マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第142話 ミスリルの研究・破

 俺は不安がるレクナムを連れて、レッドラインの外側の遠く離れた何もない荒野まで移動した。

 

 石で作ったテーブルの上に中を真空状態にしたガラスケースを置くと、そこから離れた場所で待っていたレクナムの隣に立ち「不死鳥の羽衣」を羽織った。

 

「準備できたぞ」

「ほ、本当にやるんですか……?」

「ちょっとくらいなら大丈夫だよ。ちょっとくらいならね」

 

 物質の核融合の過程では大きなエネルギーが発生する。

 空に光っている太陽がその最たるもので、熱とついでに放射線も発生しちゃう。

 

 鉱物学者のレクナムはウラン(名前は違うが)などの放射性物質にも詳しく、プロテクションによる放射線の遮断やスキルを用いた除染も行えると聞いている。

 

 被曝してDNAが損壊してもリジェネレーションが使えるかどうかは分からないが……そこは何とかなるだろう、多分。

 

「では、やりますよ……」

 

 レクナムは透明にしたプロテクションを展開すると、手を前に伸ばして遠くにあるガラスケースの中に灰色の光沢がある爪の先ほどの小石を生み出した。

 ガラスの主原料であるケイ素を核融合で昇華させるとリンができるはずだ。

 

「二つの原子同士が重なって融合するイメージをするんだ……」

「融合……融合……」

 

 俺が双眼鏡を覗き込んで様子を見ていると不意に灰色の小石がパッと青く光った。

 その後に残ったのは、赤っぽい小石だ。

 

「成功かな?」

 

 通常はこの規模の核融合反応が起こればかなりのエネルギーが発生するはずだが、特にこれといってガラスケースに変化はないようだ。

 やはり魔力で生み出した物質だからだろうか。

 

「か、かなり魔力を使いました……」

 

 双眼鏡から目を離して隣を見ると、レクナムは玉のような汗をかいていた。

 難易度の高いスキルの行使は得てして肉体・精神的疲労を及ぼすのだ。

 

「どれくらい使った?」

「1万ちょっとです」

「うーん、結構使うなぁ」

 

 一度に融合させる量を減らせば魔力消費や負担は軽減できるだろうか。

 その辺りは要検証だな。

 

「では、ちょっと調べてみますね」

 

 レクナムはポケットから取り出したグラサン型のガイガーカウンター的魔道具を掛けて現場に近付いた。

 ガラスケースや石のテーブルを調べたレクナムは振り返ってこちらに手を振った。

 

「大丈夫みたいです!」

「よし、第一段階はクリアだな」

 

 俺も近くに寄って、生成したリンの小石を調べているレクナムに尋ねる。

 

「何か違いとか分かる?」

「どうやら、術式を内包できる容量が通常のものよりも増えているようですね」

 

 レクナムがガラスケースの中に通常の土生成スキルで生み出したリンの小石を隣に並べてそれぞれに小さな魔法文字を一文字ずつ詰め込んでいくと、確かに核融合で生成したリンの方が詰め込める量が少しだけ多かった。

 

「よし、俺もやってみるか」

 

 俺は念には念を入れて、レクナムのプロテクションの中から近くのガラスケースに手を向けて1gほどのケイ素を生成した。

 

 器用さが低いとスキルの有効射程が短いのが面倒くさいな。

 アイリスにまた専用のDCS(器用さ補正システム)装置でも作って貰おうか。

 

「融合……融合……」

 

 レクナムにできたくらいだ、俺にだってできる。

 念じながら小石に魔力を込め続けていると、不意に魔力が消費される感覚がした。

 灰色の小石がパッと青く光り、赤く色づく。

 

「成功です!」

「よし、次に行こう」

 

 まだ操作権は俺の下にある。

 俺はさらに魔力を込めて昇華するように念じる。

 ……同じように魔力を詰め込んでいるんだが、さっきよりきつい。

 

 これくらいならまだ、俺のパワーでねじ伏せられる。

 魔力が消費される感覚とともに赤い小石がパッと青く光り、淡い黄色の小石に変わった。

 

「これが硫黄……だと思う」

「はい。この色、間違いありません」

 

 専門家の意見はいつも正しい。

 俺はまた魔力を込める。

 ぐぐぐ、さっきよりさらにきつい。

 

 無理にぶ厚い紙を折り曲げているような感覚だ。

 俺は脂汗をかきながら、思いっきり魔力を詰め込んだ。

 淡い黄色の小石はパッと青く光り、白い小石へと変わった。

 

「塩素……これ以上は、スキルの熟練度を上げないと無理みたいだ」

 

 まだいけそうな感覚はあるが、今の俺の力では到底詰め込めそうにない。

 俺はガラスケースを操作して作ったガラス瓶に生成した試料を小分けにした。

 リンは空気中で発火するはずだからここで取り出すわけにはいかない。

 

「これでミスリル、作れますかね?」

 

 試料の入ったガラス瓶をレクナムは白衣のポケット(に隠したマジックバッグ)に仕舞った。

 

「そこまでは分からんが、核融合を利用して元素周期表を埋めることはできると思う。レクナム、これは鉱物学者としては大事なことじゃないか?」

「なるほど、確かに……。色々と試してみましょうか」

 

 それから何日も掛けて検証を行った結果、いくらかのことが分かった。

 

 まず、土生成スキルで生み出した物質は核融合で昇華させることで術式を書き込める容量が少しずつ増えていく。

 昇華の回数によっては、ダンジョン産の物質よりも容量が増える場合がある。

 

 ダンジョン産の金属を核融合で昇華させて別の金属に魔力的性質を引き継げないか試したが、これは失敗に終わった。

 恐らく、昇華の過程で属性(というより原始的術式?)が壊れてしまうのだろう。

 

 そこで今度は地上の鉱物を使って核融合反応を起こせるか試してみたのだが、これが厄介なことになった。

 

 

 レクナムが海砂から抽出したケイ素を0.1gほど(これで魔力消費は1000程度だ)使って核融合スキルを使うと、いきなり目の前が真っ白になった。

 少し遅れてドォォォンと大きな爆発音がしたかと思うと、耳の鼓膜が破れた。

 

 俺は冷静にハイヒーリングを自身とレクナムに使うと周囲の様子を確認した。

 ガラスケースがあった場所には核融合反応で発生した莫大なエネルギーでできた大きなクレーターがあり、その付近の地面が熱によってガラス化していた。

 

「プロテクションがなければ即死だった……」

 

 今の俺は「不死鳥の羽衣」を羽織っているから大丈夫だと思うが、レクナムが外の熱された空気を吸い込んだら肺が焼けてしまうかもしれない。

 

 俺はポーチから取り出した潜水マスクのスイッチを入れて、プロテクションの内部に空気を補充し始めた。

 

「一体、なぜなのでしょうか。今までこのようなことは起こりませんでしたよね」

「これまで核融合に使ったものは魔力で生成した物質、ダンジョンで生成された物質……どちらも魔力が関わっている。しかし今使ったものは……」

「地上にあったもの……ですか」

「この星の成り立ちに関わることなのかもしれない。きっとこの星が誕生した時にはブルームーンやダンジョン……マナや魔力が存在しなかったんだろう」

 

 ブルームーン人工物説やダンジョンテラフォーミング生物説とか。

 あんまり突っ込んだ考察をし始めるとSF展開が始まってしまいそうなので、俺はここらへんで思考を打ち切った。

 

「なんにせよ、俺達のやることは一つだ。このスキルを使って人工的にミスリルを生み出す……それだけだ」

 

 この核融合スキルの危険性を(かんが)みて、俺達はこのスキルを錬金術スキルと呼称し秘匿することにした。

 

 魔道具職人(クラフター)が主役のこの世界には錬金術という概念が存在しなかったので丁度良かったのである。

 

 それに加えて、錬金術スキルで生み出した物質は昇華した回数で呼ぶことにした。

 +1とか+4とか、そんなゲームチックな感じで呼んでいる。

 分かりやすさ第一だ。

 

 これから俺達は錬金術スキルを鍛えに鍛えて、昇華の限界値を目指すことになる。

 本当にこれでミスリルが作れるようになるかどうかは分からない。

 でもまあ、未知を探求するのは楽しいからしばらくはこれで行こうと思っている。

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