

 

(とど)めは後でよい!」

 

 振り返るとブレードウィングプテラの翼で切り裂かれた木々が思い出したかのようにずれ落ちていく(さま)が目に映る。

 そして、その木々の陰から更なるブレードウィングプテラが飛来してきた。

 

「プロテクション!」

 

 まあ、こいつらはプロテクションで受けるだけで勝手に自滅するんですけどね。

 合計4匹のブレードウィングプテラの襲撃をいなした俺はアンバーに護衛されながら、地を()う飛竜に長く伸ばした石の槍を突き刺して(とど)めを刺した。

 

 この時点でミュールは既にホッピングラプトルの群れを全滅させており、魔石の回収を始めていた。

 

「戦闘中によくブレードウィングプテラの襲来に気付いたのう。ほれほれ、()めてやろう」

「えへへ……それほどでもないにゃ」

 

 背伸びしたアンバーがミュールの頭を()でてお()めの言葉を(さず)けている。

 麺麭屋(ぱんや)平野で死にかけて以来、ミュールは少し用心深くなった。

 

 ただ闇雲(やみくも)に戦うだけではなく、チームワークも考えて行動するようになったのだ。

 これもまた、大きな成長と言っていいだろう。

 

「よし、魔石の回収は終わった。先に進もう」

 

 それからも何度か遭遇戦を繰り返して、だいぶこの場所での戦いも慣れてきた。

 そして不意に、前方にあった獣道が途切れた。

 

「む、ここが終点か」

 

 目前のなぎ倒された木々がまるで再生するかのように元通りになっていく。

 どうやらここはダンジョンの修復の真っ最中のようだ。

 

「凄いな。ダンジョンの地形が元通りになる様子を間近で見るのはこれが初めてだ」

「なんだか不思議な感じがするにゃ」

「巻き込まれぬように注意せねばならんな」

「時間的にもそろそろ夕方だし、今日はこの辺にするか」

 

 俺達が逆走していた獣道を戻ろうと背を向けたその時、背後で再生していく木々の合間からドカンと大きな音がした。

 振り返った俺達に勢いよく(せま)る黒い巨大な影。

 

「あれは……!」

「アーマードサウルスにゃ!」

 

 全身に硬い鎧を身に(まと)ったずんぐりとした巨体を持つ四足竜、アーマードサウルスだ!

 まるで走る重機のようなその威容に、心の中で焦りが(つの)る。

 

「ここは場所が悪い、少し下がるのじゃ!」

「わ、分かった!」

 

 しゃがんだアンバーに俺がおんぶされると、二人は勢いよく獣道を走り出した。

 ドカドカと足音を立てながら追い掛けてくるアーマードサウルスを連れて獣道を戻り、少し距離が離れたところでアンバーは俺を背中から下ろした。

 

「本当にやるのか、アンバー」

「アーマードサウルスに物理は効かぬと聞いておる。じゃがわしのパワーを見くびって貰っては困るのう……!」

 

 アンバーはいかずち丸を取り出して、アーマードサウルスに向き直った。

 

「ゆくぞ!」

 

 ダッと走ったアンバーがアーマードサウルスの脳天にいかずち丸を振り下ろした。

 ガァァァン、と金属の打ち合わされる大きな音が響く。

 う、うるさい……耳がジンジンする。

 

「……どうなった?」

 

 猫耳を両手で抑えたミュールを横目にアンバーの方を見ると、体制を崩したアーマードサウルスが地面を滑りながら倒れ込むところだった。

 

 アンバーは……アーマードサウルスの背の上で、大きくひしゃげたいかずち丸をその手に持っていた。

 

 あまりの衝撃に呆然(ぼうぜん)としていた彼女は、アーマードサウルスが止まったと同時に正気に戻って叫んだ。

 

「わしのいかずち丸がぁー!?」

「いかずち丸でよかったな!」

「そ、そうじゃ! ハルト、早くわしのいかずち丸を直してくれんか!」

 

 アーマードサウルスの背から飛び降りたアンバーが俺達の方に走ってきた。

 うわぁ、近くで見るとこれまたすんごい状態だ。

 まるでスコップの形に頭が凹んだ涙目のルカみたいになってる。

 

 俺がアンバーの差し出したいかずち丸に魔力を込めて修復していると、アーマードサウルスの様子を見に行ったミュールがこちらに戻ってきた。

 

「アンバー、アイツ死んでないみたいだにゃ」

 

 どうやらアーマードサウルスは先ほどの一撃で脳震盪(のうしんとう)を起こして気絶しただけだったようだ。

 

「むぅ、アレで死なぬのか……」

「物理が効かないって言われるわけだ」

 

 俺はそこはかとなくこん棒に見えなくもない(あか)い長杖を取り出すと、気絶しているアーマードサウルスにブレイズノヴァを打ち込んだのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。