マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜 作:我島甲太郎
第205話 レッツゴージャスティン
あの伝説の冒険小説「わしとこん棒」が帰ってきた!
わしはハーフリングのアンバー、Bランク探索者じゃ。
ダンジョンスタンピードに巻き込まれ、人知れず聖都の闇の底に消えたわしらは長い旅の末に古代の遺跡へと辿り着いた。
遺跡の中で出会った有翼のドラゴニュートの少女に導かれるようにして竜の谷にやってきたわしが目撃したのは、瘴気に倒れた海賊王ギースの変わり果てた姿だった。
前人未踏とされたこの東大陸の北の果てで、わしは未知なる人類の脅威に立ち向かう。
世界樹に住まう伝説のゴールデンハムマン、瘴気を食らう異形の竜神、忌まわしき呪いのダンジョン……。
これは夢を追い求めて掴んだ男の、その後を知る物語。
大海の上空に白い線を引きながら高速で飛翔する機械の鳥—―フライス航空製小型ジェット旅客機の中で、俺は膝の上に座るアンバーが新作自伝風冒険小説「わしとこん棒
今回はカーススタンピードでの活躍や異形竜マグダラとの
アンバーはアバロンの里で一番の木工細工職人に作って貰った素敵な世界樹のこん棒(観賞用)を今作のメインクエスト報酬に位置付けているようで、絵師さんにお願いする下巻の表紙に使う参考写真に写ったアンバーも世界樹のこん棒を構えていた。
写真から顔を上げた俺がコックピットと客室を隔てる壁の上部に設置された時計を見てみると、現在時刻は中央大陸標準時刻で午前12時20分。
予定ではもうすぐ、ジャスティン飛行場に着くはずだけど……。
そう考えた矢先のこと、丸窓から見える景色が海の群青色から陸地の緑と茶色に変わっていることに気付いた。
「アンバー、見てみて。陸が見えたよ」
「なんじゃと? ……おお、本当じゃ。そろそろ支度をせねばならんな」
窓の向こう側を覗き込んだアンバーは筆を置いて書きかけの原稿を片付けると、前の座席の背中に付いている折りたたみ式のテーブルを元の位置に戻した。
そうしている間にピンポーンと音が鳴って、副機長の元ヤンハーフリング・ライルの声が伝声管から聞こえてくる。
「この飛行機は、ただいまからおよそ10分でジャスティン飛行場に着陸する予定でございます。現在時刻は――」
「うにゃー……もう着いたのかにゃ」
テンプレに
「ハルトくん、これでしばらくお別れだねー」
右隣の席のアイリスはちょっぴり残念そうにしている。
「たった2ヵ月の辛抱だよ。すぐにネフライトまで迎えに行くさ」
魔道学院で魔道工学科の教授をしているアイリスは今回の東大陸派遣隊で手に入れた情報を魔道学院まで持ち帰って報告する必要がある。
そして休職するにしても、現在手掛けている研究の引継ぎをしないといけない。
「前はそう言って10年も待たせたじゃん」
「それを言うのはズルいだろ……」
だから俺達は一旦アクアマリンに帰って2ヵ月ほど休んだ後、魔道学院で錬金術スキルの使用許可を得る手続きを行うついでにアイリスを迎えに行く。
それからネフライトの女王から「こん棒愛好会」への指名依頼の話を聞いた後、棚上げになっていた西大陸への旅を再開する予定でスケジュールを組んでいた。
今度の今度こそ、面倒なトラブルのない楽しい旅になるといいのだが……。
10分後、俺達の乗る小型ジェット旅客機は眼下に広がるジャングルの上空でホバークラフト機構を発動すると、迷宮都市ジャスティンを囲う城壁レッドラインの少し内側にある広い飛行場に軟着陸した。
再び機内アナウンスが流れて、入口にある階段代わりのタラップが開いた。
コックピットに繋がる扉も開いて、機長のギンジと副機長のライルが顔を出す。
「二人とも、いい腕だったにゃ。花丸あげるにゃ」
「あざっす!」
「ミュールの姉貴もお元気で!」
俺は着陸の際に着けていたシートベルトを外して席を立った。
荷物は全部ポーチの中に入っているので、忘れ物をする心配はないだろう。
「ハルトくん、最後にぎゅってして欲しいなー」
おねだりされたなら応えてやらねば男が
俺はアイリスの背中に腕を回して、ぎゅっとハグをした。
「またなアイリス。愛しているぜ……」
「わたしも……」
俺がアイリスと熱い
「アンバーさんに……ハルトさん。またの機会にお会いしましょう」
「うむ、お主も元気でやるのじゃぞ。……いつまで抱き合っておるんじゃ!」
げしっとお尻を蹴られたことで、永遠に続きそうなドッキングは解除された。
あぁん、アンバーのいけずぅ。
「ごめんごめん。続きはまた今度な」
俺はアイリスの額にキスをすると、次のお楽しみの予約をした。
「うん、待っているから。アンバーちゃんも、ハルトくんが浮気してないかちゃーんと見張っていてね!」
「分かっておるわい。ハルトよ、次はお仕置きでは済まぬからな!」
「はい、ごめんなさい。もう二度としません……」
この旅の間に積み上げていた信用をすべて失ってしまっていた俺は、誠心誠意謝罪をしてから出口へと向かっていくアンバーの背中をトボトボと追いかけたのだった。
小型ジェット旅客機のタラップを降りてジャスティン飛行場に降り立った俺達は、迎えにきていたフライス航空の従業員(無口なワーキャットのおじさん)が運転する送迎車に乗り込んだ。
ハイ〇ースみたいな送迎車は広い農地の間を突き抜ける二車線の道路を10分ほど走って赤褐色をした金属製の建物の立ち並ぶスチームパンクっぽい街に東から入り、それから大通りを20分ほど走って大きな赤褐色の城門の前で停車した。
「送ってくれてありがとうございます」
「(気にするな、という感じのハンドジェスチャー)」
運転手さんにお礼を言って送迎車から降りた俺達は、ジャスティン城の城門を守るこん棒を腰にぶら
知人のダンジョンマスターに挨拶したいところではあったが、俺達が世話になったイチゴロクニはもうとっくに寿命死(ゴブリンの族長は
「お昼過ぎだし、とりあえず軽くランチでも食べに行こうか」
「そうじゃのう。ミュールよ、どこかいい店は知らぬか?」
アンバーはジャスティン出身のミュールに尋ねたが、彼女の返答は以下の通り。
「あちしはいつもマツヤで済ませていたから全然分からないにゃ」
「つ、使えねぇ……」
「それでもいいなら案内するけどにゃー」
「ふむ。ならば、ここは『みるだむ』の出番じゃな!」
探索者ギルドが協賛店などで無料配布している観光ガイドブック「みるだむ」はいついかなる時も旅人の味方だ。
「今日の宿を探す必要もあるし、ギルドでミュールの実家の場所を聞くついでに貰ってくるとするか」
そういうわけで、俺達はジャスティン城のすぐ隣に建っている探索者ギルドへ足を運ぶことにしたのだった。