マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第126話 アンバーの誕生日(後編)

 お腹も膨れたところで、お誕生日デートの後半戦に移るとしよう。

 ということで俺達はバイクに乗って、アクアマリン市南東の郊外にある広いテーマパークまでやってきた。

 

 ここはジャイアント・ホールディングスの運営する遊園地、アクアマジャイアントランドだ。

 遠くからもはっきり見える巨大なジェットコースターの線路に大きな観覧車……。

 

 アクアマジャイアントランドはありとあらゆるものがジャイアントサイズの遊園地で、このアクアマリン市で一番広い敷地面積を誇っているのだ。

 

 俺達は入口の受付でお高めの料金を支払うと、遊園地の中に入った。

 今日は平日なのでそれなりに空いているようだ。

 

「空いているのはありがたいが、全然ジャイアントがいないのう……」

 

 園内を歩く人々はカメラを持った観光客ばかりでジャイアントの姿は従業員くらいしか見えないが、それには大きな理由があった。

 

「ジャイアントは定休日にタダで入れるしな。わざわざお金を払ってまで入ろうとするのは外からきた観光客か、よほどの遊園地フリークだけでしょ」

 

 元々はティアラキングダムの遊園地に入れない(サイズがでかいので人混みで事故が多発するのだ)社員の福利厚生の一環として作ったらしいが、思ったよりもジャイアントに人気が出なかったので他人種向けに改装したという悲しい過去がある。

 

 とはいえそれで休日は家族連れでごった返すほどの大人気テーマパークになったので、その選択は正解だったのだろう。

 

「そんな理由があったとは、まるで知らなかったわい」

「アンバーはこういうところにあんまり興味がないもんね」

「無いわけではないが……行く機会がないからのう」

 

 アンバーは顔は広いが一緒に遊びに行くような友達はエクレアくらいしかいない。

 まぁ、余所(よそ)からきた探索者なんてそんなものだ。

 

「今日がこの機会だ。思いっきり楽しもうぜ!」

「それもそうじゃな!」

 

 俺達は手を繋ぐと、遊園地デートに乗り出した。

 ジャイアントサイズの遊園地内にはアトラクションも沢山だ。

 

 まずは何と言ってもジェットコースターからだ。

 係員にギルドカードを提示して年齢制限をクリアしたアンバーと一緒にでかい乗り物に乗り込むと、すぐにジェットコースターはスタートした。

 

「うひょー!」

「うわぁぁぁー!?」

 

 えげつない速度でぐりんぐりんと曲がりくねった線路を走るジェットコースターから受けるGはとんでもなく、俺は気絶しないように踏ん張るのが精一杯だった。

 

「楽しかったのう。もう1回行ってもええか?」

「か、勘弁して……」

 

 普通に死ぬかと思った。

 後で注意書きをよく見直したら小さく生命力D推奨(すいしょう)って書かれてたし……。

 どうやらゴブリンステータスにはキツいアトラクションだったようである。

 

 グロッキー状態になった俺の休憩も兼ねて、次に向かったのはゴーカート場だ。

 俺は観光客の親御さんと一緒に、小さな子供に混じってレースを楽しむアンバーの姿を眺めた。

 

「へへーん、僕についてこれるかな!?」

「わしは負けんぞ〜!」

 

 子供相手に熱くなりすぎだろ……。

 

 アンバーは前々から一度は運転してみたいと思っていたらしいが、ハーフリングのくせに運転が下手とか言われるのが嫌で躊躇(ちゅうちょ)していたらしい。

 

 他のハーフリングと比べて器用さが低いギフトホルダー特有の悩みなのだろう。

 そう考えるとこれもいい機会だったのかもしれない。

 レースを終えて(四着だった)戻ってきたアンバーの表情は晴れやかだった。

 

「今日のところはわしの負けじゃが、練習していつかリベンジするとしようぞ!」

「あの子達、ティアラキングダムからきたって言ってたけど……」

「わしは一着になりたいのじゃ~!」

 

 アンバーの負けず嫌いな一面を垣間(かいま)見れたのは収穫ではあった。

 休憩して俺の元気が戻ったところで、俺達はアトラクション巡りを再開した。

 

 珍しいものや珍しくないものは数多(あまた)あったが、その中でも魔道具のARで再現された風船みたいな魔物の幻影をこん棒で倒すアトラクションが俺の一押しだった。

 

 こん棒で魔物をしばくのってこんなに気持ちいいんだな……。

 スコアの載った紙を握り締めた俺は、またひとつこん棒愛を深めたのだった。

 

 

 楽しい時間が過ぎ去るのは早いものだ。

 あっという間に日は暮れて、閉園の時間が(せま)ってきた。

 そこで俺達が最後に選んだのは、この遊園地の目玉である大観覧車だった。

 

 ジャイアントサイズの籠に乗り込んでゆっくりと昇っていく観覧車の窓からアクアマリンの夜景を眺めていると、ジャイアントサイズの長椅子の隣に座るアンバーが俺の手をぎゅっと握った。

 

「わしがああも童心に帰って楽しめたのは生まれて初めてのことじゃ。感謝するぞ」

「遊園地、遊びにきてよかったでしょ」

「うむ、誕生日なぞ(よわい)を重ねるだけの日じゃと思うておったがのう。わしが間違っておったわい」

 

 そう言いながらアンバーは浮いた足をぶらぶらさせた。

 お誕生日デートを楽しめたようなら何よりだ。

 男冥利(みょうり)に尽きるというものである。

 

 ……さてと、そろそろいい頃合いかな。

 

「アンバー、今日はアンバーにお願いをしないといけないことがあるんだ」

「こ、ここでは駄目じゃぞ。係員さんに迷惑が掛かってしまう」

「そうじゃなくて……もっと大事なことだよ」

 

 俺は薄暗い観覧車の中で、アンバーの琥珀色の瞳をじっと見つめた。

 

「潜水艇計画にどうしても足りないピースがあるんだ」

「なんじゃ、そんなことか。言ってみい、わしにできることであれば何でもするぞ」

「アンバーのかいおう丸を潜水艇の材料に使うと言っても?」

「それは……」

 

 既に実験艦で問題点の洗い出しは済ませてある。

 後はシーニウムを手に入れて、潜水艇を作るだけの段階だ。

 

 俺は深都コーラルのテティスに手紙を送ってシーニウム製の武器が手に入らないか聞いてみたが、彼女からの返事はNOだった。

 

 いくらスタック銅で()やせると言っても、()やせるからこそ骨董品としての希少価値は高くなるだろうと返されては口をつぐむしかない。

 かくなる上は、アンバーに頼るしかないのだ。

 

「アンバーがかいおう丸を大事にしていることは分かってる。いくら後でフライスが作り直すと言っても、ジャスティンで一番の名工が鍛えたかいおう丸には戻らない。でも、それでも俺達にはシーニウムが必要なんだ」

 

 俺がアンバーに頭を下げると、彼女は困った顔をした。

 そうだよな、誰だって困るよ。

 俺だって必要だから愛杖(あいじょう)を差し出せと言われても、すぐには決められないだろう。

 

「……仕方がないのう。ここで駄々をこねたらわしが悪者になってしまうではないか」

 

 アンバーは左腕に()めた銀の腕輪をしゅっと広げて外すと、俺の左腕を取ってその輪を通した。

 収縮した銀の腕輪は俺の手首にフィットした。

 

「ありがとう、アンバー」

「きちんと後で帰ってくるのならば、これくらいのことは許してやるわい。どうじゃハルト、わしはええ女じゃろう?」

 

 鼻を膨らませてささやかな胸を張るアンバー。

 俺は右手でそんな彼女の小さな左手を取った。

 

「そんないい女にはいいプレゼントが必要かな」

 

 俺は腰の装具入れから取り出した赤銀色の指輪をアンバーの左手の薬指に通した。

 彼女は突然のサプライズに呆然(ぼうぜん)としながらその指輪を見つめた。

 

「これは……?」

「誕生日プレゼント。ゴロニウムのこん棒、欲しがってたでしょ?」

 

 アンバーの目の前が青く光ると、虚空から大きな深紅(しんく)のバットが現れた。

 2mほどの長さがあるそのバット型のこん棒は、すべてゴロニウムでできている。

 

 ゴロニウムの別名はヒヒイロカネ。

 この世界で二番目の硬さを持つ、最強の金属だ。

 

「お、おお……これは……」

 

 アンバーは余りの感動に上手く言葉が出ないようだ。

 両手に持った深紅(しんく)のバットをじっと見つめ続けている。

 俺はその姿を隣でニコニコしながら眺めていた。

 

 しばらくすると、不意にアンバーは深紅(しんく)のバットを高く掲げた。

 

「わしはこのこん棒にひひいろ丸と名付けるぞ!」

「わーぱちぱちー」

 

 ひひいろ丸を装具に仕舞ったアンバーは、拍手している俺に抱き着いてきた。

 

「ハルト、ありがとう! 大好きじゃ!」

「俺も大好きだよ、アンバー」

 

 俺達はこのアクアマリンで最も高い場所で、深い口付けを交わした。

 係員さんに迷惑を掛けないようにその先を我慢するのは、とても大変だった。

 

 

 それからのことを少しだけ。

 観覧車から降りた俺達は、アクアマジャイアントランドの隣にあるジャイアントサイズのホテル、アクアマグランドホテルのレストランでディナーを取った。

 

 ジャイアントの文化を象徴する高カロリーメニューはかなりヘビーだったが、遊園地でいっぱい遊んで沢山のカロリーを消費していた俺達には丁度良かった。

 

 お腹いっぱい食べたら、その後は予約していたジャイアントサイズのスイートルームで……アンバーの誕生日に相応(ふさわ)しい、特別な夜を過ごしたのだった。

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