マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜 作:我島甲太郎
ここでこのアバロンの里に住む人々の仕事を解説する。
まず、戦士。
優れた戦闘能力を持つ彼らの仕事はアバロンの里を守る南の防壁の向こう側にあるコラーナ焦土の上空を懲戒してやってきた異形獣を討伐することだ。
コラーナ焦土は双子山の南に広がる大森林を
うっかり彼の縄張りに入り込んだら、超長射程の赤黒いレーザービームみたいな瘴気ブレスで焼かれてあっという間に異形獣の仲間入りをするらしい。
おお、怖い怖い。
異形獣を倒すことで経験値が減ってレベルダウンすることを踏まえて、彼らは持ち回りで仕事をしながら近場のBランク迷宮でレベル上げをしている。
アンバー達が普段狩りに行っているのも、その辺りのダンジョンだ。
彼らが集めた魔石はそのほとんどが、雪除けの結界の維持と温室の管理に使われている。
ギース海賊団が東大陸に持ち込んだ魔道技術は500年以上前の旧式のもので、家電みたいな便利な生活用魔道具や魔道バッテリー、月光発魔パネルといった最先端技術が詰まったハイテクなものは一切存在しない。
春先にネフライト王国から派遣されてくる予定の魔道具職人さんには、是非ともこの里の生活環境を改善して貰いたいものだ。
狩人について。
成人したばかりの若者や
他にも北の海で漁をしたり、東の山で岩塩を採掘したりもするバリエーションに飛んだ仕事だ。
それとこれは竜化の化身スキルの訓練も兼ねている。
卵大の宝玉みたいな見た目をしている竜石は
かつてグライズ王国の捕虜にされた中央大陸の
ちなみにこの竜石、どこかで見たことがあるなーと思ってずっと頭を悩ませていたのだが、ジャイアントオーブにそっくりだったことを最近思い出した。
もしかしたら、古代の魔道具職人は竜石を素材にしてあのジャイアントオーブを作ったのかもしれない。
話が
残るは
ものづくりにのうぎょう、何でもござれだ。
武器を手に取って戦士になる男勝りな女性もそれなりにいるが、結婚して子供ができたらそうもいかない。
肉体面だけではなく精神面の成長も遅い
そういう意味でも日の出ている間、ギースの屋敷で子供の面倒を見て貰える今の環境は、
こうして余った人手は療養院での看護や温室での農作業に振り分けられる。
今日はその農作業について触れるとしよう。
ダンジョン調査遠征の翌日、俺はラグラスと一緒にギースの屋敷の裏手にある土倉の中から伸びる地下道を歩いていた。
途中の療養院へと続く階段をスルーして突き当たりにある大階段を
倉庫の壁際には農具が置かれた棚や液体肥料の入った
「ラグラス、今日は第二温室で鬼米の収穫作業をするんだったか」
「そうですね。できれば午前中には終わらせたいところです」
俺達が倉庫入口の扉を開けて外に出ると、すぐ目の前にガラス張りの三角屋根をした50mほどの長さのある長方形の温室が五棟並んで建っていた。
第一温室と第二温室が鬼米用で、第三温室がスタック大麦用、第四温室と第五温室では野菜類の輪作を行っている。
後は農業倉庫の隣に、育苗用の小さめの温室があるくらいか。
ここは療養院のちょっと南の方に位置している。
「ラグラスさんにハルトさん、おはようございます」
第二温室の入口の前に集まりおしゃべりをしていた
「おはようございます。早速ですが、始めちゃっても大丈夫ですか?」
「ええ、準備は万端ですよ」
地面に敷かれた大きな麻布の上には簡単な構造をした足踏み脱穀機が並んでおり、その隣には鬼米の乾燥用魔道具や空の麻袋の山も置かれていた。
確かに彼女の言うように、準備は万端のようだ。
「じゃあ、始めますか」
俺はスキルで生み出した石の流体を足元に
するとそこには、見上げるほどの高さがある大きな陸稲が黄金色の
俺は石の触手を操って稲を一束掴むと石の刃で太く固い茎を根元から切り裂いた。
石の
あっという間に入口に積み上がった稲束を外の女性達が慣れた手つきで脱穀し、魔道具で乾燥させて大きな麻袋に詰め込んでいった。
玄米の状態で保存して使う直前に精米するのが鬼米を美味しく食べるコツらしい。
小一時間も経てば収穫も終わり、広い温室の中は空っぽになる。
使い道のない稲殻を肥料と混ぜてザーッと温室の土に撒き、耕作スキルで青く光らせた
ぶっちゃけ俺要らないんじゃないかなと思わなくもないが、こういう面倒な仕事を一緒にするからこそ交流が深まるというものだ。
一仕事終えて喉が渇いた俺は自作のラムネ瓶をポーチから取り出して開封すると、中に入っていた翡翠色のケミカルな液体をごくごく飲み干した。
ドリンク代わりのマジックポーション原液(約10万MP回復 時価50万メル)だ。
「美味い、もう1本!」
俺が回復した魔力を使い切る為に真空ガラス瓶を抱えて錬金術スキルでマンガン+24を作っていると、鬼米の苗が載った台車を押してやってきたラグラスがげんなりとした顔で話し掛けてきた。
「そのような劇物、よく平気な顔をして飲めますね……」
「実を言うと、医療スキルで苦みを感じないようにしているんだよね」
俺はべーっと濃い翡翠色に染まった舌を出してネタバラシをした。
「それでも過剰なマジックポーションの摂取は苦痛に変わりないでしょうに、
「乗り掛かった船だし、中央大陸に帰る前にできるだけのことをしておきたいんだ」
俺はこの里の住人全員にミスリルの首飾り(ゴールデンハムマンデザイン)を配りたいが為に、こうして苦行を続けている。
矢面に立つ戦士の分だけで満足しておいたらいいものを、子供達がそれを見て
タダで非合法のマジックポーションがいくらでも手に入るボーナスタイムとはいえ、変なところで凝り性な面が出てしまっていた。
「そう言うラグラスの方はどうなんだ。ネフライト王国の王子様がこんな僻地で慣れない農家をやるなんて、大変じゃなかったか?」
農作業自体はここにいる
彼の本業は薬剤師だから、無理に肉体労働をする必要はないはずだ。
それなのに、彼は今も念動スキルの力に頼らず額に汗して鬼米の苗を運んでいる。
「確かに最初は苦労しましたけどね。これはこれで悪くないものです」
なんか脱サラして農家になった人みたいなことを言ってる……。
好きでやっているのなら、俺もあんまり気にしない方がいいだろうか。
「ならいいんだけど……本当に手伝わなくてもいいの?」
「ええ。気持ちだけ、ありがたく頂いておきます」
それから農業倉庫の隣の小さな温室を十往復して温室の入口に鬼米の苗を運び終えたラグラスは、耕うん作業を終えて休んでいた女性達に声を掛けた。
「さて、そろそろいい頃合いです。田植えを始めましょうか」
俺達は耕し直したふかふかの土に田植えを行った。
折角なので俺もラグラスに
最後にラグラス特製の成長促進剤を畑に撒いたら、午前中の作業はおしまいだ。
とんとんと痛めた腰を叩きながら温室の外に出た俺達を、湯気の立ち昇る大鍋を前にした
ラグラスは土と汗で汚れた頬をタオルで
「皆さん、お疲れ様でした。お昼にしましょう」
厳冬の風が吹き抜ける寒空の下、でっかいおにぎりを片手に温かい味噌汁を飲みながら過ごす時間は格別のものだった。
午後は集めた
毎日勉強を頑張っている子供達の為にも、沢山作ってあげないとな。