マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第246話 ハイランドの世界樹

 巨刃岩の頂上から自由落下した楕円形のUFOみたいな宇宙船—―超小型ジェット飛行機スペースネフライト号は俺達がさっき倒したメタルグラドロンの消滅跡の中にふわっと着陸した。

 

 俺は大きな足跡の中に転がっていたスイカサイズの大きな魔石を、念動スキルでクンッと引き寄せた。

 器用さ補正で射程が伸びるとこんなに楽なのか、こいつは癖になりそうだ。

 

 引き寄せられた魔石は最後部座席のディヴレスが両手でガシッとキャッチし、すぐ後ろにあった魔石タンクの蓋を開けて中に放り込んだ。

 バタンと勢いよく蓋を閉めると、ガチャリと音が鳴ってロックが掛かる。

 

「これでよろしいでしょう。ミュール殿!」

「すぐに出発するにゃ!」

 

 ホバークラフト機構でふわっと浮かび上がった宇宙船は、背部に備え付けられた二基の魔道ジェットエンジンを点火させて急発進した。

 

 そのまま勢いよく目の前の木立ちに突っ込むが、既に展開されていた俺のプロテクションで強引に突破して異界の上空へと飛び出す。

 

「ミュール、ゲートの位置は分かっているか!」

「余裕も余裕、目印があって助かるくらいにゃ!」

 

 異界の中心から太く成長しながら伸び上がる翡翠色の(つる)の横をすり抜けた宇宙船は、移動を始めてから1分を数える前に三層へと繋がるゲートの上空まで辿り着いた。

 

「勢い余って天井にぶつかるでないぞ!」

「あちしを誰だと思っているにゃ!」

 

 ミュールは操縦桿を操作して魔道ジェットエンジンを切ると、エアブレーキで減速しながら直径10mもないゲートに向かって頭から突っ込んでいく。

 

「ひゃあぁぁぁ~!?」

 

 ゲートを潜って視界が切り変わった瞬間に、グインと天地が逆転した。

 それを俺が認識した瞬間、逆さの宇宙船は再び点火した魔道ジェットエンジンの力で空に擬態したダンジョンの内殻に沿って駆け抜ける。

 

 戦艦サメのかみ砕き攻撃さえ耐える強靭無敵なプロテクションバリアで怪鳥岩稜(かいちょうがんりょう)の魔物達を()き潰しながらグルンと180度回転すると、正常な状態に戻った宇宙船は三層の上空を高速で飛翔し始めた。

 

「ハルト、酔ってないかにゃ?」

「問題ない、生命力Dは偉大だー!」

 

 今の状態ならアクアマジャイアントランドのジェットコースターも楽しめそうだ。

 アクアマリンに帰ったらアンバーと一緒にリベンジしよう。

 

「し、心臓に悪いですよぉ~……」

「一番の難関は越えたのじゃ。後は追いつかれぬように祈るだけじゃな」

「そうだねー。でも、わたしが思っていたよりもずっと成長が早いみたい」

 

 両手に持った一眼レフカメラを構えたアイリスは、三層の狭間(はざま)平原の中心地からぴょこりと頭を出した世界樹の(つる)をパシャリと撮影した。

 

「成長が早いにも程があるわ……」

「記録ではAランクダンジョンに植えた世界樹の種子は徒歩で悠々と脱出できる程度の成長速度だったそうだけど、やっぱり五層の環境が良かったみたいだねー」

「どうでもいいけど、もうすぐ二層にゃ」

 

 徒歩で歩けば迷うこと間違いなしな群蟲(ぐんちゅう)熱帯林のジャングルも、木の一切生えていないゲート付近だけは上空から見たら丸分かりである。

 

「ま、またやるんですかぁ~!?」

「今度はもっと凄いから期待しているといいにゃ!」

「ひぃ~!」

 

 ゲートのサイズはさっきよりも大きいのでミュールの腕なら楽勝だ。

 今度は一切の減速をせずに突っ込み、二層の浮島湖畔(こはん)に飛び出した。

 

 宇宙船はそのままの流れで雪の降り続ける大足(おおあし)雪原まで飛行し、ゲートから一層の飛鼠(とびねずみ)の森へ。

 最後は狭間(はざま)平原のダンジョンゲートから現実世界に脱出だ。

 

 ビュンと勢いよく飛び出した宇宙船に乗る俺達の目が、天からギラギラと照りつける正午の太陽光を直視する。

 

「うおっ、眩しっ!」

 

 俺は思わず腕で目元を隠した。

 

「お主ら、アレを見てみよ!」

「うわぁー、凄い凄い!」

 

 高速飛行を終えてゆっくりと城壁の上空を周回する宇宙船から眼下を見降ろすと、ダンジョンゲートから伸びた翡翠色の(つる)がぐるぐると巻き上がっていく様子が目に入った。

 

 ミチミチと音を立てて太さを増していく世界樹の(つる)は、直径30mはあるダンジョンゲートを飲み込む太さになるとついに成長を止めた。

 その代わりに無数の(つる)が融合して幹になり、横から枝葉がもっさりと生える。

 

「あちしらのよく知っている世界樹になったにゃ!」

「ほへぇ~……」

「アイリス、世界樹が成木になるまで1000年くらいは掛かるって言ってなかった? 1000秒の間違いじゃないかと疑うレベルだぞ」

 

 アイリスはタイミング良くフィルムの切れた一眼レフカメラを下ろすと、うーんと考えてから答えた。

 

「成長が止まったのは魔力を吸い尽くされたダンジョンが枯れたからだと思う。ハルトくんも思い出してみて、アバロンの世界樹はもっと幹が太かったでしょ?」

「言われてみれば、確かに……」

 

 アバロンの世界樹は古代遺跡が丸々入るくらいには太かった記憶がある。

 これよりも一回り、いや二回りくらいは大きいか。

 

「もう下ろしていいかにゃ?」

「うん、大丈夫だよー」

 

 アイリス教授の許可が出たので、ホバークラフト機構を発動した宇宙船は世界樹の前にふわっと着陸した。

 俺達はシートベルトと安全帯を外して母なる大地に降り立つ。

 

「最初はどうなることかと思ったが、何とかなったな」

「この飛行機が無ければ、今頃わしらは次元の狭間(はざま)を漂流していたところじゃ。アイリスと天文学科に感謝じゃな」

 

 スペースネフライト号は魔道学院の天文学科が試験開発した機体をアイリスが五層探索用に魔改造したものだ。

 

 ブルームーンを目指すなら主要動力は魔石燃料の要らないミスリル発魔機にするべきだから、仮にこの機体を使うようなことがあったとしても艦載機のような扱いになるだろう。

 

「幹を掘ったらすぐに出られると思うけどにゃー」

「こやつはまだ若木じゃから掘って平気かどうか分からんじゃろう。もしも枯れてしまったらわしらの苦労が水の泡じゃ」

「それもそうにゃ」

 

 元気満々な俺達と違い、メリーベルだけは最後部座席にうつ伏せで寝っ転がりぐだーっとなっていた。

 

「ベルはもう死ぬかと思ったよぉ~……」

「無事に王族のお役目を果たされたお嬢様の雄姿、このディヴレスがしかと見届けさせて頂きました。きっとプロテア様もお喜びになられるでしょう」

「じゃあじゃあ、後1000年は休んでいい?」

「そうしたいのはやまやまですが、その前に私のお迎えがやってきてしまいます」

「うぅ、爺やが死んだらベル生きていけないよぉ~」

 

 メリーベル623歳

 配偶者 なし

 子供 なし

 生活能力 なし

 

 ……嫌な未来予想図が見えてしまった。

 いやいや、メリーベルにはちゃんとした (?)同人作家になって貰うから。

 手に職さえあれば引きこもりでも社会的地位は守られると信じたい。

 

「ハルトよ、そろそろ戻ってもええ頃じゃないか?」

「そう言えばそうだな」

 

 シュルシュルと成長してジョニー・〇ップ似のイケメン(注:三枚目の意)に変わった俺を見て、アイリスはちょっと残念そうな顔をした。

 

「ハルトくんが大人になっちゃった。子供の時はあんなに可愛かったのになー」

「言っておくけど、アレはただの種族補正だぞ」

 

 木陰から出た俺は宇宙服の右手に握り込まれたハーフリングオーブを太陽にかざしてみた。

 これは竜人族(マムクート)の竜石が元になっているらしいが……綺麗なもんだな。

 

「それはあちしが見つけたのにゃ! 返して欲しいにゃ!」

「確かに見つけたのはミュールだもんな」

 

 俺がミュールに返そうとすると、アンバーが間に立って制止した。

 

「駄目じゃ。お主は二束三文で売っぱらうつもりじゃろう」

「二束三文で売るつもりなんて絶対にないにゃ。あちしの忍者ハヤテ号の(いしずえ)になって貰うんだからにゃ」

「アクアマリンに帰ったらわしらは探索者を引退するのじゃぞ。いずれは子供もできよう、高価なオモチャはいい加減に卒業するのじゃ」

「ムムム……」

「ぬぬぬ……」

 

 アンバーとミュールはにらみ合いを始めてしまった。

 こういう場合の俺はアンバーの肩を持つこと以外考えられないので、ハーフリングオーブはそっとポーチの奥底に隠すことにする。

 

 俺達がそんなことをしている間に、メリーベル城建設予定地の方から軍人エルフ達が続々とやってきた。

 計画の成功が目に見えて分かったのか、彼らはとても嬉しそうな様子だ。

 

「皆様、ご無事で何よりです!」

「我々の悲願を……よくぞ、よくぞやってくれました……!」

「ああ、また延々とマジックポーションを作る生活が始まるのか……」

 

 一人だけ世界樹の若木を見上げて絶望している軍人エルフがいるような気もするが、それはきっと気のせいだろう。

 

「ところでハルトさん、徹夜でゲートの番をしていたはずのバジル隊長はどこに行かれたのですか?」

「どこって……」

 

 モブ顔の軍人エルフに尋ねられた俺達はハッとして周囲を見渡した。

 低い柵で囲われただだっ広い中庭にはスペースネフライト号の他には何もない。

 

「困ったのう、どこにもおらんぞ」

「まさか、バジルはダンジョンの中で……」

 

 最悪の展開が頭をよぎる。

 ようやく大団円で終わったと思ったのに……!

 

『……ぅぉ~ぃ……』

「今、何か聞こえなかったか?」

「そうか? わしは何も聞こえんかったが」

「わたしも聞こえなかった。ミュールちゃんは?」

「聞いてなかったにゃ」

 

 小腹が空いたのか、ミュールは手に持った小袋に入ったドライイツカデーツをむしゃむしゃ食べることに夢中だった。

 いや、ただのやけ食いかもしれない。

 

『……たすけてくれぇ~……』

「あっ、今度は聞こえたにゃ」

 

 ぴくりと猫耳を動かしたミュールはくるりと振り返って世界樹の若木を見上げた。

 俺達が彼女の視線を追うと……なんと世界樹の枝に巻き込まれるように埋まったバジルの腕が葉っぱの陰から生えているではないか!

 

 近くの枝の上にはどこから現れたのか、白い芋虫のギリーオームまでいる。

 いや、マジでどこから現れたんだ!?

 

「た、隊長ー!」

「今助けますから、絶対に動かないでください!」

 

 軍人エルフ達は慌ててバジルの救出に動き出したのであった。

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