マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第20話 あくあ~まりんっ

 俺達はグンシモールアクアマリン迷宮前店の近くでバイクを降りると、徒歩で人魚通りと書かれたアーチを潜り、喫茶リブトンまでやってきた。

 今日は平日の昼前ということもあり、客入りはまばらであった。

 いつものようにカップル席に座った俺達は、メニュー表を開いて相談を始めた。

 

「今日は何にしようか? アンバーは何か食べたいものある?」

「そうじゃのう、実はずーっと食べてみたかったものがあるのじゃ」

 

 食べてみたかったもの?

 この店の常連としては珍しい物言いだ。

 

「それは……これじゃ!」

 

 アンバーが指差したのはリブトンスペシャルパフェだった。

 見るからにインスタ映えしそうな豪華なパフェだ。

 制作に30分ほどの時間が掛かる上に、結構なお値段がする。

 そして下の方には小さな文字でカップル限定と書かれていた。

 

「わしの小さい胃袋じゃ食べきれんからのう。お主の助けが必要というわけじゃ」

「なるほど、カップル限定ね。こりゃあ注文しない理由がないな」

 

 俺はワーラビットの店員さんを呼んでリブトンスペシャルパフェを注文した。

 ドリンクはもちろんヨーグルトミルクティーだ。

 

「それで、昨日の昇格試験はどうじゃった? わしはエンキに狩りに行ったことがないから気になっておったんじゃ」

「えっ、アンバーは行ったことないの?」

「わしは別の街で昇格試験を受けたからのう。この街にきてからはほとんど三層に通っておったし」

「じゃあイチから話すか。これがめちゃくちゃしんどくてな――」

 

 俺は彼女に昨日の昇格試験のあらましを一通り説明した。

 それを聞いたアンバーはストローでヨーグルトミルクティーをじゅーっと飲んでから、うむうむと頷いた。

 

「なるほどのう。魔杖(まじょう)に頼るばかりではなく、スキルもきちんと練習しておったのか。さっきのプロテクションのこともそうじゃが、お主はなかなかに優秀な魔導士(ウィザード)のようじゃな。わしも鼻が高いわい」

「そんな、アンバーに比べたら俺なんて全然大したことないよ」

「わしはただこん棒で殴ってるだけじゃし。創意工夫ができるのが(うらや)ましいわい」

「レベルを上げて物理で殴るのがアンバーのやり方だからなぁ」

 

 俺は土属性スキルで石をこねてハムマンフィギュアを作ると、彼女の目の前のテーブルに置いた。

 

「む! これは……ハムマン!」

「探索者を引退したらこれで食っていこうと思ってるんだけど、アンバーはどう思う?」

「ハムマンは競争率が高いからもうちょっと勉強が必要じゃの。レパートリーを増やすべきじゃ」

「今度本屋さんでハムマン図鑑を買ってこよう……」

 

 ハムマン職人の道は長く険しいものとなりそうだ。

 やっぱり日本人としては美少女フィギュア職人とか目指した方がいいのだろうか。

 いやいや、土属性スキルを使ったのうぎょうでスローライフというのも悪くない。

 

 スローライフか……やるならやっぱり彼女の故郷がいいだろうか。

 確か西の大陸のハーフリングの里だったよな?

 

「アンバーは西の大陸からきたんだよね? そこってどんなところなの?」

「そうじゃのう。西大陸は月光教の影響を受けておらんかったから、未踏破の高ランクダンジョンが山ほどあるんじゃ。だから人知れず死んだダンジョンから吐き出された魔獣ですぐに生態系がぐちゃぐちゃになってのう。魔獣だらけで大変なんじゃ」

 

 完全に修羅の土地じゃん。

 モンスターをハントしなきゃ生きていけなさそう。

 

「月光教って?」

「そうか、お主は異邦人じゃから知らぬのか。月光教はこの世界唯一のタブーじゃ。ここで話すようなことではないからのう、後で本をやるからそれで勉強するがよい」

 

 なんだか名前を言ってはいけないあの人みたいな扱いされてるな。

 異世界なのにどこにも宗教施設が見当たらないから気になってはいたんだが、やはり過去に何かがあったらしい。

 

 俺の予想だと探索者ギルド関連がクサいな。

 だって「ゴブわか」の職業一覧に聖職者関係が一切なかったんだもの。

 いくら魔杖(まじょう)が普及しているからといっても、回復職なしはありえないだろう。

 

「お待たせしました~、リブトンスペシャルパフェで~す」

 

 いきなり目の前にドンと置かれたでかいパフェに、思わず腰が引ける。

 これ、本当にカップル向けなの?

 明らかに複数人で食べることを目的とされているようなビッグサイズだ。

 

「おお、すんごいのう」

「お写真撮りますので、一緒に並んでくださいね~」

「あ、はい」

 

 しかも記念写真まで撮ってくれるらしい。

 周囲の客がこちらを見てひそひそと話をしている。

 は、恥ずかしい。

 

「はい、撮りますよ~、あくあ~まりんっ」

 

 俺達がリブトンスペシャルパフェの前で並ぶと、カシャリと音を立ててポラロイド式のカメラがフラッシュを()いた。

 ジーとカメラから吐き出された写真をワーラビットの店員さんから受け取った。

 

「ううむ、こんなことになるならもっと良い服を着てくるべきじゃったか」

「気にしなくていいよ。さ、アイスが溶けちゃうから早く食べよう」

「そうじゃの。……んー、美味いのう。わしは幸せ者じゃ」

 

 俺も彼女に負けじとスプーンでアイスをすくって口に運ぶ。

 おお、高いだけあってめちゃくちゃ美味い。

 

 だが……恐らく、この先8割くらいは俺が食うことになるだろうな。

 ここはモモちゃんに鍛えられた強靭な胃腸を信じるしかない。

 俺は気合を入れると、リブトンスペシャルパフェとの戦いを始めるのだった。

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