マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第261話 迷宮都市イクリプス

 翌日、朝早くに目覚めた俺がカーテンを開けると窓の外の天気は生憎の雨だった。

 キャバクラでミルクちゃんの爆乳おっぱいを楽しんで溜まったやる気メーターがシューン……と音を立ててみるみるうちに減っていく。

 

「このスコールの中、ずっとバスの上で見張りかぁ……」

 

 レインコートも大して効果を発揮できないだろうし、今日は探索者服の下にスウェットスーツを着ていくか。

 俺がサイドテーブルの上のポーチを漁っていると、アンバーが起き出してきた。

 

「ハルト、何をしておるのじゃ?」

「おはようアンバー。外の天気がちょっとね……」

 

 窓の外を見たアンバーは、得心がいったように頷いた。

 

「なるほどのう。今日は水着デーじゃな」

 

 どうやらこの辺りではよくあることらしい。

 俺はアンバーと一緒にビジネスホテルの狭いバスルームで朝風呂に入った後、ミュールとアイリスを起こして1階の食堂でビジホらしい朝食を取った。

 

 探索者服を着るのは諦めて、スウェットスーツにベルトでポーチを着けた状態だ。

 アンバーとミュールもスク水に着替えており、アイリスは当然そのままである。

 

 

 朝の7時半にビジネスホテルをチェックアウトした俺達は、すぐ近くにある探索者ギルドの駐車場へと足を運んだ。

 

「イクリプス行きのキャラバンはこちらでーす!」

 

 バリアで雨から身を守りながら空中でふわふわと浮かんで元気に声を張り上げるモブ天使の呼び掛けに従い、建物付近の雨避けの下に作られた行列の後ろに並ぶ。

 

「Bランク探索者パーティー『こん棒愛好会』の皆様には、あちらの2号バスを担当して貰います」

「昨日の3号バスではなく、2号バスですか?」

「2号バスを担当していたCランク探索者パーティー『ライジンステップ』ですが、先ほどキャンセルの連絡がありました」

「そうですか……分かりました」

 

 イクリプスの北にある故郷に帰省すると言っていた若い男4人探索者パーティーは、たった一晩でこの街に骨を埋めることを決めたらしい。

 ネイルズの夜って怖いね。

 

 これで探索者ギルドの運営するキャラバンバスの護衛枠に1パーティー分の穴が開いたが、その穴埋めは乗務員の天使がしてくれるので何も問題はない。

 ぶっちゃけ護衛戦力は企業の装甲トラックだけで十分に足りているしな。

 

 それでも将来を見越して探索者に護衛の経験を積ませる必要はあるから、探索者ギルドはキャラバンバスの護衛クエストを発行しているわけだ。

 

 俺達はバスの運転手をしているハーフリングのおっさんに挨拶をして(ハイランド出身のアンバーの親戚だった)、それから装甲バスの見張り台に上がった。

 激しい雨に打たれてビシャビシャだが、水着のおかげで寒くないので我慢しよう。

 

 午前8時、定刻通りに2台の装甲バスと9台の装甲トラックは駐車場から出発した。

 3号バスは……乗客の乗り遅れと定員割れにより運休だ。

 モブ天使による穴埋めは不要になったようである。

 

 雨の影響で車の通りが少ない大通りを走って市街地を出たキャラバンは、畑の中の道路を進んで北の城門からネイルズの外に乗り出した。

 

 ジャングルを抜けるまでに8回、魔獣の襲撃を受けたが難なく撃退。

 途中で2つの迷宮都市を経由して(そこで休憩を挟んだ)、夕方にはジャングルのそばにある迷宮都市グラーチェに到着した。

 

 グラーチェはBランクダンジョンを抱える特筆すべきことのない普通の街だ。

 アンバーの好きなカレー屋が閉店していたのがちょっぴり残念だったくらいか。

 まぁ、20年も経てば街並みが変わってしまうのも仕方がない。

 

 その日もビジホで一泊した俺達は、翌朝8時から再び旅の途上へ。

 昨日とは打って変わってからりと晴れた空に気分も上がりつつ、キャラバンは青々とした丘陵(きゅうりょう)地帯を東の方角に駆け抜ける。

 

「イクリプスが見えてきたにゃ!」

 

 走り続けること半日。

 ミュールが指差した先、丘陵地帯のど真ん中に巨大なクレーターが見えてきた。

 

「アレが……」

「そうじゃ、アレがイクリプスじゃ。聖都のでっかい版みたいじゃろう?」

「写真で見た時はそうでもなかったけど、現物はとんでもないスケールだねー」

 

 クレーターの内に林立するのは数多の高層建築物、中心部に高く浮かんでいるのは大きな浮島だ。

 

 空中に口を開いたダンジョンゲートの縁を基礎にするという、ダンジョンの死を計算外に入れている危ない浮島の中心に建つ神殿のような巨大な建物こそ、この世界を事実上支配している探索者ギルドの本部である。

 

 西の入口から街中に入ったキャラバンはちょっと未来的な風格のある摩天楼の中を進み、イクリプスの中心地(浮島の真下は公園になっていた)までやってきた。

 

 公園のそばにある役所みたいな建物の近くの駐車場に止まったバスから、ぞろぞろと乗客が降りていく。

 

 ずっと椅子に座って凝り固まった身体をほぐす為に伸びをしたりしている彼らに、乗務員のモブ天使が大きな声で呼び掛ける。

 

「皆様、長旅お疲れ様でしたー! 乗り継ぎにはまた手続きが必要となりますので、早めに探索者ギルドまで顔を出してくださいねー!」

 

 これで俺達の護衛クエストもおしまいだ。

 仕事を終えた俺達は、装甲バスの上から降りて役所っぽい見た目のイクリプス探索者ギルドに入る。

 

 広いロビーのど真ん中には、30mはあろうかという巨大なミスリルの隕石が展示されていた。

 これはアザゼルの聖都襲撃事件の後に聖都ブルームーンから回収されたものだ。

 

 早速、観光客がベタベタと素手で触ったり自撮りしたりしている。

 俺達はそこまで興味ないのでスルーするけどね。

 

「キャラバンの護衛クエストが終わったのじゃ」

 

 アンバーは受付にいる天使の職員さんに声を掛けた。

 

「はい、護衛クエストですね。……はい、これで手続きは終了しました。こちらが明細書になります。他に何かご用件はありますか?」

「アイリス……後ろのダークエルフを除いた、3人のAランク昇格試験を受けたいのじゃが、よいかのう」

「はい、もちろん構いませんよ」

 

 俺達はカウンターに置かれた申請書類にちゃっちゃとサインをすると、東行きのキャラバンへの参加登録をしてから探索者ギルドを後にした。

 

「昇格試験まで結構時間があるみたいだけど、それまで何をしようか」

 

 俺達のAランク昇格試験は5日後の昼に行われる。

 隣の迷宮都市行きのキャラバンは7日後だ。

 護衛枠は既に埋まっていたが、逆に一般枠が空いていたので楽できるだろう。

 

「ここまで結構急ぎ足だったし、しばらくはのんびり過ごしたいかなー」

「わしもアイリスの意見に賛成じゃ」

「あちしはこの街のグルメを制覇したいにゃ」

「じゃあ、ひとまずはそういうことで……」

 

 探索者ギルドで貰った観光ガイドブック「みるだむ イクリプス」を片手に街中を歩いているが、どこを見ても天使しかいない。

 流石は天使による天使の為の天使の街だ。

 

 それから俺達は旅行者向けの高級ホテル「ARC ENGEL」にチェックインした。

 このホテルはかつて「GREGOLY HOTEL」でシェフをしていた天使が経営しているらしい。

 

 宿泊料もスイートルームが1部屋5000メルほどと、三ツ星ホテルにしてはリーズナブルで有難いことだ。

 

 俺達は美しい内装の広いバスルームで旅の汗を流し、ホテル内のレストランに行って優雅なディナーを頂くことにした。

 

 確かに美味しい、美味しいが……そのお値段はお財布に非常に厳しかった。

 シェフのこだわりフルコースで一人頭1万メルも取られたぞ。

 しかもメニュー表を見た感じ、朝食も似たような料金設定だ。

 

 いやいや、いくらなんでも高すぎるだろう。

 ジャイアントだけは特別料金みたいだが、ミュールみたいなお代わりをするタイプの腹ペコさんには向いていないレストランのようだ。

 

 今後の日程を思い浮かべて頭の中で算盤(そろばん)を弾いた俺は、明日からバイキングビュッフェのある別のホテルに移ることを心に決めたのだった……。

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