マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第257話 猫娘はクールに去る

 意気消沈したままアンバーの肩に担がれたミュールを連れて、俺達は景品交換所に向かった。

 最終レースの後ということもあって、景品交換所には長蛇の列が作られている。

 

「うーん、出遅れた。まだちょびハヤテグッズは残っているかな?」

「少なくとも、シバトラダオグッズは瞬殺のようじゃ」

 

 俺は採算度外視で荒れそうなレースに全賭けしていたので、グッズを一通りは交換できるだけの勝ちハム券を持っている。

 ギース記念はどうだって? シバトラダオに賭けたに決まっているじゃん。

 

「次のお客様ー」

 

 それから20分ほどで俺の番が回ってきた。

 棚にはまだちょびハヤテグッズが残っているようで一安心だ。

 

「グッズの交換をお願いします」

 

 俺が「GUNSHIネフィリム」の会員証(入場時に登録した)と勝ちハム券の束を差し出すと、受付のお姉さんは端末に通した会員証に手慣れた感じでハムコインをチャージした。

 

「グッズはどちらになさいますか?」

「ビッグちょびハヤテぬいぐるみ防水タイプを1つ、ちょびハヤテぬいぐるみセットを1つ、それとちょびハヤテフィギュアに――」

 

 恐らく二度とここにはこないので、ハムコインは全部使い切ることにする。

 ゲーセン1ヵ月分くらいの資金を1日で浪費した俺は、手に入れた大量のハムマングッズをポーチに詰め込んだ。

 

 ハムマン祭りのハムマンバトルトーナメントとは一味違って楽しかったし、いつかアクアマリンにも競ハム場ができたら嬉しいな。

 まぁ、できるとしても海都カナンの方が先になりそうな感じがするが……。

 

「ほら、ミュールの分。大事にしろよ」

 

 夕暮れに赤く染まるアミューズメントパークの敷地内を歩きながら、俺は未だアンバーに担がれているミュールに普通のちょびハヤテぬいぐるみを差し出した。

 

「ちょびハヤテ……来年こそはリベンジするのにゃ……」

 

 ミュールはちょびハヤテぬいぐるみをむぎゅむぎゅしながらリベンジを誓った。

 

「もし……」

「ん?」

 

 背後から声を掛けられたので振り返ると、そこには肩にちょんまげ柄のハムマンを乗せたラミアのマダムが立っていた。

 誰かと思えば、さっきパドックで見たちょびハヤテのオーナーじゃないか。

 

「ミュールさんとおっしゃいましたか……。どうしても貴女(あなた)にお礼が言いたくて、つい探してしまいました」

 

 アンバーの肩から脱出したミュールはシュタっと地面に降り立った。

 

「気にする必要なんてないにゃ。あちしの相棒と同じ名前をしていたから応援しただけだからにゃ」

「それでも、貴女(あなた)の声援がちょびハヤテに力を与えたのは事実です。そうでなければ、この子がギース記念で二着になんてなれようはずが……」

 

 ミュールは腕を伸ばして指先でちょびハヤテの額を()でた。

 ちょびハヤテは嬉しそうにキューキュー鳴いている。

 

「ちょびハヤテはもっともっと強くなるにゃ。それを飼い主のオマエが信じてやらないでどうするのにゃ?」

「それは……そうですね。私はこの子のことを全然分かっていなかったみたいです」

 

 ちょっと照れた感じで、ラミアのマダムが頬を緩ませた。

 

「あちしはアクアマリンに住んでいるにゃ。ここにはもうこられないけど、いつか優勝したら写真を送って欲しいにゃ」

「ええ、いつか必ず……」

「その意気にゃ。あちしは腹が減ったからもう行くにゃー」

 

 そう言って、くるりと背を向けたミュールは手を振りながら歩き出した。

 

「すいませんね、変な子で」

 

 俺達は軽くぺこりとラミアのマダムに頭を下げると、クールに去っていくミュールの背中を追い掛けたのだった。

 

 

 それからのことについて。

 アミューズメントパーク「GUNSHIネフィリム」を退園した俺達は、アンバーおすすめの老舗焼き肉屋ゴローで残念会を開いた。

 

 この焼き肉屋はネフィリム第5ダンジョン三層の異界、闘牛草原に出現するバトルバッファローの肉が提供される唯一の店だ。

 

 安全保障上の問題で深層の魔物を生け捕りにするようなことは中央大陸では行われていないのだが、ジャイアント氏族にとっては大した問題ではないらしい。

 

 爆乳ミノタウロスの店員さん(素晴らしい店だ)に案内して貰ったボックス席近くの壁に貼られていたポスターには、専属のジャイアント業者が宝珠建材のショートカットと滑車を使った人力エレベーターで輸送している写真も写っている。

 

 肉質は結構固めのようだが、注文からほどなくして届いたバトルバッファロー肉はどの部位も丁度いい感じに食べやすい薄さにスライスされていた。

 炭火でサッと焼いて特製タレに潜らせるだけで、ご飯がいくらでも進んじゃう。

 

 日本じゃ違法な生レバーやユッケもどんとこい。

 魔獣化してすぐに精肉工場で屠殺(とさつ)するから、とっても新鮮な牛肉だ。

 まぁ、解毒の魔杖(まじょう)があるから大抵の店は大丈夫なんだけどね。

 

 ミュールが満足するまで焼肉食べ放題を楽しんだら、次はクロミノ劇場に行って風花歌劇団の夜公演を鑑賞する。

 一般席のチケットは売り切れていたので、富裕層向けのお高い特別席だ。

 

 アンバーによると20年前は8年戦争を題材にした演劇をしていたそうだが、ここ最近はムーンサイド事変を題材にしたミュージカルに力を入れているらしい。

 

 華やかな魔道スキルを使った演出にも凝っていて、なかなかに面白い。

 サクレアに(ふん)した美人ハーピィの熱演には思わず拳に力が入るほどだった。

 この迫力と臨場感は映画のような映像だけでは体験できないだろう。

 

 夜の公演が終わったら出口の売店でサイン入りの限定パンフレットをお布施代わりに買って、それから予約していたリゾートホテルで宿泊する。

 

 コリウスは好きなだけ泊まっても大丈夫と言ってくれてはいたんだけどね。

 何日もネフライト大使館にお世話になるのはどうかと思う……というのは建前で、ホテルなら誰にも気兼ねせずお楽しみができるから固辞してこちらを選んだ。

 

 その翌日は休養日に充てて、ホテルでのんびりとした時間を過ごす。

 特に何かイベントがあったわけではないが、しいて言うなら近場のグンシモールで買い物をしたくらいか。

 

 小人特区のダンジョンには目ぼしい異界もないし、それなりに美味しい深層の異界はこの街の上級探索者でキャパオーバーしているから外様(とざま)が入り込む隙間はない。

 もう十分にネフィリムの娯楽は堪能したし、さっさと次の街に行くとしよう。

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