マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第199話 知恵の女神を胸に抱いて

 世界樹の結界が完成してすぐに、歓迎の(うたげ)は終わりを告げた。

 春になったとはいえ日が落ちたらどんどん寒くなってくるわけで、そんな場所でずっと過ごしても楽しくないからな。

 

 俺達は竜化した竜人族(マムクート)の背にテーブルやら椅子やらを括り付けたりして手早く撤収作業を進める。

 ついでにキンちゃんのお腹で寝ていたラグラスも、彼の自室のベッドに運ばれた。

 

 まだまだ飲み足りない男達が療養院の大広間に二次会の会場を移しているのを横目に見つつ、子供達を連れて療養院のサウナへGOだ。

 

 この時の点呼の最中に数人の子供が行方不明になっていることが発覚したが、ユニエルが探知スキルを使って竜の遺跡の中で眠っている子供達を発見したことで事なきを得た。

 

 そうそう、あの次元の狭間(はざま)に繋がっている竜の門だが、修復した通路の一部を崩して封印し直してある。

 

 だから今、竜の遺跡に遊びにきた子供が興味本位で門を開けても世界樹の根で塞がれて何もないように見えるだろう。

 

 アレも元々、デュラが生まれるよりも昔に竜人族(マムクート)の子供が勝手に竜の門を通って行方不明になったことがきっかけで塞がれたそうだし……。

 

 今後は誰かが通ったらすぐに分かるように防犯用の魔道具を設置する予定だから、安全対策は万全である。

 

 話が()れたが、サウナでしっかり汗を流した俺達はギースの屋敷に帰った。

 

 今回やってきた東大陸派遣隊のメンバーは、おおむね療養院の空いた病室を改装した客室で休むことになっている。

 

 天使は探索者ギルドで寝起きをするし移住組はすぐに家に引っ越すだろうが、それはそれとして……俺はアイリスと自室で二人きりになっていた。

 

「ここがハルトくんの部屋?」

「正確には俺とアンバーの部屋だけどな」

 

 昼間はあれほどむくれていたアンバーも、今夜ばかりは気を利かせてミュールの部屋に行ってくれている。

 浮気性の男で本当にごめん、世界で一番愛しているよアンバー。

 

「鬼の隠れ家亭の時より全然違うねー。ハルトくんはこういうのが好きなんだ」

「そりゃあ、あっちは宿だから。好き放題するわけにはいかないよ」

 

 最初はベッドしかない殺風景な部屋だったが、半年も過ごせば変わるものだ。

 大きなダブルベッドにハムマンの装飾がかわいい木製家具の数々。

 壁にお手製の姿見もあるし、棚の上の花瓶には花まで飾られている。

 

「ねえ、ハルトくんもこっちに座ってよ」

 

 ダブルベッドに座ってこちらに上目遣いをするアイリスに(うなが)されて、靴を脱いだ俺は彼女の隣に腰を下ろした。

 なんだろう、ちょっと緊張しちゃうな。

 

「アイリス、オシャレをするのはやめたのか?」

 

 最初に会った時アルメリアさんじゃないかと勘違いしたのは、アイリスがスク水の上に何も着ていなかったのが大きな原因だと思うのだが。

 

「いつもハルトくんが褒めてくれるからやっていたけど、元々そんなに好きじゃなかったんだ」

「そっか……俺も、今の方が自然体でいいと思う。やっぱりアルメリア・ダークエルフ族はこうじゃなくっちゃな」

「変な属名付けないでよー」

 

 クスクスと笑うアイリスの表情はアルメリアさんとは似ても似つかないものだ。

 成長して姿形が大きく変わっても、アイリスはアイリスのままだった。

 

「なあ、アイリス」

「なに、ハルトくん」

「キスしてもいいか?」

「……うん」

 

 俺は彼女の膝に置かれた手に触れて身体を寄せると、そっと優しい口付けをした。

 ゆっくりと繋がった唇を離すと、アイリスは自身の谷間を抑えてはにかんだ。

 

「なんだかわたし、凄くドキドキしてる。初めて学会で発表をした時よりも、ずっとだよ」

「例えが理系過ぎる」

「いいでしょ、別に。……ハルトくん、しよっか」

 

 俺の匂いが染みついたでかい枕に頭を預けたアイリスはスク水を脱ごうと肩に指を添えたが、俺はサッと彼女の手を掴んで制止した。

 

「それを脱いでしまうなんてとんでもない!」

 

 褐色スク水ダークエルフからスク水を取ったらただのダークエルフになっちゃう。

 メガネっ子のメガネを初手で外すくらい冒涜的な行為だ。

 そういうことは十分に楽しんだ後、二回戦からするべきだと俺は思う。

 

「……変態」

「その変態に()れたのはどこの誰かな?」

「ここのわたしでーす。んっ……」

 

 俺はアイリスに覆いかぶさってディープなキスをした。

 紺色の布地を押し上げる柔らかなお餅をひと揉みしつつ、ほんのちょっぴりだけ手に魔力を込める。

 

 ただひたすらに快感を与え続けるだけが房中術スキルだと思って貰っては困る。

 ソフトかつ繊細な魔力遣いで、相手の気分を少しずつ盛り上げるのだ。

 

 (ついば)むようなキスを続けた後、俺は枕元に広がった銀の御髪(おぐし)から飛び出しているとんがり耳をぺろりと舐めて耳元から(ささや)くようなイケボで追撃を加えた。

 

「アイリス、どうして欲しい?」

「わたしのこと、めちゃくちゃにして。一生、ハルトくんのことが忘れられないくらいに……!」

 

 褐色の頬を紅潮させて息を荒げているアイリスに、俺は――。

 

 

 俺はアイリスのことをずっと、親戚の子供のように扱っていた。

 アイリスが昔から俺に好意を寄せていたことは知っていたけど、それは彼女の狭い人間関係の中で唯一親しく話せる男性だからだと理解していた。

 

 イケメン揃いの異世界人どもと比べたら俺の顔面偏差値は地の底だし、才能に(あふ)れるアイリスには俺よりもずっといい男がいくらでも現れると思っていた。

 実際、彼女は魔道学院でめちゃくちゃモテていたそうだし……。

 

 はっきり言って、アイリスとこういう関係になるとは想像もしていなかった。

 だけど俺達の生存が絶望的な状況でも諦めずに行動して、この遠い東大陸まで俺を迎えにやってきてくれたことに心を揺さぶられる思いがした。

 

 エクレアにシルキー、ユニエルやミュールのような打算と性欲に(あふ)れた関係ではなく、ただ一人の女性として強く()かれたんだ。

 

 だからアイリスと恋人になるのは決して俺の性癖ドストライクなムチムチ巨乳に成長したからという理由ではなく、純粋な愛によるものだと信じて欲しい。

 

 ギースの屋敷に帰る少し前、俺はアンバーに土下座してそう懇願(こんがん)した。

 アンバーはまたか……と呆れた顔をしながらも、最終的にお許しをくれた。

 それはこれまでのような期間限定ではなく、生涯続けてよいものだった。

 

 俺はこの世界の果てで、ついに追い求めていた巨乳ハーレムを手に入れたのだ。

 マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜 完!

 

 

 長く情熱的な愛を交わした後、俺はアイリスとピロートークをしていた。

 

「――わたし、本当は悪い子なんだ。アンバーちゃんなんて居なくなっちゃえばいいのにって、ずっと思っていたんだから……」

 

 サイドテーブルにある魔道ランタンの隣に置かれた目覚まし時計の針は午後の11時を回っているが、もう少しくらい起きていてもいいだろう。

 

「自分の好きな相手を一人占めしたいって思うのは自然なことだと思うけどな。俺だって死んだ後アイリスに他の男ができたらと想像したら、嫌な気持ちが込み上げてくるし」

 

 俺の胸元に耳を添えて心臓の鼓動を聞いているアイリスの、編み込みが(ほど)かれたサラサラの銀髪を俺は指先ですいた。

 エルフの髪は絹糸よりも細く、(なめ)らかな感触をしている。

 

「わたしがその為だけに魔道学院まで行って、権力を手に入れたのだとしても?」

 

 アイリスが魔道学院を飛び級で卒業して魔道工学科の教授まで成り上がったのは、ネフライトの世界樹経由で次元の狭間(はざま)から脱出した俺が不法入国でとっ捕まったところを助け出す為だった。

 

 そして彼女はどさくさに紛れて邪魔な女—―アンバーを排除しようと考えていた。

 ……それが未遂に終わったことを心の底から喜びたい。

 

「俺は聖都のダンジョンで無理心中を図ったユニエルさえ許した懐の超でかい男だぞ。アンバーに嫉妬している暇なんて与えないくらい、お前のことを愛してやるさ」

「それってユニエルさんのおっぱいが大きかったからでしょ」

「へへへ、バレちまったか」

「バレバレだって。はー、馬鹿みたい。アンバーちゃんも、ハルトくんも……」

 

 これまでずっと心の内に溜め込んでいたドロドロとした感情を全て吐き出したアイリスは、スッキリしたのかすうっと眠りに落ちていった。

 

 俺は彼女を起こさないようそっとでかい枕に寝かせると、魔道ランタンの灯りを消して羽毛布団の中に潜り込んだ。

 

 今日は色々と衝撃的な出来事が続いて疲れていたのだろう。

 夢は何も見なかった。

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