マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜 作:我島甲太郎
アバロンの世界樹の前にある広場から発生した魔法陣はゆっくりと天高く浮かび上がると、世界樹を起点とした結界の範囲を示すかのように外周を回り出した。
10、20、30……。
数えきれないほどの巨大な魔法陣が浮かび上がっては晴天を埋め尽くしていく。
そろそろ魔法陣の入り込むスペースがなくなるんじゃないか。
そう感じられるようになった時、一つの魔法陣がぐにゃりと変形してシュルシュルと世界樹の幹の中に入り込んだ。
空いたスペースには新たな魔法陣がスポッと収まり、また一つの魔法陣が変形して世界樹の幹に詰め込まれる。
永遠に続くような古代の結界術式の輝きを
「ねーねー、お爺ちゃんはどうしてそんなにちっちゃいの?」
「おひげながーい!」
「お、お爺ちゃんて……俺はまだ300歳だぞ……」
「うそ、年下ー!」
「馬鹿だなー、羽のない人はすぐ老けちゃうってユニエル先生に教わったじゃん」
どぶろくのたっぷり入った大きな酒杯を片手に持ったドワーフのバイスは早速、
「にゃははー! あちしらのスーパーな宴会芸を見せてやるにゃ!」
「
「オラオラオラオラ!」
ハーフリング操縦士のギンジとライルが無数のボールで橋を架けるようにジャグリングすると、その上をミュールが軽業スキルを使ってぴょんぴょこ飛び回った。
宴会芸って言うか、大道芸だなこりゃ。
「こ、これが伝説のゴールデンハムマン……! なんて愛らしいんだ……!」
下が騒がしかったのか不機嫌そうに起き出してきたキンちゃんが幹を伝って広場に降り立つと、その姿を見たウィリアムが感動に打ち震えた。
ミラと並んで立っている後方腕組み爺さんのギースは嬉しそうにうんうんと頷く。
ウィリアムの肩からぴょこんと降りたスノーハムマンのカリンが、とことこ走ってキンちゃんに近寄った。
こうして見るとサイズ差が凄いな、象とモルモットくらいの違いがある。
2匹のハムマンの
カリンと見つめ合ってふんふんと鼻を鳴らしたキンちゃんは……いきなりその小さな手でカリンを掴んで頬袋に詰め込んだ!
「カリンー!?」
キンちゃんの頬袋がもごもごと動き、口が開いて中からカリンが顔を出した。
モブ天使はすかさずカメラのシャッターを切る。
今年のハムマンハプニングフィルム賞、金賞受賞間違いなしだ。
「おやつを分けて貰ったのか……。良かったな、カリン」
小さなギリーオームの破片を手に持って肩の定位置に戻ったカリンのあごの下を、ウィリアムは指先でコショコショと
広場の中央には、未だにスーパーサイヤ人状態で石畳の奥に刻まれた古代の結界術式に魔力を注ぎ込み続けるラグラスの姿が見える。
ユニエルとオリエルはそんな彼の横で仕事の話をしているようだ。
現在の状況が大体確認し終わったところで、俺の周囲に視点を戻すとしよう。
視点を戻すって言っても、ぶっちゃけ料理の並んだテーブルの前で椅子に座ってアイリス達と話をしながら酒を飲んでいるだけなんだけどね。
「教授は凄いんですよぉ~。今まで不可能とされてきた魔道技術を次々に実用化していって……僕の200年の研究もおじゃんになっちゃったんだぁ~」
アルコールに弱いのかたった一口で酔っ払って顔を真っ赤にした助手エルフのシャムロックが、
「へー、そいつは凄いな。アイリス、どんなものを作ったんだ?」
俺の隣にくっついて座っているアイリスは指を折って数える。
「えっとねー、まず全自動ミスリルプレート製造機でしょ、国境に埋まっているギガンティックタイタンを安全に処理する重機に効率よく空気から肥料を作る魔道具、後は航空用の魔道無線と魔道ジェットエンジンの術式もわたしが開発したんだー」
たった10年でどんだけ発明しているんだ。
このこの、天才魔道具職人めー。
「ニュークリアフュージョンの術式化に成功したのか?」
「安全の為のブラックボックス化には時間が掛かったけどね。魔力コストの関係で規格化されたミスリルプレート以外は作れないけど、今じゃ世界中の
アイリスがポーチから取り出して見せてくれたが、透明なスライム樹脂に封入されたその50㎝四方のミスリルプレートはミスリル発魔機の交換用パーツらしい。
この世界の家屋の屋根を翡翠色に
あれはソーラーパネルみたいに街の景観を破壊するから、俺もない方が嬉しいな。
「そうそう、忘れてた。錬金術スキルは特定魔道技術資格に指定されたから、これからは誰にも教えないようにしてね」
これで名実ともに錬金術スキルは次元干渉スキルに並ぶ禁術スキルとなった。
勝手に広めてそれがバレたら、その時点で首にお縄が掛けられちゃう。
「アザゼル以外には教えていないから大丈夫だと思うけど……俺が使う分には問題ないんだよね?」
「ハルトくんは錬金術スキルの開発者だから魔道学院で手続きをしてからなら大丈夫だよー。3人のパスポートを預かってあるから、帰る時に渡すね」
ミスリルの首飾り(ゴールデンハムマンデザイン)は全員分(予備を含めて)作り終えてデュラに預けてあるので、俺のお役目はもう終わったといっていいだろう。
マジックポーションの原液を飲まなくてもよくなったのはいいとして、これから余った魔力は何に使おうかな。
貯金も吹き飛んじゃったし、またヒヒイロカネでもちまちま養殖するか。
「わしらも一緒について行ってよいのか?」
俺の膝の上にちょこんと座って正妻アピールをしているアンバーが尋ねた。
「プロテアさん――ネフライトの女王がアンバーちゃんに直接会ってお願いしたいことがあるって言ってたよー」
「ほう、わしにか。それは『こん棒愛好会』への依頼と考えてよいのかのう」
「うん。守秘義務があるから内容は伏せるけど、西大陸に行く前に一度ネフライトに寄って欲しいかなー」
「うむ、考えておくのじゃ」
大事な話が一通り終わったところで、宴会芸ならぬ大道芸をしていたミュール達が戻ってきた。
「ふひー、運動したらまたお腹が減ってきたにゃ」
ミュールは大皿に積まれていたマンガ肉をがしりと掴むと、ガジガジ
ちなみにこれ、北の氷河地帯に生息しているケナガマンモスの肉らしい。
それからも俺達がのんびりとお酒を飲みながら過ごしていると、日が傾いた頃にようやく世界樹の雫を服用したラグラスのスーパーサイヤ人状態が解除された。
半円状に空を埋め尽くしていた魔法陣が順繰りに全て世界樹の幹に吸い込まれた後、シュルンと一瞬だけ里の周囲に半透明な青白い結界が光って消えた。
これでアバロンの里は異形獣を除いたあらゆる脅威から守られることになる。
現状だとあんまり意味はないが、それでも雪除けの結界が一切不要になるのは魔石コスト的に大きなメリットだろう。
「やっと、終わりました……」
精根尽き果てて立っているのもやっとな状態のラグラスの
「キュキュ!」
ごろんとお腹を上に寝ころんで、さあここで休んでと言わんがばかりだ。
キンちゃんは頑張った人にご褒美をくれる優しい子なのである。
「キンちゃん、ありがとうございます。……あへぁ」
ラグラスはキンちゃんの毛皮のベッドに飛び込むと、変なクスリでもやっているんじゃないかと心配になるくらい幸福な表情を浮かべながら夢の世界に旅立っていったのだった。