マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第163話 ユニエルの依頼

 ちょっとばかり長い寄り道してしまった俺達は、急ぎ足でムーンサイドの探索者ギルドまでやってきた。

 のんびりとパスカルの愚痴を聞きすぎたな、もうすぐ日が暮れてしまうよ。

 

「おー、すんごいでっかいにゃー」

 

 ミュールはミノーバックスで貰った「みるだむ ムーンサイド」を片手にでっかい教会みたいな役所を見上げてひとりごちた。

 

 なんでもここは月光教の聖堂だった建物を改装して使っているのだという。

 設計したのはお馴染み天才建築家のベリアルらしいので、流石に取り壊すわけにはいかなかったのだろう。

 

 やはりと言っていいか、探索者ギルドの中は人でごった返していた。

 

 古都ムーンサイドは禁足地である聖都ブルームーンのダンジョンの圏内にあるので、ここにいるのは探索者ではなくムーンサイドの市民だろう。

 彼らは役所の受付をしている職員の天使に口々にクレームを申し立てている。

 

「サクレアのせいでウチの宿はパンクしちまったよ! あんたらはそれでも泊めろって言うんかい!?」

「街がゴミで(あふ)れかえっているんだ! 何とかしてくれよ!」

「外が騒がしくてウチのポピーちゃんの食が細くなっちゃったわ! このまま餓死しちゃったらどう責任を取ってくれるの!」

 

 俺達はそのプロ市民の群衆を入口から遠巻きに眺めていた。

 ペットのハムマンを抱えているワーウルフのおばちゃん、流石にそれはクレーマーにも程があるぞ。

 

「少しは自分で考えて行動したらいいのに……」

「民度最悪にゃ」

「ここは駄目そうじゃ、銀行の方へゆくぞ」

 

 豪華な装飾の階段を(のぼ)って2階に行くと、こちらはそれなりに空いていた。

 時間帯的に銀行業務が終わり際だということもあるだろう。

 

 俺達は閉まった窓口まで行って奥で仕事をしている職員の天使に声を掛けた。

 

「忙しいところすまぬが、下が使い物にならんからこちらにきた。アクアマリンで招集を受けたのじゃが、担当者はおるかのう」

 

 アンバーがギルド本部の紋章が押された召集令状を掲げると、それを見た職員の天使は慌てて椅子から立ち上がった。

 

「それはユニエル様の……! 今すぐご案内致します!」

 

 俺達は仕事を放り出してやってきた下っ端天使に銀行の応接室まで案内された。

 

「どうして一目で分かったんだろうね」

 

 俺はジャイアントサイズのソファに腰掛けて首を傾げた。

 

「わしには読めぬが、紋章の一部に書かれたムーンライト語で記入者が分かるようになっておるらしいぞ」

「へー、ムーンライト語か……」

 

 ムーンライト語は天使達の使う暗号言語だ。

 これは一見するとただの細かい装飾にしか見えないんだよな。

 ……アンバーの持っている召集令状の紋章を見ていたら段々目が痛くなってきた。

 

 俺が魔力を込めた指先で眉間を揉んで眼精疲労を癒していると、ガチャリと奥の扉が開いて一人の天使が入室してきた。

 

「皆様、お早い到着で驚きましたよ……」

 

 やってきたのは長身でスレンダー巨乳の最上級天使ユニエルだ。

 聖衣のような白衣を身に(まと)った美しいアルビノの天使は、ゆっくりと歩いて向かいにある普通サイズのソファに腰掛けた。

 

「ユニエルよ、下の様子はなんじゃ。この街の行政は一体どうなっておる」

「それが、困ったことになりまして……」

 

 ユニエルの話によると、20日前にこの街の行政のトップ――聖都のダンジョンでダンジョンマスターをしていた上級天使――が服毒自殺を図ったのだという。

 

 古都ムーンサイドの探索者ギルドでは昔からこのような不審死が相次(あいつ)いでいて、ダンジョンマスターの代替わりがこの500年の間に8回も行われていた。

 

 俺としてはヤバい街にきてしまった……という気持ちが大きい。

 これ絶対明日のライブコンサートに月光教の狂信者が現れてテロするやつじゃん。

 フラグがビンビンに立ちすぎているぞ。

 

「現在、聖都の管理をしている下級天使を動員して対応を進めているところです。この街の混乱も明日の朝までには片付くでしょう……」

「ふむ、ならば次はわしらを呼んだ理由を説明して貰おうか」

「この件の対応も含めて、私が次のダンジョンマスターに()えられることが決まりました。業腹(ぎょうふく)ですが、致し方ありません……」

 

 悲しそうに目を伏せたユニエルは少しの沈黙の後、本題に移った。

 

「聖都のダンジョン、我々はこのダンジョンをヘルズゲートと呼んでいます。ランクはA、五層の環境は溶岩渦巻く灼熱地獄です……」

 

 おおっと、こいつはイーラの焔斑(ほむら)火山を彷彿(ほうふつ)とさせる面倒そうな異界だ。

 

「ユニエルさん、これまではどうやってダンジョンを踏破していたんですか?」

 

 8回も代替わりしているならそれなりにノウハウの積み重ねがあるはずだ。

 

「これまではイクリプスに住むジャイアントの上級探索者に踏破の補助を依頼していたのですが、銀行の金庫に厳重に保管していたはずの耐熱装備がすべて処分されていたということがつい4日前に発覚いたしまして……」

 

 おわー、最悪の展開だ。

 これは(うつ)になった管理職が仕事をぐちゃぐちゃにして飛んじゃった感じか。

 

「皆様は耐熱装備の『不死鳥の羽衣』を所有しています。加えて、アンバー様にはダンジョンコアを守るキャッスルゴーレムを打ち砕く膂力(りょりょく)があります。これ以上の適任は他にありません……」

「よう分かった。確かにこれはわしらにしかできぬことじゃろう」

 

 アンバーが頷くと、ユニエルはその赤い瞳で俺の目をじっと見つめた。

 

「ダンジョンマスター不在のAランクダンジョンの踏破ですから、できるだけ急いだ方がいいでしょう。皆様がサクレアのライブに参加することはできなくなりますが、それでも私を手伝って頂けますか……?」

「もちろんです。断るつもりなら最初からこの街にやってきたりはしませんよ」

「ありがとうございます、ハルト様……」

 

 ユニエルは嬉しそうに微笑んで、両手を胸の前で組んだ。

 一瞬だけドたぷんって豊満なお胸が動いたのを俺は見逃さなかった。

 いててっ、アンバーにお尻の肉をつねられた。

 

「朝早くに行けばサクレアのライブに間に合うかにゃ?」

「四層まではショートカットがあります。トラブルさえなければ、夜までには街に戻れるでしょう……」

「やったにゃ!」

 

 そういうわけで、俺達はユニエルの依頼を引き受けることになったのだった。

 

 

 これから徹夜で働くというユニエルから異界の詳細な情報が(まと)められた資料を受け取った俺達は、下っ端天使に案内された広い食堂で早めの夕食を頂いた。

 

 見た目は質素な感じだが、新鮮な地場の野菜をふんだんに使った美味しいフレンチな料理でミュールも大満足の夕食になった。

 

 それから俺達はお風呂に行ったのだが、そこはなんと混浴の大浴場だった。

 ただ……入っている天使はみんなお股に大きなモノをぶら下げていて、ふたなり性癖のない俺にはちょっと厳しめな環境だった。

 

 そこそこ長湯したが残念ながら俺好みの巨乳ちゃんはこなかったので、俺は明日以降に期待を託すことにした。

 

 せっかくだからユニエルと一緒に……いや、あの人に襲われたら困るか。

 俺はネコじゃないので、彼女と浴場でばったり出会わないことを祈った。

 

 お風呂から出た俺達は(あて)がわれたギルドの仮眠室で一通り資料に目を通した後、朝に備えて就寝したのだった。

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