マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第243話 ハイランド迷宮探索行(前編)

 ダンジョンゲートを潜って一層の狭間(はざま)平原まで飛び出した俺達は、バイクに乗って二層へ続くゲートのある異界へと向かった。

 

 組み合わせは俺とアンバー、ミュールとアイリス、ディヴレスとメリーベル。

 ドラゴニュートで体格のいいディヴレスの愛車はレトロなデザインの大型バイクで、横にサイドカーが付けられているタイプだ。

 

 便利なギルドカードのマップなしでは方角を見失いがちな狭間(はざま)平原だから、斥候職のミュールが双眼鏡できちんと目的地を確認してから移動した。

 

 ブゥーンとバイクを走らせてやってきたのはハイランド迷宮一層、飛鼠(とびねずみ)の森。

 ここにはリスとモモンガを融合させたような見た目のオナガハムマンモドキという魔物が出現する。

 

 モドキと名がついているように、愛玩魔獣として確固たる地位を確立しているハムマンとは違い魔獣化しても人には絶対に懐かないらしい。

 

 魔物としては雑魚なので特にこれといって語ることもなく、俺達は森の奥にある二層へ続くゲートの前に到着した。

 

 野良ダンジョンではダンジョンゲートの向こうに安全地帯がないから、いつも通りミュールが専用の潜望鏡を使って偵察をする。

 

 すぐにゴーサインが出たので、魔力の有り余っている俺がプロテクションを張ってゲートに飛び込んだ。

 そしてゲートから飛び出した俺達の足がズボッと深い雪に()まり込む。

 

 ハイランド迷宮二層の玄関口となる異界は雪の降り積もる平原で、大足(おおあし)雪原と呼ばれている。

 

 ここに出現する魔物はイエティーみたいな白く長い毛を身に(まと)った大猿、ビッグビッグフット。

 そしてビッグビッグフットと瓜二つな見た目をしたビッグフットゴーレムの2種類となる。

 

 深い雪で足が取られる上に斬撃耐性の高いゴーレム種が混じっているという、ハーフリングに何か恨みでもあるのかってくらいに相性の悪い異界だ。

 

 探索者ギルドのデータではどちらもグリーンゴリーラに並ぶD+相当の魔物だが、上級探索者の俺達にとっては大した敵ではない。

 

 群れをなして襲ってきたビッグビッグフットはアンバーがかいおう丸で叩き潰し、そこに混じっていたビッグフットゴーレムの堅いボディもミュールがヒヒイロカネの二刀小太刀でバターのように切り裂いた。

 

 お得意の石の流体道路を使ってしんしんと雪の降る常雪の雪原を突っ切った俺達は、再び狭間(はざま)平原を経由して次なる異界に突入する。

 

 砂利(じゃり)の堆積した湖畔(こはん)から周囲を見渡すと、透き通るように清らかな美しい湖の中央辺りに小さな孤島が浮かんでいた。

 この異界は見たまんま、孤島湖畔(こはん)と名付けられている。

 

 ここには全身毒まみれで食用不可のデスポイズンキャンサーというカニと、背中に水草を生やして擬態しているプラントアリゲーターというワニの魔物が出現する。

 

 次の階層に繋がるゲートはあの浮島の上にあるのだが、下手に船で渡ろうとするとプラントアリゲーターに水中に引き込まれてデスロールの餌食だ。

 

 プロテクションと水上バイクで渡ってもいいっちゃいいが、せっかくなので今回はミュールの忍者ハヤテ号で三往復することにした。

 距離も近いので気を付けていればダンジョンに飲まれる心配はないだろう。

 

 まずは俺とアンバーが乗り込み、低空飛行で浮島の上までやってきたところで飛び降りる。

 アンバーはそのまま、俺はプロテクションをゴムボールみたいにして着地した。

 

 アンバーが湖から上がってきたプラントアリゲーターをいかずち丸でしばいている間に、俺はゲートの近くに石の流体で安全地帯の高台とヘリポートを作っておく。

 

 このサイズだと分割してもすぐにダンジョンに吸収されるだろうが、使った魔力はミスリルの首飾りの力でいずれ回復するから問題ない。

 

 対岸に戻ったミュールがアイリスとメリーベルを運び、最後にディヴレス(とても狭そうだった)を乗せた小型プロペラ飛行機がヘリポートに着陸して輸送は完了だ。

 

 既に移動が非常に面倒なダンジョンだということは十分に伝わっているとは思うが、次からはもっと大変なことになるので乞うご期待。

 

 

 石の高台の上で二度と見られなくなる美しい湖を眺めながら小休止—―早めのお昼休憩とメリーベルの筋肉痛治療――をした俺達は、アイリスの展開したプロテクションに守られながら三層へ続くゲートに飛び込んだ。

 

 ゲートの向こう側はむわりとした湿気った空気が漂う薄暗いジャングルの中だ。

 生い茂った草むらを踏みしめて周囲を警戒するように見渡すと、生理的嫌悪感を催す耳障りな羽音が幾重(いくえ)にも重なって近付いてきた。

 

「うえぇ、最悪ですぅ……」

 

 メリーベルはたまらず両手で耳を塞いでしゃがみこんだ。

 半透明の青い障壁の外側には、赤子よりも大きい蚊――ジャイアントモスキートが蚊柱を作って(たか)っていたのだ。

 

 ここはハイランド迷宮三層、群蟲(ぐんちゅう)熱帯林。

 木陰にはラフレシアみたいな花が咲いて悪臭を漂わせているし、ハーフリングくらいならそのまま食べられそうな食虫植物にはでかいGが捕えられている。

 

 虫型の魔物は厄介さの割に落とす魔石がショボいので探索者には嫌煙されることが多いが……こういう悪環境の異界にゲートがあるようなダンジョンのダンジョンマスターになんて、よほどのことが無ければ誰もなりたがらないに決まっているよな。

 

「待ってて、今調整するから……」

 

 アイリスは意識を集中すると、プロテクションの拒絶対象を変更して一切の音を通さないようにした。

 普段から魔導スキルを使い慣れていないと、こういう時に時間が掛かるのだ。

 

「よかったぁ、聞こえなくなった!」

「うんうん、これでいいかなー。じゃあ、先に進もっか」

 

 その間、アンバーはたわわに実ったドリアンみたいな果実に手を伸ばすミュールの服を引っ張って制止していた。

 

「ミュールよ、ここらの植物には毒があるものが多いと聞くから気を付けるのじゃ」

「うにゃあ~、あちしのおやつが~」

「おやつは先ほど食べたばかりじゃろう。ほれ、行くぞ」

 

 俺達は前方に草を押し潰すローラーを追加した石の流体道路バージョン2を活用して、ジャングルの中をひたすらに直進することで群蟲(ぐんちゅう)熱帯林を突破した。

 

 こうやって石の流体を操っていると、魔力の繋がりで草木と一緒に巻き込んで潰した虫の感触まで分かっちゃうんだよな……。

 帰りもここを通るのかと思うと気が滅入ってしまう。

 

 

 三層の狭間(はざま)平原を抜けて次にやってきたのは高い岩壁のそそり立つ荒々しい岩山、怪鳥岩稜(かいちょうがんりょう)だ。

 

 ここの山頂に四層へ続くゲートが口を開いているわけだけど、空を飛んでやってくる数多の魔物と戦いながら脆く崩れやすい岩山を登るのは困難極まる。

 

 どうやって俺達はこの難所を攻略するつもりなのか。

 それは当然、俺の土属性スキルを存分に活用するのだ。

 

 まず、石材で頑丈な5m四方の床を作る。

 その下に更に大きな石の流体を重ね、岩壁に|沿ってゆっくりと浮上させる。

 魔力に物を言わせた力技だが、簡易的な人力魔道エレベーターの完成だ。

 

「いっくよー、スーパーマナバレットガトリング!」

 

 あちこちに築かれた巣から飛び出した鳥型の魔物を、アイリスが石の床に設置した機銃型の魔杖(まじょう)から放った魔弾の弾幕で片っ端から撃ち落としていく。

 実のところ、彼女がダンジョンに潜るのは昔のパワーレベリング以来だ。

 

 火力自体は控えめなので、小物はやれるが大物は弾幕を無視して突撃してくる。

 中でも特に厄介なのが高速回転する細長いクチバチを持つでっかいハチドリみたいなドリルバード……プロテクションの天敵とも呼ばれる一点突破型の魔物だ。

 

 絶対防御とも言えるプロテクションにも弱点はある。

 それが術者ごと吹き飛ばす大質量の突進攻撃や、こいつみたいな貫通攻撃だ。

 そんな時に活躍するのが今まで空気になっていたタンクのディヴレスである。

 

「ワイドタウント!」

 

 足場の端に立ったディヴレスが身の丈ほどもある大盾を構えて挑発スキルを発動すると、青く輝いた大盾に引き寄せられるようにドリルバードのクチバシ攻撃が突き刺さった。

 

 キュイーンと火花を散らしながら、歯医者でしか聞いたことがないような鋭い高音が周囲に響き渡る。

 

「今です、お嬢様!」

 

 メリーベルが構えた魔弓の弦を大きく引くと、青く輝く魔力の矢が生成された。

 

「えいっ!」

 

 放たれた矢がぎゅんと上からホーミングしてドリルバードの背中を貫いた。

 ここまで百発百中、お見事な腕前だ。

 

「やったっ、レベルアップだぁ!」

「メリーベルよ、気を抜くでない!」

 

 磁石みたいに引き寄せられた鳥が(たか)っている大盾の向こうから抜けてくる魔物がいないか常に警戒しているアンバーに注意されたメリーベルは、ハッとして弓を構え直した。

 

「わ、分かってますよぉ! えいっ、やあっ!」

 

 みんなが頑張って魔物と戦っている間、俺は壁際にしゃがみ込んでミュールに守られながら足場の維持に集中していた。

 

 人を乗せてこんなに空高く飛ぶのは初めてのことなので、土属性スキルのスペシャリストを自負する俺も流石に緊張を隠せていなかった。

 高度は既に100mを突破しているが、見上げた岩壁にはまだまだ先があった。

 

「この分だと天井まで届きそうだ……」

 

 実際に到着してみると、岩山の頂上は空に擬態したダンジョンの内殻に背伸びした手で触れるような高度に位置していた。

 三層に存在するすべての異界を見渡すことができるほどに高い場所だ。

 

 大昔にこのダンジョンを調査した探索者――ギース海賊団には頭が上がらないな。

 遠い東大陸に住むギースに想いを()せつつ、俺達は四層に続くゲートに飛び込んだのだった。

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