マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第164話 聖都ブルームーン

 古都ムーンサイドのすぐ北には小高い山があり、その山の斜面を縦に切り落としたかのような切り立った崖がある。

 

 聖都ブルームーンはその崖の上にある巨大なクレーターのくぼみにすっぽりと収まるようにして存在している。

 恐らく、このクレーターは遠い昔に隕石が落ちてきた時にできたものだろう。

 

 焚書(ふんしょ)を生き残った月光教の古い教典には月光神の御力によって聖地に()まわしきダンジョンを封じたと記されているが、これは半分だけ本当のことだ。

 

 月光歴1515年に新たに教皇となった天使のマモンが大聖堂の地下深くに眠るダンジョンの封印を解いたことでその事実は発覚した。

 

 ダンジョンゲートに蓋をすると大変なことになるのは過去の歴史が証明しているが、巨大なミスリルの隕石を使えばなんか大丈夫だったらしい。

 

 さて、封印が解かれたダンジョンでマモンが一体何をしたか。

 それをこれから語るとしよう。

 

 

 マモンは非常に欲深い男だった。

 それは彼が教皇に就任して真っ先に布告したダンジョン討伐令のことを考えれば、(おの)ずと分かることだろう。

 

 マモンはとても金の匂いに敏感だった。

 そして人の心の闇をくすぐることに長けていた。

 彼は世界中の国々に争いの種を撒き、戦乱を助長した。

 

 当時の宝珠は軍需物資に等しく、マモンが支配下の聖人を使って世界中から()き集めた宝珠はマジックバッグに変えられて国家に高値で売り払われた。

 

 ダンジョン討伐令によって自国の抱えていた高ランクダンジョンが失われた以上、他国に出し抜かれない為にはどれだけ高くとも買うしかなかった。

 彼はそうやって国家間のバランスを取り、戦乱を長引かせた。

 

 血が流れるほどに癒しを求めて人々は月光教に依存し、その布施と信仰はマモンの権力を際限なく強大化させた。

 

 マモンが教皇となってから400年の間に、中央大陸のほとんどは彼の手中に収められていた。

 例外は鎖国政策を取っていたネフライト王国くらいだった。

 

 探索者ギルドの初代ギルドマスター・アザゼルはこの状況を良しとせず、カウンターとしてダンジョンマスターシステム、そしてサブマスターシステムを作った。

 高ランク宝珠の供給を増やすことでマモンの権力の源を削ぎ落そうとしたのだ。

 

 アザゼルはマモンや各国の権力者が隠匿したダンジョンでサブマスターを使った宝珠の養殖を行うだろうと想定していた。

 

 それはティアラキングダムのジャスティンで行われたことで証明されたが……。

 しかし、マモンの欲深さはアザゼルの予想を遥かに超えていた。

 

 マモンは聖都ブルームーンの地下深くで、無理矢理ダンジョンマスターにした無垢な天使に禁忌の子を産ませていた。

 

 子は手足を削ぎ落し、心を壊し、狭い牢獄で飼育し……成人したらサブマスターにしてまた子を産ませる。

 

 その悪魔のような所業はダンジョンマスターシステムが開発されてからアザゼルが聖都を滅ぼすまで……180年もの長きに渡って続いていた。

 これが公のものになった時、人々が月光教を禁忌とするには十分な動機となった。

 

 これまで俺が汚職の証拠と(にご)していた理由が分かっただろう。

 それこそが、この世界の歴史の教科書に記された事実だった。

 

 

 夜明け前にムーンサイド探索者ギルドを出立した俺達はバイクに乗って大通りを北上し、一路(いちろ)聖都ブルームーンに向かっていた。

 ユニエルとの待ち合わせは午前6時、聖なる断崖の下ですることになっている。

 

「あれがムーンサイド大闘技場か。おっきいのう」

 

 後ろに乗っているアンバーは俺の背中にくっつきながら、かつては民衆の娯楽として剣闘士達が戦っていた巨大なコロッセオのボロい壁を眺めた。

 今回のサクレアのライブ会場はあそこを使うらしい。

 

「ラブオデッサのライブ会場とどっちが大きいかな」

「どっこいどっこいじゃの」

 

 アンバーの目算によるとどっこいどっこいらしかった。

 

 それからもう少し走って街の外まで出た俺達は聖都に続く一本の道路を走り、待ち合わせ場所である聖なる断崖の真下まで到着した。

 

 崖下は観光名所の一つらしく花畑に囲まれた広場になっており、近場には大きな駐車場もあった。

 

 バイクから降りて広場までやってきた俺達が上を見上げると、断崖に刻まれた大きな天使の彫刻が朝日に照らされて輝いていた。

 

「ユニエル、まだかにゃー」

「暇つぶしに写真でも撮るか」

 

 俺はポーチから一眼レフカメラを取り出した。

 結構前に買ったんだが、あんまり使う機会がなかったんだよな。

 勿体(もったい)ないので今回の旅ではいっぱい写真を撮ることにしていた。

 

「アンバー、いつもみたいに笑顔で……そうそう。あくあ~まりんっ」

「あちしも撮って欲しいにゃ!」

「あーもういいところだったのに邪魔すんな。……あくあ~まりんっ」

 

 俺がパシャパシャと二人の写真を撮っていると、背後からばさりと羽音がした。

 

「皆様、お待たせしました……」

 

 振り返った俺は日の出の逆光を背にしたユニエルをパシャリと激写した。

 うん、ベストショットな予感。

 満足した俺はポーチにカメラを仕舞った。

 

「おはようございます、ユニエルさん。体調は大丈夫そうですか?」

「ええ、これくらい何てことありませんよ……」

 

 俺はじっとユニエルの顔を見上げたが、徹夜明けというのにクマはまったくできていないようだった。

 彼女は高レベルでステータスが高いし医療スキルもあるから無茶が利くのだろう。

 

「それで、どうやって聖都まで行くのじゃ?」

「まずは聖都を(おお)う結界を通れるようにしなければなりません。皆様、どうぞこちらへ……」

 

 俺達がユニエルについていくと、彼女は断崖の下のある一点に刻まれた門のような彫刻に手を触れた。

 すると、スっと音を立てて門の彫刻の中に隠し扉が口を開いた。

 

 そこはジャイアントサイズの四角いエレベーターになっていて、天井に付いた照明が中を照らしていた。

 

 俺達が中に入ると、ユニエルはエレベーター内に設置された端末に触れるように(うなが)した。

 

「こちらにギルドカードを触れてください……」

 

 俺達は懐から取り出したギルドカードで端末をタッチした。

 それを確認したユニエルが指を振ると扉が閉まってエレベーターは浮上を始めた。

 

 チーンと音はしなかったがしばらく上昇を続けたエレベーターが停止すると、扉がスッと開いた。

 その扉の向こう側は、まさしく聖なる都の真っ只中(ただなか)だった。

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