マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第156話 廃墟の街ストーレ

 相も変わらず昼の砂漠は日差しが強い。

 俺は土属性スキルを駆使して20mほどの広さがある大きな石造りの東屋(あずまや)を作った。

 

 柱や天井にハムマンのシルエットデザインを組み込んだ自信作だ。

 この日陰の下ならミュールも飛行機の整備がやりやすいだろう。

 

 ついでにハムマンデザインのテーブルや椅子も用意して、テーブルの上にガラスで作った真空魔法瓶製の大きな水差しを置いて、その中にたっぷりの氷と水と麦茶のパックを入れる。

 

 ガラスで人数分のコップも用意したら、休憩所の完成だ。

 

「くぅー、キンキンに冷えた麦茶は美味いのう!」

 

 アンバーはちょこんと椅子に座って俺の用意した麦茶を一気飲みした。

 ポーチから読みかけの本も取り出して、完璧な休憩の構えである。

 

「忍法早着替えの術!」

 

 ボンと白い煙を立てて忍者服から汚れたツナギに変身したミュールは飛行機の左翼に取り付いて機体のメンテナンスを始めた。

 

 これどこから服を取り出しているのかいつも気になっているんだけど、ミュールは絶対に教えてくれないんだよな。

 まあ、手品の種みたいなものだから仕方ないか。

 

「さてと、俺は昼飯の支度でも始めるかな」

 

 出立する時に使用人のおばちゃんから甘くないサツマイモみたいなルメー芋を大袋で貰ってあるので、何かこれを使ったものを作りたいと思っている。

 そうだな、せっかくだから石焼き芋に仕立ててみるか。

 

 俺は空中に浮かべた水に大袋のルメー芋を全部放り込んで一気に洗った。

 次に石の流体で大きなボウルを作って中に玉砂利をザラザラと入れる。

 ルメー芋の水を切って混ぜ込んだら、空気穴を残して石のボウルを球体にした。

 

 土生成スキルで作った炭素の塊を炭代わりに燃やして、その上でくるくる石の球体を回しておけば遠赤外線効果でほっくり焼き上がるだろう。

 

「後は何か(つま)めるものが欲しいな……」

 

 俺はポーチから手帳を取り出すと、今ある食材の在庫を確認した。

 足りない栄養素を考えるとビタミンとタンパク質が必要か。

 トマトとチーズ、それとハムで簡単なカプレーゼでも作るとしよう。

 

「なあなあ、何やってるんだ?」

「ん?」

 

 ポーチをガサゴソ(あさ)っていた俺が聞き覚えのない声に振り向くと、そこには擦り切れた布の服を着た褐色肌の少年が立っていた。

 少年の右腕には入れ墨のような刻印が入っていて、ぼんやりと光を放っている。

 

「わー、何だこれ。変なのー」

「おい見ろよ、ここの丸いの動くぜ!」

「何にゃコイツら! どこから現れたのにゃ!?」

 

 飛行機の周りにも身体の一部に刻印の入った子供が何人も(たか)っていた。

 彼らは興味津々な様子でべたべたとミュールの飛行機を触っている。

 

「どうなっているんだ? ここは廃墟のはずだろう」

「それがそうではないのだ、旅人よ」

 

 アンバーの向かいに座っていた老婆が勝手に麦茶を飲みながらこちらを見ていた。

 その老婆の額には翼のような刻印が刻まれていて、ぼんやりと光を放っている。

 

「こやつらは贖罪(しょくざい)の民じゃな。罪を犯し街を追放された者の末裔(まつえい)、古いしきたりに従いダンジョンの行く末を見守る者達じゃ」

 

 パタリと本を閉じたアンバーが解説すると、老婆はこくりと頷いた。

 

「よく知っているな。そうとも、我らは贖罪(しょくざい)の民。この刻印によって自らの魂をダンジョンに結び、その生を繋いでいる」

「まるでダンジョンマスターみたいですね」

「我らはただ生きる為の糧を得ているに過ぎない。我らはダンジョンの死とともに先祖の罪を(そそ)ぎ、新たな氏族を立ち上げる権利を得るのだ」

 

 ダンジョンから離れられないのは同じみたいだが、その本質は真逆ってことか。

 アザゼルはこの刻印を参考にしてダンジョンマスターシステムを作ったのかもな。

 

「オマエらあっちに行けにゃ! これじゃあ仕事ができないにゃー!」

 

 子供達に邪魔されてミュールはお困りのようである。

 

「お婆さん、どうにかなりませんか?」

「大人達はみな地下で仕事をしている。足腰の弱い私にこれ以上は難しい」

 

 よく見ると老婆は手に杖を持っていた。

 嫌なら自分達で何とかしろってことですか。

 まあ、それは俺の得意分野だ。

 

「あまり火に近付くんじゃない。火傷(やけど)するぞ」

 

 俺は石の球体に手を近付けていた少年の腕を取って東屋(あずまや)の外に歩き出した。

 

「わ、引っ張らないでくれよ!」

「ついてきな、面白いものを見せてやるよ」

「面白いもの?」

「ほら、アレだ」

 

 俺は指差した先に土属性スキルで巨大なハムマンの形をした石の滑り台を作った。

 砂漠に合わせてちょっとスフィンクスっぽい見た目にする。

 

「な、な、な……」

 

 驚いて言葉も出ないようなので、俺は少年を放置して次々に遊具を作り始めた。

 ステンレス製の鉄棒と登り棒、シーソーにジャングルジム、そしてブランコ。

 近頃は公園で見なくなったグルグル回る危ない遊具も用意する。

 

 この世界の人間はステータス補正で地球人よりもよっぽど頑丈だから、少し危険なくらいで丁度いい。

 よし、これで彼らは一生遊び場に困ることはないだろう。

 

「すっげー! お前ら、こっちの方が面白そうだぜ!」

「ほんとだー!」

「ほら、早く行くぞ!」

 

 飛行機に群がっていた子供達はあっという間に新たなオモチャに夢中になった。

 砂漠の民は大抵、熱耐性スキルを持っているから炎天下でもお構いなしだ。

 

 おっと、遊具作りにかまけて焼き芋を作っていたのをすっかり忘れていた。

 慌てて放置していた石の球体のところに戻ると、火から下ろして穴を開けた。

 

 俺は石の触手でちょいちょいと玉砂利を探って取り出したルメー芋を、テーブルの上に作った石の大皿の上に移動させた。

 

「どれ、味見してみるか」

 

 石の触手でぱかりと二つに割ると、ホカホカとした湯気とともに焼けた芋の甘い香りがふんわりと立ち昇った。

 

 俺は火傷(やけど)しないように注意しながら焼き芋に(かじ)りついた。

 おお、甘さは控えめだがホクホクしてて美味い。

 

「はふっ、はふっ、美味い焼き芋にゃー!」

 

 匂いに釣られてシュバッと飛んできたミュールが勢いよく焼きルメー芋にがっついている。

 ちなみにだが、彼女は化身すると猫舌になるらしい。

 

「むう、これはバターが欲しくなるのう。ハルト、出してはくれぬか」

「いいよ、色々試してみよう」

 

 俺はポーチをガサゴソして取り出したバターにチーズ、それと新鮮な果物を片っ端からテーブルの上に広げた。

 その理由は当然、一つしかない。

 

「いいなー、オレも食べていい?」

 

 少年がテーブルの上のリンゴを手に取って俺に尋ねてくる。

 

「大人達には内緒にしてくれるか?」

「分かった、絶対内緒にする!」

 

 子供の口約束が守られるなんてあり得ないのだが、これは方便だから気にしない。

 何か問題があるならお守り役の老婆が止めるだろうしな。

 

「美味い……こいつは犯罪的だ……!」

 

 少年が生まれて初めて食べるリンゴの味に犯罪的な美味さを感じている姿をニコニコしながら眺めていると、遊具に夢中になっていた子供達が気付いてこちらに走り寄ってきた。

 

「あっ、ズルい! 僕にも頂戴(ちょうだい)!」

「お腹空いたー!」

「まあまあ、慌てない慌てない。沢山あるから大丈夫だよ」

 

 俺は子供達に焼き芋を配り、果物を切り分けて与え、冷たい麦茶を飲ませた。

 甲斐甲斐しく世話を焼いていたせいでほとんど焼き芋は食べられなかったが、精神的には満たされたのでよしとしよう。

 

 こうして俺達は騒がしくも楽しい昼食を取った後、手を振る彼らに見送られながら廃墟の街ストーレを飛び立ったのだった。

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