マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第174話 罪と罰

 漂流生活11日目 

 

 前回のお楽しみはアクアマリンを出る前(それも四層の遠征前)だったので、アンバーとするのは実に半月ぶりのことである。

 

 日々のスキンシップで愛情は補給していたものの、やはりお楽しみがあるのとないのとでは違うもので……。

 翌日の目覚めはとてもスッキリとしたものだった。

 

 これは仕事にも気合が入るというものだ。

 俺はさくっとエナジーバーで朝食を済ませると、いつものように栽培室へ向かった。

 

 ミスリルプレートの青白い照明に照らされた細長い空間には、三つのプランターが置かれてそれぞれ2mほどの果樹が植えられている。

 

 木の健康状態を一通り確かめた俺は、リンゴの(つぼみ)に触れた指先に魔力を込めて強く念じた。

 すると時間が加速するように(つぼみ)は開き、白い花が咲いた。

 

 栽培スキルは通常、種の発芽や植物の成長時期をずらす為に使われることが多く、農作物の促成栽培に利用されることは少ない。

 

 植物の成長に使う魔力の消費はかなり重たく、一から成木まで育てるのには相当な魔力を必要とするからだ。

 

 だからこの世界の農家は栽培スキルにはほとんど頼らない(どっちかと言うと雑草取りや害虫駆除でスキルを使うし、促成栽培は薬剤師の調合した成長促進剤ですべて解決する)らしい。

 

 ぶっちゃけた話、俺の場合は同じ魔力をレアメタルやミスリルの生産に使った方が万倍稼げるだろう。

 

 それでもこの限定された空間では栽培スキルの力は万金(ばんきん)(あたい)するものだ。

 俺は一つ一つの(つぼみ)に花を咲かせ、受粉させ、そして成長を(うなが)していった。

 

 

 お昼前、リビングのテーブルの上に置かれた(かご)の中には収穫されたばかりの新鮮なリンゴが山積みにされていた。

 

「おー、これは凄いのう!」

「リンゴがいっぱいにゃ! ……じゅるり」

 

 のそのそと自分の部屋からやってきて食卓(床に固定されてる)に着いたアンバーとミュールが目を輝かせる。

 

「今日から果物は食べ放題だ。好きなだけ食え……!」

 

 久々の甘味を前にしてフィーバータイムに入った二人をニコニコと眺めていたら、リンゴを手に取ったユニエルが尋ねてきた。

 

「ハルト様、午後はどうされるのですか……?」

 

 今日から睡眠時以外はユニエルの重力操作スキルで船内を1Gに保つことで快適な船旅が保証されることになっている。

 あの時、ユニエルを見捨てずに助けておいて本当によかった。

 

「どうって、普段通り本を読みながら過ごすつもりだけど」

「少し、ハルト様に手伝って頂きたいことがありまして……」

「一体、何をするんです?」

「ここではちょっと……」

 

 二人には内緒にしたいのか。

 よく分からないけど、俺は食後にユニエルの自室を訪ねることになった。

 

 

 ここで次元潜航船ハムカー号のクルーの仕事を軽く紹介するとしよう。

 

 俺は船長とコックを兼務するこの船のリーダー。

 食材の管理と方針の決定、それと緊急時の判断は俺の役目だ。

 重力を得たことで、これからはお風呂掃除やお洗濯も加わることになる。

 

 アンバーは司書。

 クルーの要望に応じてポーチに保管した本を探すのが役割だ。

 彼女は積んでいた本を崩す絶好の機会とばかりに本を読み漁っている。

 

 ミュールは整備士と航海士。

 魔道エンジンの整備を行ったり、上の天体望遠鏡で外の観測をしている。

 航路にダンジョンの外殻が生えていることもあるので、結構重要なポジションだ。

 

 ユニエルは医者と相談役。

 普段は探索者ギルドが行っている次元間通信を傍受(ぼうじゅ)して情報収集を行っている。

 情報の取得()れはかなりあるし話せるのは守秘義務に抵触しない範囲だけだが、彼女の話す時事ネタは数少ない娯楽として閉鎖空間でのストレス軽減に役立った。

 

 さて、俺はそんなユニエルの自室に呼び出されたわけだが……。

 

「それで、俺に手伝って欲しいことって?」

 

 そう言いつつ俺はユニエルの部屋を見回した。

 6畳ほどの狭い部屋には窓際に固定されたモニターと背もたれのない椅子、そして豪奢(ごうしゃ)なベッドだけが置かれていた。

 

 これ、昔アクアマリンの院長室にあったやつだ。

 よく持っていたな、装具にでも入れていたのか?

 

昨日(さくじつ)、私がアンバー様とお話ししたことを覚えていますか……?」

 

 白い両翼を広げ、ベッドにうつ伏せになって(くつろ)いでいるユニエルが気だるげな様子で尋ねてきた。

 

「ええまあ、おかげさまでしっぽりウフフと楽しませて頂きましたけど……」

「僕はアンバー様と取引をしました。その取引の結果として……この次元の狭間(はざま)から脱出するまでの間、ハルト様を()()にしてよい権利を頂いたのです……」

「ええと、それはつまり……?」

 

 ユニエルがスッと指を動かすと、背後の扉がバタンと閉じた。

 血のような赤い瞳が俺を貫く。

 ……嫌な予感がする。

 

「これでもう逃げ場はありませんよ……」

 

 ベッドから立ち上がったユニエルが扉を背にして立ち尽くす俺に壁ドンした。

 さっきから冷や汗が止まらない。

 

「さあ、僕に身を(ゆだ)ねるのです……」

 

 俺はユニエルに両腕でぎゅっと抱き締められた。

 柔らかな双丘がむぎゅりと顔に押し付けられ、下腹に硬いモノが押し付けられる。

 多幸感と怖気(おぞけ)が同時に襲い掛かり、思考回路がショートした。

 

 

 3時間後

 

 俺、ハルト・ミズノ23歳はとってもエッチな男の子。

 初体験であんなに感じちゃうなんて、恥ずかしー(はぁと)。

 

 全裸の俺は豪奢(ごうしゃ)なベッドの上で横になり、荒い息を上げる長身スレンダーな裸のふたなり天使を肩に抱いていた。

 

 いやあ、最初はどうなるかと思ったがなんてことはない。

 ちょっとばかりハードな経験を積んでしまったが、エルが満足したところで一転攻勢よ。

 

 どうやら攻めるのは得意でも、受けるのは初めてだったようだ。

 鍛え上げた房中術スキルの力でウブな天使をメスに()としてやったぜ。

 

「ユニエル、お前は外の世界に帰ったらどうするつもりなんだ?」

 

 俺はピロートークがてらユニエルと今後の話をすることにした。

 彼女がアンバーとした取引は有効期間が次元の狭間(はざま)にいる間と限られている。

 つまり外の世界に出たらユニエルとはサヨナラしなければならないということだ。

 

「イクリプスに戻った私はスタンピードの責を取らされるでしょう。螺旋の牢獄に収容されていた者達と同様に、懲罰の練習台となる運命なのです……」

 

 ユニエルが指を振ると、床に脱ぎ散らかされた白衣の中から一枚のギルドカードが飛んできた。

 

 ユニエル 532歳 ランクX 医者(ヒーラー) Lv109

 魔力S 筋力C 生命力C 素早さA 器用さS

 

 ……ステータスが黒く焼き付き、ランクがXに変化している。

 俺達のギルドカードは年齢以外、一切の変化がなかったというのに。

 

「俺はユニエルには幸福に生きていて欲しいんだ。何か抜け道はないのか? 例えばアザゼルみたいに僻地で隠棲(いんせい)するとか……」

「いいのです、ハルト様。許されざる罪を犯した私は贖罪(しょくざい)をしなければなりません。ですから、ですから……この船にいる間だけは、そのことを忘れさせてください……」

 

 目尻に涙を(たた)えたユニエルに(すが)りつかれた俺は、彼女の頬に手を添えてそっと口づけをした。

 

「このことは聞かなかったことにしよう。そうした方がきっと、楽しく日々を過ごせるだろうから……」

 

 俺は彼女の意思を尊重する。

 短命種の俺では永遠の生を持つ天使を束縛することは決してできないのだから。

 それでも今だけは、その(つら)い未来を忘れさせてあげたかった。

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