マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第154話 第三の故郷

 正直なところ、病み上がりの生娘にはキツいプレイだなと俺も思った。

 だからシルキーが気をやったら終わりにしようと考えていたのだが、これがなかなかしぶとい娘で何度イっても満足してくれない。

 

 生まれてからずっと深い闇の中で苦痛とともに生きてきたからだろうか、健康体になったシルキーはとてつもない持久力の持ち主だった。

 もっと、もっととせがまれて、結局夜遅くまでヤり通すことになってしまった。

 

 精根尽き果てた俺は最終手段の医療スキルを使ってシルキーを失神させることで、どうにかフィニッシュまで持ち込んだ。

 

「ようやく終わった……」

 

 生命力Eの限界を越えるご奉仕を行ったことで、俺は疲労困憊(こんぱい)になっていた。

 アンバーに使ったことすらない感度3000倍でも耐え抜くっておかしいだろ。

 シルキーの前世はサキュバスだったに違いない。

 

「アンバー、もしかしてこうなることが分かっていたのか?」

 

 ミュールの使っていた(当人は途中で防音結界の外に逃亡した、多分庭で寝てる)寝台に座るアンバーは困り顔で答えた。

 

「ちょっとした意地悪のつもりだったのじゃが、まさかこのようなことになるとはのう……」

「おかげで寝不足決定だ……」

 

 寝台から降りた俺が虚空に浮かべた温水で身体を洗っていると、アデニウムが窓を乗り越えて部屋の中に入ってきてこちらに深々と頭を下げてきた。

 

「ハルト様、この(たび)は本当にありがとうございました。これですべてが丸く収まることでしょう」

「丸くとは、どういう意味でしょうか」

 

 アデニウムは満足そうな顔でスヤスヤと寝息を立てるシルキーを抱え上げると、汚れた寝台をサッと腕輪型装具に登録して収納した。

 

「砂漠の民のしきたりでは、吉兆(きっちょう)を持つ娘は他の街に住む族長の家へと(とつ)ぐことになっているのです。しかしこうして砂漠の外からきたハルト様の妻となり、子を(はら)んだことでまた別の選択肢が生まれました」

 

 消えた寝台の下から大量のハムマンフィギュアが姿を覗かせたが、俺にはもう移動させる元気は欠片も残っていなかった。

 

「魔力に優れた魔導士(ウィザード)の子を娘に持ったシルキーお嬢様はカーン族の次の族長となるでしょう。それはアルマ様、ひいてはシャール(ぼっ)ちゃんの望むことでもあります」

「すべてはアデニウムさんの手のひらの上ってことですか……」

 

 俺は窓の外に汚れた温水を捨てると、アンバーが差し出したタオルで()れた身体を拭いた。

 

「上級天使に並ぶ高度な医療スキルを持つハルト様がこの街にいらっしゃったこと、それだけが私の想定外でした。それでは、私はこの辺りで失礼させて頂きます」

 

 アデニウムはぺこりと頭を下げると、シルキーを抱えて部屋の外へと出ていった。

 その背中を見送った俺は服を着るのも諦めて全裸のまま寝台の毛布に潜り込むと、先に毛布に入っていたアンバーをぎゅっと抱き締めた。

 

「俺はもう疲れたよ、アンバー……」

「よく頑張ったのう。ほれ、よしよししてやろう」

 

 俺はアンバーに頭を()でて貰いながら、深い眠りに落ちていった。

 

 

 翌朝、俺とアンバーはミュールに叩き起こされて目を覚ますことになった。

 

「ふあぁ、よく寝たのう」

「ミュール、もうちょっとだけ寝かせてくれない?」

 

 億劫(おっくう)な気持ちを抱えたまま渋々(しぶしぶ)毛布から起き上がった俺は、先に朝食を済ませてお口から香辛料の香りを漂わせているミュールに二度寝をさせて貰うように頼んだ。

 

「寝るのは飛行機の中でもできるにゃ!」

「それはそうだけどさ、疲れてるんだよ……」

 

 ユニエルの手紙にはできる限り急げって感じのことが書いてあったけどさ。

 1日くらい遅れたって大丈夫じゃないかな。

 ムーンサイドは通常ルートで行けば1ヵ月は掛かる道のりなわけだし。

 

「ほら、ハルトも早く服を着るにゃ! 朝ご飯を食べて出発するのにゃ!」

「分かった、分かったから引っ張らないでくれ……」

 

 俺はアンバーに手伝って貰っていつもの探索者服を着ると、ミュールに手を引かれながら広い食堂まで連れて行かれた。

 

 そこでは使用人達に混じってアルマとシャールが食事を取っていた。

 彼らは俺の姿を見つけると、とても嬉しそうな顔をして声を掛けてきた。

 

「ようやく起きたか、我が息子よ!」

「兄弟、随分(ずいぶん)とお疲れのようだな。シルキーの相手は大変だったかい?」

「それはもう、大変でしたよ……。いただきます」

 

 俺達は席に着くと、シュバっと走ってきたおばちゃんの料理人が目の前のテーブルに置いた豆のスープを木のスプーンですくって口に運んだ。

 ううむ、スパイシーな香辛料が効いてて美味しい。

 

 少しずつ食欲が盛り返してきた俺は、テーブルの中央の大皿に盛られているふかした芋を手に取ってもそもそと食べ始めた。

 

「息子よ、旅立つ前に聞いておきたいことがある。先ほどワーキャットの娘に見せて貰ったが、あの飛行機という乗り物は我々でも扱えるものなのか?」

 

 ある程度食事が進んだところで、アルマが俺にそう尋ねてきた。

 

「フライスなら砂漠の環境に合った飛行機を作ることはできると思いますけど……現状だと燃料にCランク以上の魔石が必要不可欠なので、砂漠の民が運用するのは大変じゃないですか?」

 

 テバールのダンジョンは二層までしかないDランク迷宮って話だ。

 それに外貨を稼ぐ手段に(とぼ)しい砂漠の民では、飛行機の購入費と運用費を(まかな)うことは難しいだろう。

 

「一応、この街のダンジョンでもギリギリCランクの魔石は手に入る。それに飛行機を使うことで他の街との交流が容易に行えるようになれば、兄弟の言っていた血の病を克服することもできるだろう。なあ、どうにか頼めないか?」

 

 なるほど、確かにそれは考えていなかったな。

 成り行きとはいえこのテバールが第三の故郷になったわけだし、少しくらいは娘の将来の為に残していくべきか。

 

「分かった、アクアマリンのフライス航空に紹介状を書こう。それをバードマン郵便を使って送れば、後はフライスが何とかしてくれるだろう」

「頼んだ側が言うことではないが、本当にいいのか?」

 

 簡単に引き受けて貰えると思っていなかったのか、アルマは驚いているようだ。

 いやあ、俺はそこまで冷血な人間じゃないですよ。

 

「血の繋がった娘の為です、それくらいはさせてください。アンバー、手紙頂戴(ちょうだい)

「ちょっと待っておれ。……ほれ、これじゃ」

「ありがと」

 

 俺はアンバーに貰った紙に、簡単にこれまでの経緯を書き記した。

 必要になる資金は倉庫に残したレアメタルを売れば十分に確保できるだろう。

 いついかなる時も持つべきものは金とコネだな。

 

「……よし、これでいいだろう。シャール、受け取ってくれ」

 

 書き上がる頃には全員の食事が済んでいたので、俺はそのまま席から立ち上がってシャールに手紙を手渡した。

 ここから先はバードマン郵便のバードマン達と交友がある彼が適任だろう。

 

「ありがとう、兄弟。何から何まで済まないな」

「砂漠の民の宝を妻にしたんだ、これくらい安いものさ。……そうそう、これも渡しておこう」

 

 俺はポーチから取り出した化粧箱を開けると、中に入っていたいくつかのミスリルの首飾りのうちハムマンのデザインをしたものを手に取ってシャールに差し出した。

 

「……これは?」

 

 シャールは俺から受け取ったミスリルの首飾りを持ち上げて首を傾げた。

 

「シルキーへのちょっとしたプレゼントってところかな。アデニウムさんに見せたら分かると思うよ」

「そうか、後で見せてみよう」

 

 レクナムと一緒に試作したはいいものの、現状では貴重過ぎてエクレアとアイリス以外誰にもプレゼントできなかったからお蔵入りしていたんだよね。

 

 どうせなら俺達と同じこん棒デザインのものを渡したかったんだけど、流石に作っている暇がないので今回はこれで勘弁して貰おう。

 

 まあ、正直こっちの方がウケはいいと思う。

 ハムマンの可愛さは世界共通だ。

 

 

 朝食を終えた俺達はシャール達と一緒に街の外に出ると、俺の土属性スキルを駆使して門の近くに広い滑走路を作った。

 これからアクアマリンと飛行機でやり取りをするなら必ず必要になるだろう。

 

 そのまま飛行機に乗り込んだ俺達は、物珍しそうに飛行機を見ている砂漠の民に見送られながら西へ向かって旅立ったのだった。

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