マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第133話 深い水の底から愛を込めて

 大晦日(おおみそか)のダンジョン探索が終わり、年が明けて5日が経った。

 年始の三が日はアクアマリン中がお祭り騒ぎの状態だったが、流石にそれくらいの日数が過ぎると市民の熱気も冷めてこの街にも日常が戻っていた。

 

 俺達はその5日間の間、宿を訪ねてきたオーブリーを含めた記者達から取材を受けたことを除けば普通の休日を過ごしていた。

 

 俺はギルド前公園で行われていた年始のフリーマーケットでハムマンフィギュアを売ったりしていたし、アンバーは宿に(こも)って新作の原稿を書いていた。

 ミュールは走り屋の舎弟(しゃてい)達とあちこちを遊び回っていたそうだ。

 

 休みも十分に取ったし俺達もそろそろ探索に行くか……と話し合って探索の準備をした翌日の早朝、宿にエクレアからの連絡が届いた。

 丁度、俺達が1階の酒場で朝食を取っていた時のことだ。

 

「『こん棒愛好会』の皆様ですね。エクレア様からの呼び出しです」

 

 モブみたいな服装をした天使が差し出した紙片をアンバーは受け取った。

 

「うむ、確かに。朝からご苦労なことじゃ」

「仕事ですので、お構いなく」

 

 固い口調で返事をしてぺこりと頭を下げた天使は急ぎ足で宿から去っていった。

 ギルド本部の下級天使はやらなければならない仕事が山ほどあるから大変だ。

 下っ端天使の(つら)いところである。

 

「アンバー、なんて書いてあった?」

「報酬の用意ができたから早めに顔を出すようにと書かれておったぞ」

「へー、一体いくらになったんだろうね」

 

 探索が終わって探索者ギルドで別れてからエクレアとは一度も会っていない。

 しばらくは忙しいだろうと思って気を利かせたのだが……それももう終わりかな。

 

 ダンジョンマスターになったエクレアはもう簡単には外出できないのだから、たまには顔を出して彼女のストレス発散に付き合ってやるのも悪くはないかもしれない。

 

 俺はそこまでエクレアとは親しくないのでそれは主にアンバーの仕事になるだろうし、その辺りのことは追々考えるとしよう。

 

「あの数のAランク宝珠にゃ、きっと億は下らないにゃ!」

「さて、どうなることやら……」

 

 俺はモモちゃんの作ったアクアマスの辛味噌焼き(とても美味い)を食べながら期待と不安に胸を(ふく)らませた。

 

 流石にいつもみたいに100万メルとは言うまい。

 もしFIREできるような金額だったらどうしようか。

 ミュールは探索者を引退するのかな。

 

 アンバーが探索者を引退したら当然、俺の探索者生活もおしまいだ。

 そうなったら今度は明るい家族計画を考えなければならなくなる。

 まだこの世界に転生して1年も経っていないのに俺、パパになっちゃうかも!

 

「ご飯が無くなっちゃったにゃ。モモ、お代わりにゃ!」

「はーい!」

 

 それにしても……。

 俺達の身体を張った味見のおかげでモモちゃんはどんどん料理が上手くなっているようだ。

 

 彼女がもう少し成長したら夜の酒場で調理の手伝いもできるようになるだろう。

 俺はその日がくるのが楽しみでならなかった。

 

 

 朝食を済ませた俺達は早速、探索者ギルドに顔を出すことにした。

 今日からまた四層で5泊6日の狩りを行う予定だが、精霊樹海を抜けるのは午後になってからになるので寄り道をする時間は十分にあった。

 

 探索者ギルドのロビーで職員の人魚さんに声を掛けると、すぐに俺達はギルドの応接室まで案内された。

 

 出されたお高い茶菓子をパクつきながらしばらく待っていると、護衛のリコリスを(ともな)ってやってきたエクレアが水路から身を乗り出した。

 エクレアは水を(したた)らせながら床をするすると移動して向かいのソファに座った。

 

「みんな、おはよう。元気してた?」

「おはようなのじゃ。当然、元気じゃぞ」

「おはようにゃ」

「おはよう。珍しいな、今日はポッドに乗っていないのか」

「アレは五層の魔石を使っているのよ。他所(よそ)のギルドから買うと高く付くから、しばらく使うつもりはないわね」

 

 ジェット戦闘機並みの制作費を使ってフライスに作らせた特注の金魚鉢型ポッドはジェット戦闘機並みの燃費をしていたようだ。

 

 確かにライトニングエレメンタル戦でも空中を自在に高速移動したりしていたし、マーメイドの陸上戦闘用の装備と考えたらそれくらいじゃないと難しいか。

 

 熟練の魔導士(ウィザード)のマーメイドはプリメラさんや守り人みたいに水の流体を使って陸上で戦闘をするのだろうが、槍聖(ハルバーディア)のエクレアは道具に頼ることで解決した。

 強くなる為のアプローチはいくらあってもいい、魔杖(まじょう)を使う俺と一緒だ。

 

「もうエクレアはダンジョンに潜らないもんな」

「そうね、そのせいでアタシは暇を持て余すことになると思うの。これから何をして過ごそうかしら……」

「何か趣味でもないのか?」

 

 ほら、カラオケとか……。

 リコリスにはそのことを秘密にしているみたいだから口にはしないけどさ。

 

「あったらこんなこと言ってないわよ」

「それもそうか」

「んんっ」

 

 俺達が話していると、エクレアの座るソファの後ろに浮かんでいるリコリスが咳払いをした。

 

「あー、アタシが仕事を放り出してきちゃったから怒っているみたい」

「わしらも仕事前にここに寄っておるからのう。エクレアよ、ちゃっちゃと用件を話してくれるか」

「そうにゃ、あちしらの報酬は一体いくらになったのかにゃ……?」

「じゃあこれ、はい」

 

 エクレアは腕輪から三枚の紙を取り出してアンバーに差し出した。

 俺とミュールはアンバーの横からその紙を覗き見たが、どうやらこの紙はギルド銀行の振込明細書のようだ。

 

「Bランク探索者パーティー『こん棒愛好会』に一人当たり4000万メルの報酬ね。悪いけどこれからのことを考えるとあんまり出せないの。ごめんね」

「よんせんまん……よんせんまんめる……」

 

 あまりの金額にミュールは放心しているようだ。

 とはいえ、現状の収入から考えると4年分の年収といったところか。

 高給取りの俺達にはそこまで響かないな。

 

「3人合わせても、イーラでアザミがギザードから受け取った報酬より安いな」

「それでも赤字は(まぬが)れたようじゃ。エクレアよ、感謝するぞ」

「喜んでくれてよかったわ。ところで、一つハルトにお願いがあるんだけど……」

「お願い?」

 

 エクレアはチラチラと俺の方を見ながら指先をもじもじさせた。

 な、なんだよ急に……。

 

「アタシ、子供が欲しいの。ちょっと手伝ってくれないかしら」

「何ィィィィイイイ!?」

 

 俺がソファを立ちあがって叫ぶと、放心していたミュールがぴょんと跳ねた。

 子作りってつまりそういうコトだよな。

 このツンデレ暴力女のメロンおっぱいを自由にしていいってことだよな!?

 

「ハッ!?」

 

 直感的に生命の危機を感じた俺はバッとアンバーの方を見た。

 ジャイアントサイズのソファに足を投げ出して座っているアンバーはただ真っ直ぐにエクレアを見つめていた。

 

 この巨乳は惜しい……。

 惜しいが……諦めるしかない。

 俺は心の中で血の涙を流しながら断りの言葉を口にした。

 

「俺にはアンバーという愛する女がいるんだ。だからその願いは受けられない。ごめん、エクレア……」

「ええぞ」

「ほら、アンバーもダメって言っているじゃないか」

「だから、ええと言っておるじゃろう」

「いいの!?」

「アンバー、ありがとう!」

 

 俺が他人の乳に鼻の下を伸ばすだけでジェラシーを感じる可愛いアンバーが、公然と浮気を許可するなんて絶対に有り得ない。

 一体どういうことだ!?

 

「俺に何か至らないところがあっただろうか。教えてくれたら必ず改める。だから俺を見捨てないでくれ……!」

 

 アンバーは腰にしがみついて懇願(こんがん)する俺の頭を優しく()でながらぽつりと言葉を口にした。

 

「わしはのう、お主と同じくらいエクレアのことを大事に思っておるんじゃ。じゃからエクレアの頼みなら嫌とは言わんよ。これがミュールならお仕置きしているところじゃがな」

「あちしの評価が低すぎるにゃ」

「わしの許可が欲しければもっと精進(しょうじん)することじゃな」

「考えておくにゃ」

 

 ミュールがそう言う時はやらない時だ。

 それはさておき、こうして俺はエクレアと子作りをすることになった。

 

 エクレアにいつヤるのか聞いたところ準備に時間が掛かると言われたので、俺達はひとまずそのことを棚に上げて探索に行くことにした。

 

 本懐を遂げるまで絶対に死ぬわけにはいかない。

 いつにも増して気合を入れた俺は細心の注意を払って四層の探索を行うのだった。

 

 

 時間が掛かるのならしょうがない。

 そう自分に言い聞かせて待つこと半年、子作りをする約束があったことなどすっかり忘れてしまった頃、俺はエクレアに呼び出されることとなった。

 

 パシリの天使が宿に持ってきた紙には水着着用と書かれていたので、俺はハムマン柄の海パンだけを履いてルンルン気分で夜の探索者ギルドに足を運んだ。

 

 そこで夜勤の人魚の職員さんに小舟に乗せられた俺は長い水路を進んだ先にあった扉のない部屋まで案内された。

 

 小舟から降ろされた俺は去っていく人魚の職員さんの後ろ姿を見送った後、大小二つのソファと一つのテーブルしかないシンプルな部屋を見回した。

 

「懐かしいな、最初にプリメラさんに会った時に案内された部屋だ」

 

 もしかしてここでヤるのだろうか。

 俺が期待に胸を膨らませていると、ちゃぽりと水路から顔を出したエクレアが手招きをした。

 

「ハルト、こっちにきなさい」

「えっ、あっ、分かった……」

 

 俺が水路に近付くと、エクレアは俺の足を引っ張って水路に引き込んだ。

 ブクブクと口から泡を吐きながら深い水の中に沈んだ俺は、冷静にベルトに付けたポーチから潜水マスクを取り出して装着した。

 

『殺す気か!?』

『そんなことしないわよ。アンタが死んだらアンバーが悲しむもの』

『だからって――』

『いいから、行くわよ』

 

 エクレアは俺の腕を取って、ゆっくりと水路の中を泳ぎ出した。

 さっきの部屋の下にあった隠し通路を通って水面に顔を出すと、そこには照明に照らされた広い部屋があった。

 

「ここがダンジョンマスタールーム。これまでママが使っていた、アタシの部屋よ」

 

 部屋に上がった俺が潜水マスクを外すと、潮の匂いが鼻をついた。

 俺が部屋の大部分を占めている海水プールを見下ろすと、そこには南国の海を再現した大きなアクアリウムが広がっていた。

 

「凄いな、まるで本物の海を見ているみたいだ」

 

 ダンジョンマスターになってアクアマリンから離れられなくなったプリメラさんが生まれ故郷を懐かしんで作ったのだろう。

 

 遠く海を離れたチューブ荒野の真っ(ただ)中にこれだけの環境を用意するなんて、とんでもない贅沢に違いない。

 

「ついてきなさい」

 

 そう言ってエクレアがアクアリウムに飛び込んだので、俺は再び潜水マスクを身に着けて彼女の後を追った。

 

 おしゃれな照明に照らされた美しいアクアリウムの中を俺達はゆっくりと泳いでいく。

 マーメイドと水中プレイか、どんな感じなんだろうな。

 

 アクアリウムの底にある貝殻のベッドの前で、エクレアは俺の方に振り返った。

 

『ほら、さっさとやりなさいよ』

『……あの、エクレアさん?』

 

 貝殻のベッドの上にはこぶしくらいの大きさがある赤い球体が5個転がっていた。

 ま、まさかこれは……。

 

『アタシの卵よ』

『ですよねー』

 

 道理でアンバーが浮気に寛容(かんよう)だったわけだ。

 異世界人の俺がマーメイドの生態に詳しくないことを知っていたな。

 

 ……いや、まだ諦めるべきじゃない。

 俺の目的はエクレアと交尾することではない。

 エクレアのメロンおっぱいを自由にすることなのだ。

 

『あのですね、ヒューマンの男には色々と準備が必要なわけですよ。ですのでエクレアさんにはそのお胸をですね……』

『アンバーに聞いたわ。アンタ、サキュバスしか使えないはずの房中術スキルが使えるんですってね』

 

 エクレアはジトーっとした目で俺を見つめながら追い詰めてきた。

 下手に出たら負ける、ここは強気に出るしかない!

 

『俺はお前のおっぱいを楽しみにこの半年間生きてきたんだ! それができないのなら帰らせて貰うぞ!』

『アンタ、最低ね』

『最低で結構だ! 何でもいいからお前の乳を揉ませろ!』

 

 俺は両手を前に突き出して勢いよくエクレアのおっぱいに飛び込んだが、あっという間に彼女に制圧されることとなった。

 

『ひ、卑怯者! 俺の純情を返せ!』

 

 抵抗(むな)しく、後ろ手に拘束された状態で卵の前に運ばれた俺の海パンがズリ下ろされる。

 

『確かテトラはこうやるって言ってたわね……』

『えっ、それは……』

 

 それから5分後、俺は川を遡上(そじょう)したサケのように果てたのだった。

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