マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜 作:我島甲太郎
かつて迷宮都市ジャスティンを強襲して乗っ取ったコバルトファミリーのボス、ガルムは王都ラブオデッサの高級娼館で
そしてダンジョンマスターになったガルムがゴブリンのメスを相手に種馬生活を強制され、その気晴らしとして
ガルムの
ミュールの母チュールもその内の一人で、彼女はジャスティンで車の整備士をしていたワーキャットの男から熱烈なプロポーズを受けて再婚することとなった。
そして彼女は新しい夫との間に(ガルムとの間にデキた息子を含めて)一男一女に恵まれたのだという。
ここで疑問が生じるが、整備士をしていた普通の男と暮らしていたはずのチュールがなぜこのような高級住宅に住んでいるのだろうか。
ろくに仕送りもせず飛行機の開発に全ぶっぱしていたミュールの遺産は大した額ではなかったはずである。
ネコミミマンションの最上階にあるチュールの家にお邪魔してお茶を頂きつつ、ホラの混じった自慢話を続けていたミュールがお手洗いで席を離れた隙に聞いてみると、チュールはリビングに飾られている家族写真を見ながらこう答えた。
「夫はフライス航空にスカウトされて、今はそこで働いているんです。チャオズという名前なのですけど、ハルトさんはご存じありませんか?」
ご存じも何も、さっき飛行場から送って貰ったワーキャットのおじさんだった。
「その人ならさっき会いましたよ。チュールさん、いい人を見つけましたね」
送迎中に一言も喋らなかったあの
そこの家族写真にはまるで別人のように笑顔で写っていたから気付かなかったぞ。
「前の夫に似て包容力のある優しい人なのですが……なにぶん、無口で困ってます」
彼は家でも無口なのか……。
「少し心配しておったが、
「後はあの子が相手を見つけてくれたら、私も安心できるのですけどね」
とぼけたような口ぶりで、チュールは俺に目を向けた。
そう露骨に言わなくても分かっているよ。
要は俺が引き取ればいいんだろう?
「来年には探索者の仕事も落ち着くと思うので、そうしたら連絡します」
この辺りのことはアンバーとアイリスを交えて三人で話し合ってある。
色々な種族がいるこの世界では一夫多妻もそこまで珍しいものではないのだ。
「本当にいいんですか!?」
そこまで驚くことある??
「本音を言えばリリースしたいところなのじゃが、本人にその気が無いのでのう。仕方がないのじゃ」
ミュールは次元の
きっともう、他の男じゃ満足できないだろう。
「これは内々の話なので、ミュールには内緒にしておいてください」
言ったら絶対に調子に乗るから、ギリギリになるまで保留するつもりだ。
「そうですか……」
冗談ではないと理解したのか、チュールは改まった感じでぺこりと頭を下げた。
「あの子のこと、よろしくお願いします」
「なに、わしらはずっとあの娘に付き合っておるのじゃ。大船に乗ったつもりで任せるがよい」
アンバーが薄い胸を張って偉そうにしていると、長めのお手洗いに行っていたミュールが帰ってきた。
「玄関でばったり会ったから連れてきたにゃ」
しかも……制服姿のワーキャットの子供を二人連れて。
「あら、ノールにショール。帰ってきたのね」
「母ちゃん、ただいまー」
「……ぃ」
元気そうな12歳の男児がノール、父親に似たのか無口な10歳の女児がショールだそうだ。
どちらも見慣れない探索者風の恰好をした客人に興味津々である。
「ふむ、もうこんな時間か。わしらはそろそろお
アンバーはリビングのカーテンから射し込む夕日を見てそう切り出した。
話し込んでいる間に、すっかり夕方になっていたみたいだ。
「夕食は取って行かれなくてもよろしいのですか?」
そうは言うものの、俺達のせいで本来行われていたであろう夕食の支度が一切進んでいないからな。
これ以上ご迷惑をお掛けするわけにはいかないだろう。
「俺達はもう宿を取ってありますから、お気遣いなく。……ミュールはどうする?」
「あちしはここに泊まるにゃ。それと、朝ご飯の時間になったら帰るから忘れないでおいて欲しいにゃ」
どこまで行ってもミュールはミュールだった。
そこは朝食まで実家で済ませるのが普通じゃないのか。
「じゃあ、そういうことで。お茶、ご馳走様でした」
「ではのう、チュールよ」
「お二人とも、お元気で」
席を立った俺とアンバーは一礼すると、種違いの
その翌朝、日の昇る前にホテルに戻ってきたミュールに叩き起こされた俺達は、
中央大陸の北東部に位置するジャスティンの特産は割とポピュラーなスタック小麦で、提供されているビュッフェに並べられた出来立ての料理もパンやパスタといった洋風なメニューが豊富のようだ。
他の宿泊客に混じってトレーに載せた大皿に自分の分の料理を確保した俺達は、空いていた6人掛けのテーブル席に着いて食事を取り始めた。
話題にのぼるのは、やはりミュールのお泊りについてのことだ。
「チャオズのおっさんと
ミュールは大皿にてんこ盛りにした身欠きニシンの唐揚げをフォークにぶっ刺してパクついた。
「整備士の仕事といい、お主は
「ミュール、あの人どんな感じの声してたの?」
俺はあのおじさんが
どちらかというと、カーター氏みたいに
「最後まで一言も喋らなかったから分からないにゃ」
「……じゃあどうやって話を聞いたんだよ」
「ぜーんぶ筆談にゃ。こう、小さいホワイトボードで……」
ミュールのジェスチャーで大体のことは伝わったが、それは
チャオズがどうやってチュールに熱烈なプロポーズをしたのか気になるところだ。
「隣、いいか?」
「ええ、構いませんけど――」
トレーをテーブルに置きガラリと椅子を引いて俺の右隣の席に腰掛けたのは、青い羽毛をした鳥頭のバードマンだった。
彼はエージェント風の黒いスーツに身を包み、グラサンを掛けている。
「おまっ、ファルコじゃんか!」
「元気だったかぁー、お前ら!」
片翼でスッとグラサンを外したファルコはにやりと不敵な笑みを浮かべた。
「俺もいるぞ」
そう言って俺の左隣の席に腰掛けたのは、エージェント風の黒いスーツに身を包んでグラサンを掛けた黒髪のワーウルフだ。
「クロまでいるにゃ!」
彼はティアラキングダムの暗部組織、ノル王家親衛隊隊長のクロだった。
「偶然にしては出来過ぎておるのう。さてはお主ら、わしらを待っておったな?」
「東大陸の噂は早い段階からこちらの諜報網にも引っかかっていたが、お前達がそれに絡んでいたことを知ったのは昨日の話だ」
「で、俺が車を飛ばして迎えにきたってわけ。おかげでエコーの授業参観がパーになっちまったぜ」
ファルコはやれやれといった感じで両翼を上に向けて肩を
「そいつは悪いことをしたな」
「二度と会えないはずのお前らと再会できたんだ。一人娘の好感度が下がるくらい……いや、やっぱりキツい。あの子、最近反抗期なんだよ……」
ズーンと落ち込んだファルコは、箸の先でプレーンオムレツをつついた。
クロはそんなファルコのことを無視して、サクっと本題に移った。
「お前達をこのままアクアマリンに帰すわけにはいかない。ラブオデッサまでご同行願おうか」
こうして俺達は、ミュールの忍者ハヤテ号でアクアマリンに直帰する旅程を