マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第230話 ドワーフゴーレムVSエルフロボ

 それから10分後、俺達は迷宮都市アズライトを囲う城壁の上に造られていた護り手(ガーディアン)の軍事基地にあるヘリポートまでやってきていた。

 

 俺達の目の前には、オスプレイみたいな形をしたメカメカしいジェット輸送機がどーんと鎮座している。

 この機体の前方には機銃のような見た目をした魔道兵器まで()えられてあった。

 

「かっちょいいにゃ……」

 

 ミュールは輸送機を見上げてヨダレ(汚い)を垂らしながら目を輝かせている。

 ネフライト王国の独自開発した軍用機だし、絶対に操縦させてくれないと思うよ。

 

「さあさあ、早く乗り(たま)え!」

 

 ピンクブロンドの老髭エルフに催促(さいそく)された俺達は、探索者ギルドの国際航空法を完全に無視した武装輸送機に乗り込んだ。

 向かい合わせに並んだ固めの座席に腰掛け、シートベルトを身に着ける。

 

 自動的にドアが閉まると、ホバークラフト機構を発動した輸送機はふわりと浮かび上がり、そして点火した魔道ジェットエンジンの推力を受けて飛行を始めた。

 

「ローレルよ、この飛行機は一体どこに向かっておるのじゃ? わしは腹が減っているのじゃが……」

 

 シャムロックにお勧めされたアズライトの老舗喫茶店で優雅なモーニングを取ろうと考えていた俺も、現在かなりお腹が減っている。

 

「これから向かうのは国境のギガンティックタイタン埋没地、その近郊にある前線基地だ!」

 

 明らかにこの輸送機はアズライトから南西の方角に向かっていたから予想できていたことではあった。

 軍服の部下エルフが機内に設置されたマジックコンテナの蓋を開ける。

 

「朝食の代わりになるようなものは……これくらいしかない」

 

 申し訳なさそうな顔で差し出されたのは軍用のレーション――風のパッケージングをしたエナジーバーとエナジードリンクだ。

 

「……ありがとうございます」

 

 俺達は次元の狭間(はざま)で飽きるほど食べたエナジーバーをモソモソと(かじ)って空腹を満たしたのだった。

 

 

 俺達を乗せたジェット輸送機は初夏の青々とした木々に(おお)われた小高い山の上空を小一時間ほど飛行すると、石造りの巨大な城塞の屋上にあるヘリポートに着陸した。

 

 自動的に開いたドアからネフライト王国の前線基地に降り立った俺達は、屋上の端っこの手すりから眼下に広がるギガンティックタイタン埋没地を眺めた。

 

 長い年月で地中に溶け出したスタック銅合金の鉱毒被害によって、ギガンティックタイタンが埋まっているであろう場所は草も生えない荒れ地になっているようだ。

 

「我々はポゴスタック帝国の崩壊より以前から、この地に眠るギガンティックタイタンを監視してきた。どうやっても倒せず、地中深くに封印し直すしかなかったギガンティックタイタンをだ……」

 

 前線基地から見て左側—―遠く南東の方角には、赤褐色のずんぐりとした人型のゴーレムが山積みされているのが見える。

 

 あれがきっと、アイリスの開発した()()で安全に処理されたギガンティックタイタンだろう。

 

「しかし貴殿らは何の被害もなくギガンティックタイタンを倒し、アクアマリンの街を守った。このまま後の世代に託すしかないと考えていた私がその話を聞いて受けた衝撃はどれほど大きかったか……」

 

 ローレルの独白には、生涯に渡ってこの地を見守ってきた彼の苦悩が強く(にじ)み出ていた。

 

「ふむ、これがお主の見せたかったものか……」

 

 この地に眠る全てのギガンティックタイタンの処理と鉱毒の浄化には長い年月が必要だろう。

 それでもいずれは必ず、この地が禁足地でなくなる日がやってくるのだ。

 

「いいや違う、私が貴殿らに見せたかったのはこれだ!」

「!?」

 

 ローレルがいきなり手すりを乗り越えて屋上から飛び降りると、彼の全身が青い光に包まれた。

 

 その青い光の中から現れたのは――ピンクブロンド色に輝く10mはあろうかという巨大な金属製の球体だ。

 空中でガシャンと球体の切れ目が広がって、人型のエルフっぽいロボに変形した。

 

 ズシンと音を立てて二本足で荒れ地に着地した楽園〇放のアーハンみたいなエルフロボが、両腕を前に組んで俺達の方を見上げる。

 

『これぞ我らがフローライト家の悲願! 3000年の時を掛けて開発した人型機動兵器、シャイニングフローライトだ!』

「ふおぉ、超絶かっちょいいにゃ……!」

「そうだね」

 

 俺は知っているぞ。

 お前らの理想を詰め込んだ黒歴史ノートを形にしたのは全部アイリスじゃん。

 

『貴殿らにこのシャイニングフローライトの力、存分に見せてやろう!』

 

 エルフロボが遠くの荒れ地に右腕を伸ばすように差し出すと、手首からシュンと青いビームが発射される。

 するとドカンと穴の開いた地面からずんぐりとした太い腕が飛び出した。

 

 身動きのできるスペースが空いたことで、地中深くでガチガチに固められて眠りについていたギガンティックタイタンが目を覚ましたのだ。

 

 地中から()い上がってきた赤褐色の巨大な人工ゴーレムの黄色い目が、エルフの魔力に反応してピキーンと光る。

 

 赤褐色の体表に黄色いエネルギーラインを走らせるドワーフみたいなずんぐりとしたギガンティックタイタンと、ピンクブロンドの体表に翡翠色のエネルギーラインを走らせるエルフみたいな細身のシャイニングフローライト。

 

 向かい合った二者はダッと接近し、取っ組み合いを始めた。

 ぶつかり合って削れた機体が光を放ってじわじわ再生していく。

 

 削れたシャイニングフローライトの装甲の下から覗いたのは金色の地金だ。

 どうやらこの機体はメツニウム銅合金を使用しているようだ。

 パワーは互角、しかし使用された素材の違いによって形勢はエルフロボに傾いた。

 

 ガシッとホールドしてギガンティックタイタンの動きを止めたシャイニングフローライトの胸部装甲がぱかりと開き、魔道砲台が顔を覗かせた。

 みょんみょんみょん……とエネルギーのチャージが始まる。

 

『必殺、シャイニングビーム!!!』

 

 ローレルが叫ぶと、カッとした蒼光とともにギガンティックタイタンの胸部が消滅して大穴が開いた。

 

 マジックボムと同じ飽和術式によって、動力源のライトニングエレメンタルを機関部ごと消し飛ばしたのだろう。

 

 エルフロボが手を離すと、ギガンティックタイタンの成れの果てはズシンと音を立てて背中から大地に倒れ込んだ。

 

『私のシャイニングフローライトは最強だ!!! ハハハハハ!!!』

 

 大きなオモチャを乗り回して、随分(ずいぶん)と楽しそうですね。

 

「あやつ、いつもこうやっておるのか?」

 

 不愉快そうに眉をひそめたアンバーが隣に立っている部下エルフ達に質問した。

 

「いえ、その……長官が魔道アーマーに乗るのは今日が初めてです」

「危険なので止めていたのですが、退官する前に一度でもいいから乗りたいと……」

「そこはそのまま止めておいて欲しかった……」

 

 あのジジイ、調子に乗ってまた新しいギガンティックタイタンを起こしているし……。

 

『フハハハハ、私のシャイニングフローライトは……っ!?』

 

 取っ組み合いをしていたシャイニングフローライトの動きがピタリと止まる。

 動かなくなったシャイニングフローライトはギガンティックタイタンに首根っこを掴まれて持ち上げられていった。

 

『こ、腰が……』

「言わんこっちゃない!」

 

 部下エルフ達が慌てて城塞から飛び降りると、彼らの周囲が青く光る。

 変形して着地した色とりどりの魔道アーマーが走り出そうとすると、それよりも先に小さな影が飛び出した。

 

「ここはわしらに任せるがよい!」

 

 どうやらアンバーは彼らにいいところを見せたかったらしい。

 

「俺達も行くか」

「そうだにゃー」

 

 俺はケモ化したミュールの背におんぶされると、彼らの背中を追った。

 

 頭を引きちぎられて動かなくなったシャイニングフローライトが背中から大地に倒れ込むと、搭乗者が乗っている機体の胸元にずんぐりとした太い手が伸びていく。

 

 両手でギギギッと魔道砲台を守る装甲が二つに引きちぎられて、操縦席に座るローレルの姿が(あら)わになった。

 

 苦し紛れに展開されたプレテクションを紙切れのように引き裂いて、痛む腰を抑えて苦しむローレルに落ちていく巨大な手の影、そして――。

 

 シュバっと小さな影が走り、アンバーの抜き打ちしたひひいろ丸によってギガンティックタイタンの右肩がねじ切れた。

 

「間一髪じゃのう!」

 

 シュタタッとエルフロボの甲板を駆け上がったアンバーが、魔力を込めて青く光らせたひひいろ丸でギガンティックタイタンの胸元を殴りつけた。

 

「そうれっ!」

 

 ガオォォンと鐘を突くような大きな金属音を立てて、ギガンティックタイタンがふわりと浮かんで後方に吹き飛んだ。

 それと同時に、割れた装甲の中からアンバー目掛けてプラズマ球が発射される。

 

「甘い!」

 

 アンバーはそのプラズマ球をひひいろ丸で打ち返して、ギガンティックタイタンの頭部に穴を開けた。

 

「ハルト、今のうちじゃ!」

「分かっている!」

 

 一瞬で魔道アーマーを追い抜いて大地を駆けるミュールの背の上で、俺は左手の薬指に()めた黄色の指輪からこん棒みたいな見た目をした細くメカメカしい魔杖(まじょう)を取り出していた。

 

 銃のように前方に構えて全力で魔力を込めると、翡翠色のエネルギーラインを通してこん棒の先に魔力が集まっていく。

 

 俺が足で合図を出すと、ミュールがピタッと立ち止まる。

 ほどなくしてチャージが完了したので、よーく狙って……発射!

 

「ポジトロンシューター!」

 

 チュンと杖先から発射された蒼の光条が、ギガンティックタイタンの残骸から浮かび上がったライトニングエレメンタルを貫いた。

 

 ライトニングエレメンタルは一瞬で蒸発し、出現した黄色の宝玉が残骸に落下してコーンと音を立てる。

 ううむ、レベルアップはしなかったか。

 

「10万の魔力を込めたAランク魔杖(まじょう)の一撃だ、ひとたまりもあるまい」

 

 俺はこん棒マイスターアイリス製ポジトロンシューターの魔杖(まじょう)を装具に仕舞うと、ミュールにおんぶされたまま壊れたシャイニングフローライトの上に立つアンバーのもとへと向かった。

 

 ぴょんぴょんと装甲の上に飛び上がったミュールの背中から降りた俺は、ピンクブロンドの長い髭の生えた口をポカンと開けて呆然としているローレルを見下ろした。

 

「爺さん、腰をやったんだって?」

「あ、ああ……」

「年甲斐もなくはしゃぐからじゃ。これに()りたら、少しは若者の声に耳を傾けるのじゃな」

 

 遅れてやってきた部下エルフ達によって担架に乗せられ、連絡を受けて飛んできた輸送機に搬送されるローレルを俺達はシャイニングフローライトの上から見送った。

 

 なぜ俺がローレルの痛めた腰を治療しなかったのか。

 その理由は、答えるまでもないことだった。

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