マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第129話 作戦会議

 ギルド前公園で行われたプリメラさんの告別式が終わった後、仕事に帰っていく親父さんとフライス達を見送った俺達は、探索者ギルドの受付に行って会議室の利用を申請した。

 

「A-3小会議室、Bランク探索者パーティー『こん棒愛好会』の名義で、現時刻から午後3時まで2時間のご利用で間違いありませんね?」

 

 職員の人魚さんに確認を求められたアンバーはうむと頷いた。

 

「間違いない。それと、エクレアに伝言を頼めるかのう」

「もちろん構いませんが、どういった内容でしょうか」

「五層探索の準備ができたと伝えて欲しい」

「……! 分かりました、すぐに伝えましょう」

「しかと頼んだぞ」

 

 アンバーは少し離れた場所で待っていた俺達のところに戻ってきた。

 

「会議室が確保ができた。わしらは先に向かって待っておくとしよう」

「エクレア、ちゃんときてくれるかな」

「なに、あやつのことじゃ。仕事をほっぽり出してやってくるに違いないわい」

「本当かにゃー」

 

 親友のアンバーが言うなら間違いないだろう。

 実際に、そうなった。

 

 

 俺達が探索者ギルド1階の奥にある通路を歩いて借りたA-3小会議室の扉を開くと、そこには既にエクレアの姿があったのだ。

 

「みんな、待っていたわよ」

 

 いつもの白い金魚鉢型のポッドに乗っているエクレアの両隣には、槍を持った二人のマーメイドが空中に浮かんだ水の塊の上を泳ぎながら(はべ)っている。

 

「その二人は……?」

 

 俺が疑問の声を上げると、右のマーメイドが豊かな胸に手を当てて自己紹介した。

 

「私はリコリス、先代の頃より守り人の(にん)を務めさせて頂いております」

「同じく、守り人のテトラでーす」

 

 左のマーメイドが元気よく自己紹介すると、エクレアが面倒臭そうな顔をして説明してくれた。

 

「守り人はアクアマリンができた時、ママのママ……テティス様が用意したダンジョンマスターの護衛の名称ね。この口うるさいのがこれからずっとアタシに付きまとってくると考えると嫌になってくるわ」

「エクレア様、それはないでしょう。私達はあなたが卵だった時から面倒を見ているのですよ」

「プリメラ様の代わりにおっぱいをあげたこともあるもんねー」

「それが嫌だって言ってるのよ……」

 

 言うなれば彼女達はエクレアの乳母(うば)みたいなものだろうか。

 

「今日からお前が(あるじ)なんだろ? 好きなだけカラオケでも聞かせたらいいじゃん」

「カラオケ、ですか……?」

 

 どうやらリコリスはエクレアの悪癖を知らないようだった。

 

「変なこと言わないで頂戴(ちょうだい)! ほら、早くアンタの計画を説明しなさいよ!」

「はいはい、分かってますって」

「はいは1回!」

「はーい」

 

 俺はポーチからこの日の為に用意しておいた資料を取り出すと、会議室の壁際からゴロゴロと引っ張ってきたホワイトボードに磁石を使ってポンポンと貼り付けた。

 

 エクレアと話している間にアンバーとミュール、アルメリアは既に席に着いていたので、俺は助手のアイリスと二人でカンペ片手に潜水艇計画の説明を始めた。

 

「まずは今回の潜水艇計画の概要(がいよう)を説明する。これはアイリスの開発した器用さを補正する魔道具、DCS(器用さ補正システム)装置を利用したもので――」

 

 指示棒で大きな潜水艇のイラストの各部を指し示しながら説明していると、リコリスが片手を上げて質問した。

 

「質問いいでしょうか」

「どうぞ、リコリスさん」

「ハルト様はプロテクションで強固に守った移動拠点を利用するおつもりのようですが、それはギガロドン対策にはなりえませんよ」

「理由をお聞かせして貰っても?」

「過去に沙厄(しゃあく)水脈に挑戦した探索者の記録はすべて(ぞん)じておりますが、その記録には熟練した魔導士(ウィザード)の展開したプロテクションがまるで紙切れのように()み潰されたと残されています」

「リコリスさんはその方の魔力量がどの程度あったかご存じですか?」

「ええ、およそ3万強ありました。これはエルフの魔導士(ウィザード)を含めても上澄みと言っていいものでしょう。ですから――」

 

 魔道スキルであるプロテクションの強度は使用者の魔力量に依存する。

 通常であれば鉄壁とされる魔力Sが1万程度で、その3倍もある魔導士(ウィザード)のプロテクションでも耐えられないとは恐るべき咬合(こうごう)力だ。

 

 通常なら絶望するレベルの強敵だが……。

 俺は懐から取り出したギルドカードのステータスをリコリスに見せつけた。

 

 ハルト・ミズノ 18歳 ランクB 賢者(ウォーロック) Lv45

 魔力S 筋力E 生命力E 素早さE 器用さE

 

「魔力特化の帰還者(リターナー)である俺の魔力量は現在9万4000MB(マナバレット)を上回っています」

帰還者(リターナー)!? エクレア様、それは本当なのですか!?」

「本当よ。彼はママが一層で見つけて、アンバーに保護させたの」

「なんという……」

 

 リコリスは槍を持っていない方の手で目を(おお)った。

 やはりプリメラさんはエクレアにしかそのことを知らせていなかったようだ。

 

 まあそうじゃなきゃ最初にプリメラさんに会った時、護衛なしで二人きりだったのがおかしいという話になるか。

 

「リコリスさん、これでも不可能だとお思いですか」

「分かりません。私には何も……」

「俺は大丈夫だと信じています。だから説明を続けますね」

 

 俺は助手のアイリスに手伝って貰いながらすべての計画を説明した。

 攻略のルート、それぞれの魔物の対処法、用意した装備、そして帰還の手順。

 

「俺達が失敗した時のサブプランとして、深都コーラルのテティス様に攻略隊を派遣するよう要請してある。恐らくアモロ共和国の一部に組み込まれることになるだろうが、少なくともアクアマリン市そのものは存続できるだろう」

「アタシ達が無理な相手をどう攻略するってのよ」

「そりゃあ、こうやってさ」

 

 俺は腰の装具入れから取り出した蒼銀色の指輪をピンとエクレアの方に飛ばした。

 上手いことキャッチしたエクレアが指輪を指に()めて手を前に伸ばすと、虚空から蒼銀色の槍が現れた。

 

「話にあったシードフス合金鋼製の槍ね。これを量産して送りつけようってこと?」

「五層の攻略に参加した者にこの神器を授けると言えば志望者はいくらでも出るだろう。ギガロドン以外なら潜水艇のプロテクションで問題なく対処できるのは分かっているんだから、深部に着いた後は数に任せて突撃させたらいい」

「きっと前みたいに死人が沢山出るわよ」

「その時はもう俺達は死んでいるんだから、気にしなくてもいいだろう」

「それもそうね」

 

 エクレアは納得した様子で槍をぶんぶん振るうと装具に仕舞った。

 

「潜水艇は後3日で完成する。試運転を済ませたらすぐにでも攻略に向かいたいんだが、エクレアはどう思う?」

「いいわよ。アタシも面倒なことは先に済ませたいクチなの」

「よし、決まりだな」

 

 俺は会議室にいる全員の顔を見回して、一つ頷いた。

 

「決行は4日後、大晦日(おおみそか)の朝だ。アクアマリンの未来の為にみんな、やるぞ!」

『おお~!』

 

 俺がグッと腕を振り上げると、みんなが適当に合わせて腕を振り上げた。

 その中で一番声が大きかったのはテトラだった。

 まあ、それはどうでもいいことか。

 

 

 翌日のアクアマリン新聞の朝刊の一面には『こん棒愛好会』が五層に挑むことが大々的に掲載され、潜水艇計画の全容がアクアマリン市民の知るところとなった。

 

 その反応は様々だったが、おおむね寛容的に受け入れられたと言っていいだろう。

 俺達が準備の為に宿とフライス整備工場を往復している間に何度も見知らぬ相手に激励(げきれい)の言葉を掛けられたくらいだ。

 

 ギザード・イーラのダンジョン踏破に協力した話が収録されたアンバーの「わしとこん棒8」の新刊が出ていたのもその認識を加速させた要因の一つだろう。

 

 信じて応援してくれているみんなの為にも、俺達は頑張らないといけないな。

 俺は後ろにアンバーを乗せたバイクを運転しながら、決意を新たにしたのだった。

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