マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第124話 新たな犠牲者

 翌朝、俺特製のベーコンエッグ・パンケーキでご機嫌な朝食を取った俺達は、軽く準備運動をしてから巨竜原生林での狩りを始めた。

 

 2日目ともなれば慣れたもので、俺達は少しずつホッピングラプトルとの戦い方を変えながら安定した狩り方を追求した。

 

 毎回ミュール一人をホッピングラプトルの群れに突っ込ませるのは事故が怖い。

 適度に彼女の戦闘欲を発散させつつ、ある程度は俺達も戦闘に参加するようにしたいと考えている。

 

 昼になればジャイアントギガサウルスの背でエナジーバーを片手に休憩をし、それから夕方までノンストップだ。

 狩りを終えたらキャンプ地に戻り、身体を休めて美味い飯で英気を養う。

 

 そうやって毎日を過ごした俺達は、遠征から6日目の夕方に巨竜原生林のゲートを潜って地上へ戻った。

 

 他の探索者パーティーは大体エルフのプロテクション使いを連れているのでその気になればいつでも出入りできるのだが、俺達のパーティーは俺の器用さの問題でプロテクションの展開時間が(いちじる)しく短い。

 

 だからエレメンタル狩りが終わった頃合いを見計らって出入りするのである。

 実際にリポップしていた数匹のエレメンタルに襲われたが、アンバーにおんぶして貰ってダッシュで抜けたので無傷で帰還することができた。

 

 それから俺達は探索者ギルドのロビーにある異界予約・昇格試験窓口で、受けていたBランク昇格試験の結果を教えて貰った。

 もちろん二人とも合格だ。

 

 これからは特権もそこそこに捕縛要請や討伐要請などの新たな義務が課せられるわけだが、その分だけ探索者ギルドに認められた上級探索者としての高い社会的地位を手にしたことになる。

 

 俺は異世界人だからそれ自体に大して価値は感じられていないが、きっとミュールは走り屋の舎弟(しゃてい)相手に鼻高々だろう。

 

 狩りで得た魔石について。

 流石に等級の高い四層の魔石をバイクの燃料にするのは勿体(もったい)ないので、ミュールには初日のマーブルゴーレム狩りで確保した分を渡すことにした。

 

 代わりに一番等級の高いアーマードサウルスの魔石を潜水艇計画用に取り置いた。

 マジックバッグの肥やしにしても仕方がないので、この魔石はアイリスに預けることにする。

 

 残りはすべてギルドに売却したが、なんと6日間の狩りだけでマーブルゴーレム狩り2ヵ月分をも越える稼ぎになった。

 

 この分だと、月収はこれまでの10倍を軽く超えるだろうな。

 停滞していたレベルアップも進むだろうし、いいことずくめだ。

 

 これからは4日間の休みを取って、また四層で6日間の狩りを行う予定だ。

 誰かの用事が入ったらまた予定は変わるだろうし、その辺りは臨機応変(りんきおうへん)に対応することにしよう。

 

 

 さて、Bランク探索者に必要な手続きをしていたらすっかり日が沈んでしまった。

 バスを待ちきれなかった俺達はバイクで夜道を行き、鬼の隠れ家亭に向かった。

 

「久しぶりに親父さんの飯が食えるぞー!」

「モモは元気にしておるかのう」

「酒にゃ、酒をたらふく飲むのにゃ!」

 

 そうして宿まで帰ってきた俺達は、ウキウキ気分で酒場の扉を押し開いた。

 おおう、休日の前だけあって酒場は常連客でいっぱいだ。

 

「ただいまー!」

「待っていたぞ、『こん棒愛好会』!」

 

 俺が元気よく挨拶すると、奥のテーブルの方から返事が返ってきた。

 見ると、そこに座っていたのはAランク探索者パーティー『竜牙の刃』の面々だ。

 いや、サワムラ氏の息子のシンイチがいないな。

 

「おい、邪魔だ」

 

 そう横から俺達に文句を垂れたのは、二本角の生えた頭にバンダナを巻いてエプロン姿をした顔に傷のある赤肌の大男だった。

 彼は右手に酒のジョッキを沢山掴み、左手に料理の乗ったお盆を持っている。

 

馴染(なじ)んでんな、一瞬親父さんかと勘違いしちゃったじゃないか」

「よく言われる。ほら、さっさとお前らも席に座れよ」

「ああ、悪いな」

 

 どうやら彼らは俺達の為に奥のテーブル席を取っておいてくれたようだった。

 俺達はその厚意に甘えて、ささっと向かい合わせの席に着席した。

 

「久しぶりじゃのう、ディノガルド。ハルトから話は聞いておるぞ」

「ああ、息災で何よりだ。君と話したいことは山ほどあるが……まずは飲もうか」

 

 ディノガルドはテーブルに置かれた鬼米酒のたっぷり入ったジョッキを俺達の方に押し出した。

 俺達がジョッキを手に取ると、彼は自身の飲みかけのジョッキを高く掲げた。

 

「俺達の再会に、乾杯!」

「乾杯!」

 

 ディノガルドの乾杯の音頭とともに六つのジョッキが打ち合わされた。

 

「シンイチだけ酒場の手伝いで居ないんだけどいいのかな」

「いいだろうよぉ、全部あいつが好きでやってることだしぃ」

「好きでやってねーよ!」

 

 グリスの言葉はしっかり料理の配膳をしているシンイチに聞こえていたようだ。

 シンイチが叫ぶと同時に、厨房の奥からバンダナにエプロン姿のモモちゃんが注文を取りにやってくる。

 

「みんなおかえり! 今日は何食べる?」

「ただいまモモちゃん。そうだね……」

 

 今日は飲み会になりそうなので、適当に酒のアテになりそうなものを注文した。

 注文を読み上げたモモちゃんが背を向けて去っていくと、急にアカシアがため息を吐いた。

 

「はぁ……」

「アカシア、どうしたんだ? なんか元気無さそうだけど」

 

 俺が尋ねると、アカシアの隣のグリスが片翼で器用に持った箸で摘んだモーニングフロッグのから揚げをついばみながら答えた。

 

「こいつ、あのガキの手料理食わされてからずっとこんなんなんだよぉ」

「もしかして、うちに泊まっているのか?」

「オレは違うよぉ? オレにはコレがいるからねぇ」

 

 グリスが片翼で小指を振るようなジェスチャーをした。

 

「俺達が探索から帰ってからひと悶着(もんちゃく)あったんだが、その結果シンイチがここで暮らすことになってな。同じパーティーなら同じ場所に拠点を構えた方が合理的だろう?」

「うむ。わしらも当然そうしておる」

「シンイチの実家だけあって美味い飯を出すいい宿だ。だから油断した……」

 

 アカシアは胃を押さえてテーブルに突っ伏した。

 どうやら暴れん坊6歳児モモちゃんの新たな犠牲者が現れたようだ。

 

「あのガキに貰ったハムマン焼きを口にしてぶっ倒れたのよぉ。どうもおろしワサビ入りだったみたいだねぇ」

「またアレをやったのか、モモちゃん」

 

 モモちゃんは料理が多少上手くなって自信がついたのか、今度はオリジナルレシピを考えるようになってしまった。

 俺も何度か食らったが、当たりがある分だけハズレの落差が(つら)いんだよな。

 

「ここで暮らしていくコツは看板娘のイタズラを受け入れることだ。でなければ6歳児の思いつくありとあらゆる嫌がらせを受けて宿から追い出されることになる……」

「俺はもう……追い出されてもいい……」

「アカシア、リーダーの指示は絶対だよぉ。それが嫌ならオレみたいに彼女でも作るんだねぇ」

「うぅ……」

 

 彼は本当に大丈夫なのだろうか。

 モモちゃんが原因でパーティーが壊れたりしない?

 

「軟弱なオトコにゃ。あちしは唐辛子入りのハムマン焼きを丸ごと平らげたことがあるにゃ。少しはあちしを見習ったらどうにゃ?」

 

 と、言っているのはテーブルの上のツマミを勝手に摘んでいるミュール。

 

「そ、そんなものを食べたら死んでしまう……!」

 

 どうもアカシアは強い刺激に弱いようだ。

 彼の知られざる秘密がまた一つ明らかになった。

 ちなみに一つ目はアルメリア・ダークエルフ族なのにスク水を着ていないことだ。

 

「いやいや、人間はそう簡単に死なないって。あれだ、何だったら俺が便利なスキル教えてあげようか。舌の痛覚を消すやつとかあるよ」

「それは本当か……?」

「医療系のやつね。今度暇な時にレクチャーするよ」

「助かった……」

 

 まるで蜘蛛の糸を掴んだかのように安心した様子のアカシアは眠りに落ちた。

 まあ、舌の痛覚を消したところでトイレで地獄を見るのは変わらないんだけどね。

 

 その痛みは一度経験してみないと分からない。

 そうして人はスキルの新たな使い方を学び、成長するのである。

 

「寝ちゃったにゃ」

「頼みがあるんだが、連れを起こさないでくれ。死ぬほど疲れてる」

「シンイチ、勝手に殺すな……」

 

 俺達の注文した料理をドンとテーブルに置いたシンイチがどかりと椅子に腰を落ち着けると、アカシアが起きてツッコミを入れた。

 

「シンイチ、もう手伝いはいいのか?」

「ああ、親父に言って終わりにして貰った。やっと俺も飯が食えるぜ」

「じゃ、全員が揃ったところでもう一回乾杯するか」

 

 俺が飲みかけのジョッキを持ち上げると、みんながジョッキを高く掲げた。

 

「俺達の再会に、乾杯!」

「乾杯!」

 

 俺の乾杯の音頭とともに七つのジョッキが打ち合わされた。

 楽しい飲み会の始まりだ。

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