マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第143話 パーティーに行こう!

 その日、俺は宿の自室でフォーマルな紳士服に身を包んで鏡の前に立っていた。

 縦長のその姿見には黒い髪をポマードで()でつけたジョニー・デッ〇似のイケメンが映っている。

 

「アンバー、どう? 変じゃない?」

 

 同じくフォーマルな女性用の正装を着ているアンバーに尋ねると、彼女はにこりと笑顔を浮かべて俺のお尻をポンと叩いた。

 

「ばっちりじゃぞ。今日はこんないい男を連れてパーティーに行けるのじゃからな、わしは幸せ者じゃ」

「ならいいんだけど……」

 

 今日はこん棒愛好俱楽部の定期集会がある日だ。

 コネを駆使して入会したはいいものの、去年はハムカーの企画会議で忙しくて出席できなかったので今回が初めての参加となる。

 

 今日のパーティーには世界一の大富豪のガゴリウス氏も出席する。

 俺がガゴリウス氏と話すことはないだろうけど、シジオウなんて目じゃないくらい超絶偉い人なので少し緊張していた。

 

 普段はどこに行くにも探索者服を着てばかりで、こういった正装を着るのは久しぶりだったから不安だったんだよな。

 確か、前にスーツを着たのは成人式の日だったはず。

 

 で、その日の夜に俺は……あれ?

 どうやって俺はこの世界に転生してきたのだったか。

 全然、思い出せない。

 

 ……ああ、そうだった。

 俺は帰還者(リターナー)だから一部の記憶に欠落があるんだった。

 死んだ時の記憶なんて覚えていてもいいことなんてないだろうし、まあいいか。

 

「じゃあ、そろそろ時間だし会場に向かおうか」

「うむ、そうするとしよう」

 

 俺達が宿の外に出ると、目の前の道路には一台のタクシーが止まっていた。

 事前に手配していたカーター交通のタクシーだ。

 

 いつもみたいにバイクに乗ってうっかり機械油で汚してしまったら、せっかくのスーツが台無しになるからな。

 たまにはこういう交通手段を使うのもいいだろう。

 

 後ろのドアが開いたので後部座席に乗り込むと、すぐにタクシーは走り出した。

 タクシーの車内には晴れやかなサクレアの曲が流れている。

 

 運転席の後ろに貼られていたステータス表を見ると、今日の運転手はカーター氏の孫のリオットのようだった。

 

「リオット、プレーンは元気?」

「ええ、夜泣きがうるさくて大変なくらいです。ハルトさん、先日はありがとうございました。あんなに沢山……」

「俺にできるのはこれくらいだし、気にしないでくれ」

 

 サクレアのライブ会場で会ったリオットから息子が生まれたという話を聞いた俺は、カーター交通の事務所でタクシーを手配するついでに事務所にいたリジー(小さな赤子を抱えてだらけていた)に祝儀(しゅうぎ)を贈っていた。

 

 普通はベビーグッズなんかを贈るのだろうが、リジーが好きなのはお金だと知っていた俺は気を利かせて100メル金貨の詰まった大袋を渡した。

 そりゃあもう、諸手(もろて)を挙げて喜んでくれたよ。

 

「どこもかしこも子供、子供じゃのう……(うらや)ましいわい」

 

 ダンジョンマスターの代替わりで未来への漫然(まんぜん)とした不安が解消されたのか、アクアマリンではここ1年の間にベビーブームが始まっていた。

 

「お二人はその……まだお子様を儲けられたりはしないのでしょうか?」

「考えてはいるんだけどね。一度西大陸に行ってからにしようと思っているんだ」

「そうなんですか、西大陸に……」

「うむ、昇格試験を受けねばならぬからな」

 

 去年は何かと立て込んでいたので諦めたのだが、今年はギルド本部がある迷宮都市イクリプスに行ってAランク昇格試験を受けるつもりで準備を進めていた。

 

 昇格試験を受けた後は、ジャイアント氏族の大迷宮都市ネフィリムを経由してシーシュポス山脈にあるアンバーの故郷ハイランドに顔を出したいと思っている。

 

 幼少期のアンバーをいじめた(そんな事実はない)魔力至上主義者のハーフリングどもに俺のチート魔力を見せつけてざまぁしてやるぜ。

 

 そうやって一通り西大陸を巡ったらアクアマリンに帰り探索者を引退、それからはアンバーと二人でハムカー御殿(ごてん)に住んで悠々自適なセカンドライフを始めるのだ。

 俺は大体そういう感じの将来設計を考えていた。

 

 その為にも、早めにレクナムとの共同研究を終わらせてしまわないとな。

 土生成スキルを駆使して人工的にミスリルを作る、壮大な研究を。

 

 この8ヵ月近くで錬金術スキルの熟練度を上げに上げた俺は、核融合による昇華の限界値が既に20回を越えていた。

 

 もうちょっとで上手く行きそうなんだ。

 後少し、後少しだけ頑張れば目標の25回に到達する――。

 

「お二人とも、着きましたよ」

 

 おっと、考え込んでいる間に目的地に到着したようだ。

 俺は懐から取り出したギルドカードを決済端末にタッチして料金を支払った。

 そして二人でタクシーから降りた後、窓越しにリオットに声を掛ける。

 

「リオット、今日はありがとう。リジーによろしくね」

「はい。ハルトさん、パーティーではくれぐれもお気をつけください」

「大丈夫だよ。……アンバー、大丈夫だよね?」

「大丈夫じゃ。わしが見ておる限り、お主がジャイアントに踏み潰されることはあるまいて」

 

 アンバーがここのパーティー会場でジャイアントに踏み潰された経験があると聞いていた俺は一抹(いちまつ)の不安を抱えていた。

 

「信じてるよ」

 

 俺はアンバーの手をぎゅっと握って、その不安を(まぎ)らわせたのだった。

 

 

 仕事に戻るリオットを見送った後、俺はすぐ近くにある巨大な建造物を見上げた。

 アクアマグランドホテル、今日はここの大ホールを貸し切ってこん棒愛好俱楽部の定期集会は行われるのだ。

 

 俺達はジャイアントサイズの自動ドアを潜りジャイアントサイズのロビーに行くと、ジャイアントサイズの案内板に従ってジャイアントサイズの通路を歩いた。

 

 ジャイアントサイズの受付でジャイアントの女性にギルドカードと会員証を見せて受付を済ませると、解放されている両開きの大扉を潜りジャイアントサイズの大ホールに入る。

 

 立食形式のそのパーティー会場では、紳士服を着た何人ものジャイアント達が愛用のこん棒を片手に談笑していた。

 知性と暴力性が混在するその姿は非常にシュールである。

 

「おおい! わしじゃ、アンバーじゃ!」

 

 アンバーが大きな声を上げて両手を振ると、彼らは俺達の方を見てぺこりと会釈(えしゃく)した。

 そして、そのうちの一人がドシンドシンと足音を立てながら笑顔で近付いてくる。

 

「アンバー殿、それにハルト殿まで! お元気でしたか?」

 

 やってきたのはティアラキングダム支社の社長をしているゲオルグ氏だった。

 

「わしはいつも元気じゃぞ」

「ゲオルグさん、お久しぶりです」

「ささ、ここは危険ですから壇上へお上がりください。ハルト殿、手伝いますよ」

「ありがとうございます」

「あそこの階段を(のぼ)るのはちょいと大変じゃからのう、助かるわい」

 

 俺は彼の手に乗せて貰って、パーティー会場の奥にある壇上に移動した。

 ちなみにアンバーはぴょんとジャンプして簡単に登っていた。

 

 どうやらここがジャイアント以外の種族用のスペースらしく、人間サイズのテーブルの上には山盛りの豪華な料理が並んでいる。

 

 どれもジャイアントの文化を象徴するハイカロリーな料理ばかりだ。

 バターソースの掛かった分厚いステーキにエルビスサンド、気持ちばかりの野菜(フライドポテト)……胃もたれしちゃいそう。

 

 この壇上では筋骨隆々の男達がパツンパツンになった紳士服を着て愛用のこん棒を片手に談笑していた。

 

 ここにいるのはそのほとんどが岩塊(がんかい)台地上層で狩りをしているうちにこん棒愛に目覚めた戦士達だと聞いている。

 

 おっと、おホモだちにサーッとされたことがきっかけで(えん)を切った元パーティーメンバーのラインと目が合った。

 彼は気まずそうな顔をしてポリポリとほっぺを()いている。

 

 俺はラインにぺこりと会釈(えしゃく)すると、料理を適当に大皿に移し始めた。

 シャンパンの瓶とシャンパングラスもいくつか取って石の触手に持たせる。

 そしてひひいろ丸を片手にゲオルグ氏と話しているアンバーのところに向かった。

 

「—―どうじゃ? わしのひひいろ丸はかっちょええじゃろう」

 

 壇上だと身長の高いジャイアントと目線が合うから話しやすいようだ。

 

 俺は石の流体でハムマンデザインの豪華な小テーブルを作って、その上に持ってきた料理の大皿と酒瓶、シャンパングラスを並べた。

 勝手にしているが、ちょっとくらいなら大丈夫だろう。

 

「いいですね、ヒヒイロカネのこん棒。私も若い頃にこん棒ミュージアムで会長のコレクションを見てからずっと憧れていたのですが、いかんせん希少なヒヒイロカネを買い集めるのは大変でして……」

 

 フライスが知り合いの金属卸売業者に売ったスタック銅合金自動裁断機のおかげでレアメタルは以前より安定して市場に供給されるようになったとはいえ、まだまだ需要を満たすには足りないようだ。

 

「それならば帰る前にフライスのところに寄るとええぞ。あそこが一番ヒヒイロカネを安く買えるからのう」

 

 俺が有り余る魔力に飽かせて作りまくっているので、フライス整備工場の倉庫にあるマジックコンテナの中には希少なレアメタルが何トンも詰め込まれていた。

 

 俺達はこのレアメタルを金属卸売業者に少しずつ売って、人工ミスリルの研究費や飛行機の開発費に回している。

 アンバーはそれをゲオルグ氏に卸値よりも安く譲ってもいいと提案したわけだ。

 

「ほう、それはそれは……。貯金と相談して検討してみましょう」

 

 俺が二人のこん棒トークを聞きながらシャンパングラスを片手にフォークで料理をつついていると、ゲオルグ氏は俺にちょっとした話題を振ってきた。

 

「そうそうハルト殿、園長のガラテアから話は聞いていますよ」

「ハムカーのこと?」

「ええ。ハルト殿のおかげでウチの遊園地が随分(ずいぶん)と繁盛しているようで、ありがたいことです」

 

 「PUIPUIハムカー」は早い段階でアクアマジャイアントランドとコラボして、ゴーカート場でリアルハムカーのレースができるアトラクションを提供していた。

 

 これがまた子供連れの観光客に大層な人気があって、休日にはアトラクションの前に長蛇の列が作られるほどだった。

 平日の来場者数が前年の2倍になったと言えばその凄さが分かるだろう。

 

「これでハムカー人気が定着してくれたらいいんですけどね」

「最近はラブオデッサの方でもハムカーグッズが出回るようになっていますし、きっと大丈夫だと思いますよ」

「そうなんですか、それは嬉しい報せですね」

 

 ミスリルの研究で忙しかったこともあり、ハムカー周りのことは全部タヌヨシに丸投げの状態だった。

 

 先日の飲みでは久々に会ったファルコと話すのが楽しくて、タヌヨシに近況を聞くのもすっかり忘れていたし……。

 

「よーし、タヌヨシともっとハムカーを盛り上げてこのアクアマリンをハムカーの街に変えてやろう。打倒プンレク島だ!」

 

 酒が入って気分が上がってきた俺はいきなりガッツポーズをした。

 

「お主は一体どこを目指しておるのじゃ……」

「俺もちょっと分からなくなってきてる……」

 

 いつから俺はこうなってしまったのだろう。

 あれこれと手を伸ばして忙しい日々を送っているうちに、すっかり本来の目的を忘れてしまっていた。

 

 俺は恋人のアンバーとイチャイチャしながら、近くて遠くにある巨乳を追いかけるのが望みではなかったのか。

 

 揉みたかったな、エクレアのメロンおっぱい……。

 アルメリアさんのスク水巨乳もイイ……。

 カウリンの爆乳にはもう会えないのだろうか……。

 

 俺はかいおう丸をゲオルグ氏に自慢しているアンバーをボーっと眺める。

 腰まで伸びたふわふわの金髪に琥珀色の瞳、白いほっぺを赤く染めて鼻を膨らませている、いつもと変わらない彼女の姿……うーん、マーベラス!

 

 俺は知らず知らずのうちに度数の高い酒を飲んですっかり酔っ払っていた。

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