マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第216話 ギザードなら死んだよ

 翌日の朝、俺達はダンジョン探索に出かけるモモちゃんを宿の外で見送っていた。

 

「行ってらっしゃい、モモちゃん」

「行ってきまーす!」

 

 ピンクを基調としたカッコカワイイ武者風の探索者装備に身を包んだモモちゃんは、道路の路肩に止まっているジャイアントトラックの助手席に乗り込んだ。

 

 説明しよう、ジャイアントトラックとは身の丈4mもある人間重機ジャイアントの送迎に使う専用の荷台が付いた4tトラックのことである。

 

 ジャイアント用の移動手段は結構豊富で、後ろにマジックコンテナを積んだ1人乗りのジャイアントバギーを運転している姿をよく見かけたりする。

 

 このジャイアントトラックの荷台の専用座席には、温和な顔付きをしたジャイアントのギリアムくんが下半身を重点的に守る感じの鎧装備を着て座っていた。

 

「師匠。次の休日、よければ僕に稽古を付けて貰えませんか……?」

 

 ギリアムくんはアクアマリン在住の若いこん棒愛好家の中でも出世頭として見られているらしい。

 

 彼はジャイアント・ホールディングスの創業者、ガゴリウス氏のひ孫だからな。

 アクアマレベリング勤務経由ではなく自力で集めた仲間とレベル上げをして上級探索者になったのだから、行く末はジャイアント・ホールディングスの重役だろう。

 

「ええじゃろう。予定を空けておくわい」

「ありがとうございます……!」

「ふあぁ~、よくやるぜ」

 

 荷台の空いたスペースに腰掛けている、厳つい武者風の姿をしたタケシくんが眠そうな顔で大あくびをした。

 

「アニキだって、本当は師匠に修行の成果を見せたいと思っているんじゃないでやんすか?」

 

 運転手は身軽そうな陰陽師風の格好をした糸目のワーフォックス、スネヲくんだ。

 

「スネヲ、それは俺がモモ相手に負け越していることを知っていて言っているんだよな?」

 

 タケシくんが不機嫌そうに殺気を出すと、スネヲくんはビビり声を出した。

 

「ひえぇ~」

 

 舎弟キャラは変わらずそのままのようだが、割かしイケメンに成長していて言動とのギャップが凄いことになっている。

 

「早く行かないとゲートに行列ができちゃうよ、スネヲくん!」

 

 モモちゃんに(うなが)されたスネヲくんは魔道エンジンの始動キーを(ひね)った。

 

「それじゃあ、出発するでやんす〜」

 

 こうしてご当地Cランク探索者パーティー「こん棒同好会」を乗せたジャイアントトラックを見送った俺達は、今日の予定を消化する為にバイクに乗って朝の街中を走り出したのだった。

 

 

 予定といっても、前の時みたいに知人に挨拶回りをするだけだ。

 人魚通り商店街にやってきた俺達はまずアルストツカ洋裁店の扉を叩いた。

 朝一なので店内には客はおらず、従業員の若いアラクネ少女が一人いるだけだ。

 

「いらっしゃいませー。あっ!」

 

 元常連が久々に顔を出したことに気付いたその少女は、慌てた様子でカサカサとクモ脚で店内の吹き抜けの上に登っていった。

 

「あらぁ、みんな帰ってきていたのね」

 

 すぐに店内にある吹き抜けの上から、白い髪を頭の上でお団子頭にしているゴスロリアラクネ熟女マーヤが蜘蛛糸を伝ってスルスルと降りてきた。

 

「久しいのう、マーヤよ」

「その服の意匠、とっても珍しいわね。どこの職人さんが作ったのかしら?」

 

 今日俺達が着ている私服はアバロンの里伝統の民族衣装だ。

 染色したギリーオームシルク100%の買えば100万メルは下らない超お高い服。

 マーヤなら絶対に喜びそうだと思って見せびらかしにきたのである。

 

「これは土産じゃ。中央大陸では誰も食べたことがない東大陸産の天然モノじゃぞ」

 

 アンバーはポーチから2mほどもあるサイズのゴツゴツした大袋を取り出した。

 ほどいた口紐の奥から覗くのは、カサカサになったぎりおの変わり果てた姿だ。

 

「う、うそ……こんなに!?」

 

 お土産に用意したアバロン産ギリーオームの干物1年分を渡しつつ、俺達は探索者装備をメンテナンスして貰う為にマーヤに預けた。

 

 ボロボロになったミュールの忍者装束はやっぱり作り直しになるらしく、この時点でミュールは貯金の半分を失うことが確定した。

 

「ちょっとくらい出してくれてもいいじゃにゃいか! アンバーのケチんぼ!」

「これに()りたら、装備はもっと大事に扱うのじゃな」

 

 その場のテンションで見えている地雷に突っ込んだのは自業自得過ぎるので、流石にパーティーの財布から装備代を出すわけにはいかないだろう。

 

 どうせ残したところで、彼女のお小遣いは全部ドライイツカデーツみたいなおやつに消えるのだから何も問題はない。

 

 

 こうしてアルストツカ洋裁店での用事を済ませた俺達は、涙目のミュールを連れて次なる目的地へと足を運んだ。

 商店街の奥にひっそりと店を構える、皆さんお馴染み魔道具工房バタフライだ。

 

 クラブだいすきクラブ協賛店というステッカーが貼られた蝶のデザインがあしらわれている扉を開くと、扉の上部に付いた呼び鈴がカランカランと音を鳴らした。

 

「いらっしゃーい」

「いらっちゃーい」

 

 ごちゃっと魔道具が陳列されている店内にあるカウンターの奥では、男好きする身体をした巨乳の褐色スク水ダークエルフが園児くらいの幼い褐色スク水ダークエルフを相手に魔道具制作の指導をしていた。

 

 アルメリアさんは俺達を見てにっこりと笑みを浮かべると、手に棒きれを持った銀髪の幼女を抱き抱えてカウンター前の椅子に腰掛けた。

 

「アルメリアさん、その子を紹介して貰えますか?」

 

 アイリスが魔道学院に巣立ったのでまた新しい跡継ぎを作ったのだろう。

 その父親が誰かについては、とんと知らない。

 

「ほらアマリリス、挨拶して」

 

 アマリリスという名前らしい。

 

「あたちアマリリス、4ちゃい!」

「よくできました。偉いわねぇ」

「えへへ~」

 

 東大陸派遣隊に協力しているフライス航空の社長のフライスから内密に話は聞いていたそうなので、久々の再会でも特に驚かれるようなことはなかった。

 

「それで、ハルトくんはアイリスとシたのよね?」

 

 まだ何も言っていないのに決定事項みたいに扱われてる……。

 以前ほどアルメリアさんのおっぱいに執着していないのは確かではあるが、そんなに分かりやすいだろうか。

 

「これからはお義母(かあ)さんって呼んだ方がいいですか?」

「ハルトくんにそう呼ばれるのはちょっと恥ずかしいわねぇ。いつもみたいにアルメリアさんって呼んで頂戴(ちょうだい)

「はい、アルメリアさん。これからもよろしくお願いします」

 

 俺は義理の母親にぺこりと頭を下げた。

 

「あれっ、アンバーじゃん。帰ってきてたんだ」

 

 聞き覚えのあるその声に俺達が目を向けると、二階に続く階段から一人の褐色スク水ダークエルフが降りてきていた。

 ショートパーマの銀髪に赤い瞳、泣きぼくろ……紅顔の美少年、アザミだ。

 

「お主、アザミではないか。イーラの工房はどうしたのじゃ」

「工房なら()めたよ。新しいダンジョンマスターに追い出されちゃってね」

 

 迷宮塔イーラの新しいダンジョンマスターといえば、アンバーの元パーティーメンバーのギザード・イーラのことだろう。

 

「おいおい、ギザードは何を考えているんだ」

「ギザードなら死んだよ」

 

 アザミはなんてことのないように、そう口にしたのだった。

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