マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第149話 砂漠の街テバール

 俺の運転するハムカーはドドドドドと砂埃を上げながら広大な砂漠を勢いよく走っていた。

 遠くに見えていた城塞都市もあっという間に目の前だ。

 

 ぶっちゃけると俺のハムカーよりアンバー達が走った方が普通に速いんだけどな。

 たまにはこういう趣向も悪くはないだろう。

 

「そこの車ー! 止まれー!」

 

 おっと、閉じられた門の上から褐色肌で茶髪の男が大きな声で呼び掛けてきたぞ。

 部下らしき男達はゴツい魔杖(まじょう)なんかも構えちゃって、まるで臨戦態勢だ。

 

 俺はキキーッとブレーキを(比喩(ひゆ)表現)掛けて門の前で横向きにハムカーを停車させると、窓から身を乗り出して挨拶した。

 

「よう、元気かい?」

「なんだその珍妙な車は……新種の魔獣かと思ったじゃないか」

「アクアマリンではこういうのが流行ってるんだよ」

「そ、そうか……。まあいい、車から降りてギルドカードを提示してくれないか」

 

 俺達はハムカーから降りると、懐から取り出したギルドカードのステータスを表示して提示した。

 

「すぐに開けるから、ちょっと待っていてくれ!」

 

 双眼鏡でステータスを確認した男はそう言って、門の上から見えなくなった。

 

 俺が石の流体に戻したハムカーを魔力に還元しながら待っていると、しばらくして門が音を立てて開いた。

 そこには先ほどの褐色肌の男がニコニコとした笑顔を浮かべながら立っていた。

 

「ようこそ、砂漠の街テバールへ。歓迎するよ」

「やたらと嬉しそうだな。どういう了見だ?」

余所(よそ)の探索者がこの街にやってくるなんて滅多にないことなんでね。どうだい、これから僕と一緒に飯でも食いに行かないか?」

 

 飯という言葉を聞いてミュールの腹がゴゴゴゴゴと(うな)り声を上げた。

 

「今すぐあちしの胃袋を満足させる美味い飯屋に連れて行くのにゃ……!」

 

 そういうことになった。

 

 

 俺達は門番の男(シャールというらしい)に案内されて、テバールの街の大通りを歩いていた。

 

「この街ではスリや置き引きがよく出るんだ。大事なものは肌身離さず身に着けておきなよ」

 

 テバールの街並みは何というか、雑多という呼び方が似合う感じだ。

 茶色い石造りの四角い建物が立ち並ぶ道には車やバイクなど影も形もなく、代わりにラクダのような見た目の魔獣が荷役を行っている。

 

「へぇ、スリねぇ……」

「ここに探索者ギルドはないはずじゃが、もし捕まったらどうなるのかのう?」

 

 道行く人々はそのほとんどが中東風の民族衣装を着た褐色肌のヒューマンで、他の種族の姿はポツポツとしか見えない。

 なんか異世界というよりどこかの発展途上国にきたような気分だ。

 

「その時は僕らみたいな衛兵の前に引き出されて鞭で背中を叩かれるのさ。酷い時は腕を切り落として街から追放したりする。まあ、これは実質死刑みたいなものだね」

「未遂はどう扱うんだ?」

 

 俺は足元に(はべ)らせていた小さな石の流体を伸ばして、俺のフードに後ろから手を突っ込んでいた小さな不届き者を縛り上げて頭上に持ち上げた。

 どこからどう見てもストリートチルドレンの小汚いガキだ。

 

「はっ、離せ! オレは何もやってねぇ!」

「あー……腕の骨を折るくらいかな」

「流石にそれは可哀想だな。どれ、このまま連れて行って飯でも食わせてやるか」

「いいのかい? ハムマンじゃあるまいし、この先も面倒を見られるわけじゃないだろう」

「わしらにはわしらのやり方がある。次はないということをしっかりと教え込まねばなるまい」

 

 食後にアンバーから受けるお仕置きは腕を折られるよりきついものになるだろう。

 筋力Sから繰り出されるお尻百叩き……回復スキルのアフターサービス付きだ。

 

 俺は石の触手でぐるぐる巻きにしたガキを頭上に掲げて見せしめにして、他のスリが手を出してこないようにした。

 流石に何人もストリートチルドレンを抱え込むのは大変だと思ったのだ……。

 

 

 シャールおすすめの飯屋は街の中心にあるダンジョンの塔が見える位置に建っている大きな大衆食堂だった。

 

 ガヤガヤと騒がしい店内の一角にあるテーブルの上に山ほど並べられている、芋や豆を使った香辛料の効いた郷土料理を二人の腹ペコさんが()っ込んでいく。

 

「はふっはふぅ、美味いにゃああああ!」

「美味い、美味いよぉ……」

「飯は逃げん。今日くらいは好きなだけ食うがよい」

 

 涙を流しながら飯を()っ込んでいるこのビーバーとかいう褐色肌でくすんだ金髪をしたヒューマンの少年……風の身なりをした少女。

 

 彼女は1年ほど前にダンジョンで両親を亡くして親戚に引き取られたのだが、つい1ヵ月ほど前にその家を追い出されてしまったのだという。

 理由はその親戚に子供が生まれて邪魔になったから。

 

 まあ、よくあるお涙頂戴(ちょうだい)のお話だな。

 たった1ヵ月でスリに()ちるくらいだし、盗賊適正は高そうである。

 

「なあシャール、こいつがこの街で食っていけるような仕事はあるのか?」

 

 ()せているから線は細いが、それでも下働きくらいはできるだろう。

 俺が木のスプーンで豆の煮込み料理をつつきながら聞くと、シャールはうーんと頭を悩ませてから答えた。

 

「僕はこの街ではそこそこ顔が広いからやる気があるなら紹介はできると思うけど、それには先立つものが必要だね」

「金なら腐るほどあるが、それで済ませるのも詰まらないな……」

 

 俺達は明日にはこの街を離れる身だ。

 ここは探索者ギルドの管理下にない治外法権だし、ちょっとくらい派手なことをしても大丈夫だろう。

 

「シャール、ちょっと耳貸せ」

「なんだい?」

「(俺は欠損した肉体を完全に再生させるリジェネレーションが使える。10人くらいならイケるからさ、この街の名士を紹介してくれないかな)」

 

 俺がそう耳打ちすると、シャールは目を大きく見開いた。

 

「金よりよっぽどいいものだと思うけど、どう?」

「ああ……それはとてもいい話だ……」

 

 シャールは目を閉じて何かに祈るような仕草をした。

 どうやら俺の提案は彼の望みに通じるようなものだったらしい。

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