マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第六章 海賊王と竜の谷
第170話 漂流生活3000日目


 あの伝説の冒険小説「わしとこん棒」が帰ってきた!

 

 わしはハーフリングのアンバー、Bランク探索者じゃ。

 アクアマリン迷宮の踏破から1年、わしは少しだけ変化した日常を過ごしていた。

 探索者生活を送りながら、ちんまい弟子を相手にこん棒普及活動に努める日々。

 恋人を連れて帰郷の旅に出る準備を進めていたある日のこと、探索者ギルドからの召集令状がわしらに届いた。

 それはわしを多くの発見と驚きに満ちた長い冒険に誘う片道切符だった。

 砂漠を越え、山を越え、向かうは聖なる都の闇の底……。

 

 これは誰も知らない天使の過去を辿る物語。

 

 

 俺は次元潜航船ハムカー号の自室で、アンバーの書いた自伝風冒険小説「わしとこん棒R(リターンズ)」の原稿を読んでいた。

 

「どうじゃ? 久々に書いたから腕が(なま)っておらぬか少し心配しておるのじゃが……」

「そうだな、これは……」

「ゴクリ……」

 

 固唾(かたず)を飲んで評価を待つアンバーに、俺はまあまあな感じのグッドサインをした。

 

「まあ、悪くないんじゃないかな」

「微妙な反応じゃのう」

「以前よりもちょっぴり大人向けの内容だし、仕方ないよ」

 

 ユニエルのやらかしをごまかす為の新作とはいえ、アザゼルの過去に切り込むとなるとどうしてもそうなっちゃうからな。

 かと言ってせっかく手に入れたネタを使わないのはそれはそれで勿体(もったい)ないし。

 

 今回のラスボスはキャッスルゴーレムに決まっているけど、戦闘シーンがいまいちだからもうひと(ひね)り欲しいところだ。

 

「原稿用紙にも限りはあるしのう、余裕ができてから練り直すとするか」

 

 アンバーは没原稿が散らばった机の上を片付けると、壁際の本棚から本を取り出して読み始めた。

 船内で特にやる仕事のない彼女は、朝から晩まで本を読む生活を送っているのだ。

 

「じゃあ、俺は果樹の世話でもしてくるかな」

 

 俺は6畳ほどの狭い自室を出ると、リビングを抜けて細い通路を歩いた。

 ガラス窓の向こう側には相変わらず真珠色の星々が(きら)めく宇宙空間が広がっている。 

 

 無重力空間を普通に歩いているように見えるが、これはユニエルが新たに習得した重力操作スキルで船内の重力を1Gに保っているからこそできることだ。

 そうでなければ色々とお掃除が面倒なことになっていただろう。

 

 俺も練習したけど器用さがまるで足りなくて、ミュールの使う軽業の下位互換みたいなことしかできなかった。

 どんな時も足を引っ張る器用さEよ……。

 

「あ、ミュール」

 

 通路の奥、機関室の床でミュールがごろりと横になっていた。

 まーたこいつは変なところで昼寝をしているようだ。

 俺は彼女をスルーして通路横の扉を開き、果樹の栽培室までやってきた。

 

 ミスリルプレートの青白い光で照らされた横長の狭い空間には、プランターに植えられた2mほどの果樹が青々と()い茂っている。

 

 リンゴとぶどう、それにみかん。

 ポーチに(わず)かに残っていたそれらの種にアンバーの蔵書で勉強した栽培スキルを行使して大事に大事に育てた結果だ。

 

「ミュールめ、またつまみ食いしたな」

 

 俺は床に散らばった皮や食べ残しといった生ゴミを拾い上げると、スキルで生成した石の箱に閉じ込めた。

 こういうゴミは次元の狭間(はざま)に流せば後はダンジョンの幼体が処理してくれる。

 

 慣れた手つきで今日の分の果物を収穫したら、土に栄養を追加して栽培スキルで花を咲かせる。

 手作業で受粉させてちょいと成長させたら、明日の準備は完了だ。

 

「ふいー、これでいいだろう」

 

 一仕事終えた俺は果物を入れた(かご)を抱えてリビングの隣のキッチンまで移動した。

 あと(わず)かしか残されていないエナジーバーが積まれた棚に(かご)を置いてキッチンを見回す。

 

 キッチンには上部に氷の入った銅箱がくっついた自作の冷蔵庫が置かれている。

 こんなことになるのなら、魔道具の冷蔵庫くらいポーチに入れておけばよかった。

 

 俺は冷蔵庫を開けると、中からミルクの入った瓶とチーズを取り出して調理台に置いた。

 これまたアンバーの蔵書の料理本を開いた俺は、なんとか新しい味を作れないか試行錯誤を始めた。

 

 

 時刻は夜、俺はリビングのテーブルに集まったみんなにお手製の料理を提供する。

 今日の夕飯はシンプルな焼きリンゴとぶどうのチーズケーキだ。

 チーズケーキは砕いたエナジーバーを底に敷いてタルト風にしてみた。

 

「うむ、悪くないのう。よくできておる」

「そう? ならよかった」

 

 俺は小さいお口で食事を取るアンバーをニコニコしながら眺めた。

 

「あちしはそろそろお肉が食べたいにゃ」

「人肉しかないけどいいかな?」

「むむむ、我慢するにゃ……」

 

 俺とユニエルは修行中のアザゼルみたいに(かすみ)を食う練習を始めているってのに、こいつはいつまでも変わらんな。

 

「ユニエル、世界樹まで後どれくらい掛かりそう?」

「昼に計算してみましたが、到着まで5日といったところでしょう……」

「おおよそ10年か……長かったな」

 

 俺達がたった1ヵ月次元の狭間(はざま)を漂流している間に、外の世界では3000日もの月日が流れていた。

 時間の流れはざっと100倍、帰還者(リターナー)が浦島太郎になるのも頷けるというものだ。

 

「あやつらは元気にしておるかのう」

「モモ様でしたら、昨夜Cランクに昇格したという情報が流れていましたよ……」

 

 ユニエルは探索者ギルドの職員用端末で次元間通信を傍受(ぼうじゅ)している。

 発信は管理ダンジョンの範囲内でしかできないのでこちらからの連絡は不可能だが、この異空間では唯一外部から情報を取得できる手段だ。

 

「それは良い報せじゃ! のう、お主!」

「そうだな。みんながどれだけ大きくなったか、会うのが今から楽しみだ」

 

 モモちゃんはきっとサクラさん似の美人さんに成長しているに違いない。

 そしてギリアムくんは4mのジャイアントサイズになっているだろうな……。

 

「ふー、お腹いっぱいにゃ」

 他の三人の3倍の量を平らげたミュールが膨れたお腹をポンポンと叩いた。

 

「ハルトも早く食べ終われにゃ。またあちしといっぱい気持ちイイことして寝るのにゃ〜」

「ちょっと気を許したら味を()めおって。ハルトはわしのものじゃぞ」

「発情期が終わるまでは貸して貰う約束だったにゃ。その約束は嘘だったのかにゃ?」

「ぐぬぬ……」

 

 ミュールに言質(げんち)を取られてぐぬぬ顔するアンバーも可愛いなぁ。

 

「ふふふ、せっかくですから今日は四人でしましょうか……」

 

 密室、男女四人、何も起こらないはずがなく……。

 俺はハーレムタグにたがわぬ(ただ)れた性活を送っていた。

 

「きょ、今日は遠慮しておくにゃ!」

 

 慌てて席を立ったミュールはぴゅーっとシャワールームに逃げていった。

 

「残念です。彼女はイイ声で鳴くというのに……」

 

 ミュールはユニエルの男人格に一度()われている。

 それは一昨日の晩、ユニエルとのお楽しみの最中に乱入された時に起こった出来事だ。

 

 脱ヴァージンして調子に乗っていたミュールにとってはいろんな意味で痛い思い出になっただろう。

 

「俺以外の女に手を出すのは頂けないな、エル」

 

 俺は手を伸ばして、ユニエルの豊満なおっぱいを揉みしだいた。

 

「んっ、いけません……アンバー様が見ていますよ……」

 

 この俺様の前じゃユニもエルも等しくメスに変わっちまう。

 いやー、房中術スキルさまさまだな。

 

「お主、少し調子に乗っておるのではないか?」

 

 アンバーは忠告するようにジトーっとした目で俺を見たが、ここ十数日のハーレム生活で調子に乗りまくっている俺にはそれこそ馬の耳に念仏だった。

 

「可愛いロリ嫁に巨乳の愛人、それとペットの猫娘。俺は今がまさに絶頂期と言っても過言ではないだろう……!」

「……これはお仕置きが必要じゃの」

 

 席を立ちあがったアンバーの脇に、俺はひょいと抱えられた。

 

「あっ、待って、まだ食器の片付けがっ」

 

 手足をバタつかせたが、筋力Eではどうにもならない。

 

「アンバー様、私が片付けておきましょう……」

「うむ、頼んだぞ」

 

 そのまま自室に運ばれた俺は救いを求めてリビングに手を伸ばしたが、ユニエルが指を振ると開いた扉はバタリと閉じた。

 

「そんなぁ、俺の今夜のお楽しみがー!」

「お楽しみはお預けじゃ!」

 

 俺はアンバーにお仕置きされた。

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