マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第184話 療養院でお仕事(前編)

 アバロンの里滞在2日目、今日からお仕事頑張るぞいと意気込みもたっぷりに朝食を済ませた俺は療養院に出勤する為に屋敷の庭先に出た。

 

「こ、これは……」

 

 出たのはいいのだが、屋敷の周囲に張られている雪除けの結界の向こう側は吹雪で真っ白に染まっていた。

 昨夜はあんなに晴れていたというのに、冬山の天気はこうも変わりやすいのか。

 

「むう、これではダンジョンには行けそうにないのう」

「庭で機械弄りでもするかにゃー」

「これくらいなら大丈夫ですから、行きましょう!」

 

 ミラはやる気満々の様子で、懐から取り出した卵大の紫色の宝玉を掲げた。

 彼女の身体が青い光に包まれて、シルエットがむくむくと巨大化していく。

 あっという間に、ミラは紫色の鱗を(まと)った巨大なドラゴンに化身した。

 

「おお、でっかいのう!」

「ほへー……」

『皆さん、私の背中に乗ってください』

 

 くるりと背を向けたミラの背中にギースが大きな(くら)を取り付けた。

 (くら)には手すりがいくつも付いているから、ここに掴まれということだろう。

 ギースに続いてアンバーとミュールが鞍に乗り込んで、残る俺達を見下ろした。

 

「みんな、怪我にはくれぐれも気を付けてね」

 

 アンバーとミュールには、これからミラの修行がてらギースとダンジョンで魔石集めをして貰うことになっている。

 

 本当は俺も一緒に行きたいんだけど、俺はユニエルの助手にミスリルの生産やら何やらとやることが山積みだ。

 

 伝説の探索者ギースが一緒に居るわけだから滅多なことにはならないだろうけど、心配は心配なのである。

 

「今日はお前らみたいなBランク探索者が苦戦するようなダンジョンには潜らんさ」

 

 ギースは腰の袋からリンゴ大の黒い箱を取り出して俺達に見せつけた。

 ダンジョンマスターシステムのインストールに使う魔道具「マスターキー」だ。

 

「よろしくお願いします、ギース様……」

「ああ、大船に乗ったつもりで任せてくれ」

 

 今日はアバロンの里周辺の低ランクダンジョンを管理ダンジョンに変える予定だ。

 管理ダンジョンと言っても、ダンジョンマスターを()えるつもりはない。

 今のところそんな人的余裕はないし、異形獣対策もできていないからな。

 

 世界樹をアンテナ代わりにして近場の管理ダンジョンにアクセスすることで、ダンジョンのないアバロンの里から中央大陸や西大陸との次元間通信を行うのが目的だ。

 ネフライト王国で200年ほど前から使われている技術をここで使うというわけだな。

 

『出発します!』

 

 竜化したミラが大きな竜翼をはためかせて飛び立った。

 アンバー達が片手で手すりを掴んで、もう片方の手でこちらに手を振る。

 

「ハルト、行ってくるのじゃ!」

「行ってくるのにゃ!」

「いってらっしゃい!」

 

 紫の魔竜は雪除けの結界を抜け、吹雪の中へと消えていった。

 後に残ったのは俺とユニエル、そしてラグラスだけだ。

 

「さて、私達も行きましょう」

 

 ラグラスの後ろについてやってきたのは、屋敷の裏手にある小さな土倉だ。

 鍵の掛かっていない両開きの大扉を開けると、何もない小部屋の中にある地下へと続く大きな階段が顔を覗かせた。

 

 魔道ランタンを手に石壁で囲われた地下通路をコツコツと反響する足音を立てながら歩くと、通路の途中で横に伸びた階段の前でラグラスが振り返った。

 

「こちらが療養院に続く階段です。私は温室で仕事をしていますので、何かあったら人を使って連絡を寄越してください」

「ええ、覚えておきましょう……」

「分かりました」

「では、また夕方に会いましょう」

 

 アバロンの里の食糧事情を一手に引き受けているハウス農家のラグラスは、今日の農作業をする為に通路の向こうへと消えていった。

 

 その背中を見送った俺達が階段を(のぼ)って大扉を開けると、療養院の中に出た。

 近くの窓から外を見た限り、どうやらここは建物の西側に位置しているようだ。

 

 広い通路を歩いていると、洗濯物の詰まった(かご)を抱えた中年の竜人族(マムクート)の女性とばったり出会った。

 

「おはようございます。これから手術ですか?」

「いいえ、まずはカルテを作る必要があります……」

「カルテとはなんでしょう?」

「患者の症状を調べ上げて記録したものです。医学の発展の為に、必ず診療記録は残しておかなければなりません……」

「な、なるほど……頑張ってください」

 

 意味がよく分かってなさそうな竜人族(マムクート)のおばちゃんはぺこりと頭を下げると、俺達に背負った赤い竜翼を向けて立ち去った。

 

 

 瘴気に侵された患者の眠るベッドが所狭しと並んだ大広間にやってきた俺達は、病人の看護をしている竜人族(マムクート)の女性を集めて軽く説明をした後、二手に別れてカルテ作りを始めた。

 

 ユニエルは意識のある患者(34名)の問診と検査を担当、俺は意識のない患者(51名)の検査を担当することになった。

 

 やることは簡単だ。

 血液を採取して未使用のギルドカードに登録し、バインダーに留めたカルテにステータスをすべて記入。

 医療スキルで魔力波を通して健康状態と瘴気汚染の部位を確認して書き留める。

 

 生命力が高いからか、寝たきりの割に健康状態はそこまで悪くないようだ。

 最後に看護師から患者がいつから眠っているか聞き取りをしておしまい。

 

 ここでは昔から原始的な月光療法を行っていたそうだが、どうもその効果は微々たるもので昏睡状態から目覚めた患者は滅多に居ないようだった。

 

 しかし……ここにいる患者の多くが100年単位で寝たきりってのはな。

 驚くべきことに、2000年以上前から眠っている竜人族(マムクート)さえいた。

 いくら竜人族(マムクート)が長命だからって気が長いにも程があるだろう。

 

 とはいえ、諦めずに看病を続けたおかげで今がある。

 一度は希望を見せたのだから、できる限りそれに応えたいものだ。

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