マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第144話 クラブだいすきクラブ

 こん棒愛好俱楽部の定期集会にやってきた俺が不覚にも深く(親父ギャグ)酔っ払ってアホなことばかりを考えていると、パーティー会場になっている大ホールの入口の方からドンドンと太鼓を鳴らす音が聞こえてきた。

 

「どうやら会長がやってきたみたいですね」

「なんだぁー?」

「お、お主……顔が真っ赤じゃぞ! 飲み過ぎじゃ!」

 

 振り返ったアンバーがかいおう丸を片手に俺の方を見て、驚きに目を丸くした。

 

「全然酔っ払ってないよーん」

「仕方のないやつじゃのう……」

 

 俺が赤ら顔で頭をフラフラと揺らしていると、かいおう丸を仕舞ったアンバーがポーチをごそごそして一本の魔杖(まじょう)を取り出した。

 俺に向けられた杖先から降り注いだ青い光が血中のアルコールを抜いていく……。

 

「うう、愚かな俺を見ないでくれ……」

 

 キュアポイズンで酔いを醒まされてシラフに戻った俺は両手で顔を隠した。

 初めてのパーティーで浮かれていたのだろうか、お酒を飲んでこんな失態を犯すなんて恥ずかしい限りである。

 

「何をやっておるんじゃ。ほれ、ガゴリウス氏がやってきたぞ」

 

 アンバーが指差した先を見ると、肩にゴブリン紳士を乗せた老齢のジャイアント紳士が杖を手にパーティー会場の特別席に向かっている姿が目に入った。

 その隣を身長が2mほどもあるジャイアントの少年が歩いている。

 

「あれ、もしかしてギリアムくん?」

 

 ギリアムくんはモモちゃんの同級生でずっこけ三人組の一人だ。

 聞いた話だとギリアムくんはガゴリウス氏の血縁らしいが、ここで彼の姿を見ることになるとは思わなかった。

 

「実は、わしはこっそりあやつらに稽古(けいこ)をつけておったんじゃ。こん棒使いの弟子としてのう……!」

「そ、そんなことが……!」

 

 最近のアンバーはモモちゃんを連れてどこかに出かけることが多かったのだが、まさかそのような謎の修行を行っていたとは……。

 

「それで、具体的には何をしていたんだ?」

「一層を巡りながら探索者のイロハを叩き込んでおる。未成年でも保護者連れならばダンジョンに潜っても大丈夫じゃからのう」

「へぇ、モノにはなりそう?」

「うむ。ちょいとパーティーバランスは悪いが、いずれは三層での狩りを(こな)せるようになるのが目標じゃな」

 

 アンバーの話によると、パーティー編成は以下の通り。

 

 タンク(ギリアム)戦士(モモ)戦士(タケシ)斥候(スネヲ)

 

「四層に行くには魔導士(ウィザード)が足りないか」

「頭角を(あらわ)せば希望者は出るじゃろう。心配は要らぬよ」

 

 俺達が10年も先の話をしていると、再び入口の方からドンドンと太鼓を鳴らす音が聞こえてきた。

 

 パーティー会場の入口で脇に抱えたジャイアントサイズの太鼓を鳴らしていたのは、黒服を着てグラサンを掛けたジャイアントのSPだった。

 一体、何なんだ……。

 

 特別席に座っていたガゴリウス氏がマイクを手に立ち上がると、パーティー会場にざわ……ざわ……としたざわめきの声が広がった。

 

「今年も……無事に……こん棒愛好俱楽部の……定期集会の日を……迎えることができて……非常に……喜ばしく思う……」

 

 ガゴリウス氏は低いダンディな声で、とてもゆっくりとしたスピーチを始めた。

 おおむね世界各地のこん棒愛好倶楽部の近況にまつわる話で、会報を読んでいる会員の俺には既知の内容だった。

 

「さて……ここで新たな仲間を……紹介しよう……こん棒愛好俱楽部の……姉妹クラブになる……クラブだいすきクラブの……ヒフミゴロウだ……」

 

 ジャイアントサイズのテーブルの上に置かれた椅子に座っていたゴブリン紳士がマイクを片手に立ち上がった。

 

「この(たび)クラブだいすきクラブの会長を務めさせて頂くことになりましタ、ヒフミゴロウでス。以後お見知りおきくださイ」

 

 ヒフミゴロウはぺこりと頭を下げると着席した。

 

「ティアラキングダムの……迷宮都市ジャスティンを……発祥の地とする……クラブだいすきクラブは……こん棒型魔杖(まじょう)を愛する……ゴブリンの集まりだ……」

 

 その話を聞いた俺とアンバーは顔を見合わせた。

 

「まさかのう……」

「いやぁ、まさかね……」

 

 そのまさかだった。

 

 

 ガゴリウス氏によるスピーチが終わった後、俺達は壇上までやってきたギリアムくんとおしゃべりをしていた。

 

「師匠のおかげで、僕はプレーリーラットを倒せるようになったんです……!」

「ギリアムくんも成長したんだな」

 

 精神的にも、肉体的にも。

 俺は素朴な笑みを浮かべているギリアムくんの顔を見上げた。

 この1年ちょっとの時間で彼の身長はすっかり俺を追い越してしまった。

 

「タンクとしてはまだまだじゃがのう。お主もそろそろジャイアントハムマンを相手にしてもよい頃ではないか?」

「も、もうちょっとだけ心の準備をする時間をください……」

 

 アンバーはスパルタ師匠だった。

 8歳児なんだから少しくらい手加減してあげても……と思わなくもない。

 

 ただまあ、安全なうちに心を鍛えてやりたいというアンバーの気持ちも分かる。

 何しろ探索者は命がけの仕事だ。

 保護者同伴の見習いといえど、遊びじゃないのである。

 

「お主はずっとそればかりではないか。こうなったらタンクの専門家に師事させることも考えねばならんな」

 

 弱音を吐くギリアムくんを見て眉をひそめたアンバーは両腕をがしりと組んだ。

 お手柔らかにお願いしますよ、アンバー師匠。

 

「ひー……」

 

 そんな感じで俺達がギリアムくんとおしゃべりをしていると、ゴブリン紳士のヒフミゴロウがジャイアントのSPに運ばれてこちらにやってきた。

 彼は壇上に降り立つと、両腕を広げて俺の方に歩いてくる。

 

「お久しぶりでス、ハルト・ミズノ様! ずっとお会いしたかったでス!」

「ええと、どこかでお会いしましたっけ……」

 

 俺がジャスティンで会ったゴブリンはほぼほぼ全員がサブマスターだったから、顔見知りって言われても分からないんだが……。

 ぶっちゃけ俺には服装くらいでしかゴブリンの見分けはつかないし。

 

「おっト、それは失敬しましタ。当時の私は見習い兵でしたかラ、ご存じないのも無理はありませんネ」

 

 ヒフミゴロウは禿げ頭を()でるとくしゃりとした笑みを浮かべた。

 

 詳しく話を聞いたところ、クラブだいすきクラブができたのはジャスティンで俺のこん棒型魔杖(まじょう)を使った戦いぶりを目撃したゴブリン達が真似をし始めたのが発端だったようだ。

 

 ジャスティンのゴブリン兵に魔杖(まじょう)を卸しているティアラキングダムの大手魔道具メーカーに直談判して作らせた、撃ってよし、殴ってよしのクラブシリーズは探索者をしているゴブリン達の間で爆発的な人気となった。

 

 元々ジャスティンがこん棒愛好倶楽部の一大拠点(ジャスティレベリングの影響だ)ということもあり、こん棒愛に目覚めたゴブリン達が作ったクラブだいすきクラブはこん棒愛好俱楽部と協力関係を結ぶことになったそうだ。

 

 ちなみにクラブだいすきクラブの会長は、サブマスターになっていない成人前の見習い兵を集めて行われたくじ引きによって決まったらしい。

 本当にいいのかそれで……。

 

「ジャスティンの仲間達に自慢したいのデ、ハルト様の素晴らしいクラブ(こん棒型魔杖(まじょう)をゴブリン達はそう呼んでいるらしい)を見せて頂けませんカ?」

「もちろんだ、好きなだけ見ていけ……!」

 

 俺はヒフミゴロウにこん棒マイスターアイリス製の三本のクラブを自慢した。

 何だったら一緒に記念撮影もした。

 

 そうしていると興味を持った他のこん棒愛好家達も続々と集まってくる。

 なんだか周囲が騒がしくなってきたが、年に一度のパーティーなんだからこれくらいが丁度いいだろう。

 

「そうれ、乾杯じゃ!」

『こん棒、最高ー!』

 

 盛り上がってきた俺達はそれぞれ愛用のこん棒を片手に、もう片方の手でシャンパングラスを持ち上げて乾杯した。

 

 ジャイアントのカメラマンがジャイアントサイズの一眼レフカメラで並んだ俺達をパシャパシャ撮影してくれる。

 この写真は、次のこん棒愛好倶楽部の会報に載るらしい。

 

 パーティーを楽しむそんな俺達を、会長のガゴリウス氏は遠くの特別席からニコニコと眺めていたのだった。

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