マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第270話 クレセント大橋

 俺達の旅はとても順調に進んだ。

 ……やたらとワイバーンに襲われることだけを除いてだが。

 

 他の車が近くを走っていても、そちらには一切目もくれずに俺達のハムカーばかりを狙ってくるんだよな。

 まぁ、無敵のプロテクションバリアがあるから大丈夫なんだけどさ。

 

 旅慣れしているアンバーは何故そのようになっているのかと首を傾げていた。

 ワイバーンどもの棲み処はここから北にある山らしいから直近のスタンピードとは特に関係がないみたいだし、一体どういうことなのだろうか。

 

 それなりに貴重な魔獣素材が集まるのはいいけど、この調子で狩っていては生態系への影響が心配されるし、道草を食ってばかりで街に到着するのが遅れたらスケジュールにも遅延が出る。

 

 俺はハムカーを運転しながら、どうしたものかと頭を悩ませた。

 

 この謎の高エンカウント問題は、次の前線都市の都市部を走っている時にミュールが放った「あっちでハムマン饅頭売ってるにゃ、美味そうだにゃー」という発言がきっかけで解消することになった。

 

「俺はとんでもない過ちを(おか)していたかもしれない」

「どういうことじゃ?」

「いや、それを語るのはまだ早い……」

 

 翌日、試しにハムカーのデザインを迷彩仕様に変更するとどうだ、まったくと言っていいほどワイバーンに襲われなくなったではないか。

 

 どうやらPUIPUIと道路を爆走するハムカーは、遠くからだと美味しそうなハムマンに見えていたらしい。

 よくも騙したなとばかりに、腹いせに襲い掛かってきていたわけだな。

 

 ディオゲネス山道を走っている時はそんなことはなかったんだけど、あの北の山に住むワイバーン達にとっては違ったようだ。

 

 彼らの被食者にされているであろうハムマンがどんな姿をしているかは興味があったが、見つけたら保護したくなっちゃいそうなので調査に行くのは諦めた。

 そもそも、もう寄り道はしないって話だしな。

 

 俺はハムマン愛好家の端くれであっても、ギースのようなハムマン狂いではない。

 だから休憩所で休んでいる時に野生のハムマンを見掛けたとしても、写真を撮ってほんのちょっと()でるだけで我慢するのである。

 

 

 立ち寄った前線都市を襲った小規模なスタンピードで2日ばかり拘束(人手は余っていたのでアンバー達と前線基地で待機しているだけだった)されたりもしたが、それ以外にはこれといってトラブルも起こらず、俺達は西大陸の東端に辿り着いた。

 

 高い丘から望むのは三日月の形をした半島、その湾口部に存在する広大な港街。

 そこは中央大陸からやってきた旅人が必ず通る西大陸の玄関口、その名も湾港都市クレセント。

 

「この特徴的なクレセント半島の地形はね、2万年前に起きたダンジョンアポカリプスによってできたんだよ」

「ほーん、イクリプスと一緒なのかにゃ」

「うん、この辺りの海中にはマーメイドとは違う魚人種の古代遺跡がいくつもあるんだよねー。一説では、彼らの絶滅の原因になったのがクレセント半島のダンジョンアポカリプスとも言われているよ」

 

 アイリス教授の解説をラジオ代わりに走るのは、クレセント半島の先端からブルームーン海峡を挟んで向こう側の中央大陸へと接続するクレセント大橋だ。

 

 クレセント大橋は探索者ギルドが大資本を投じ100年の時を掛けて築き上げた世界最大最長の橋で、総距離はなんと33.333kmもある。

 その横幅は魔道列車の路線を2本通して、まだ半分以上の余裕があるほどだ。

 

 アザゼルの聖都襲撃事件と同時期に施工が始まったこの大橋は、恐ろしいことにこの惑星のプレートテクニクスまで考慮に入れられた設計となっている。

 まさしく、天才建築家ベリアルの置き土産と呼ぶに相応しい芸術的建造物だ。

 

 世界中の人々から愛されている西大陸と中央大陸を繋ぐこの大きな架け橋は、現行の人類文明が滅ぶまでなくなることは決してないだろう。

 

 

 クレセント大橋を渡った俺達は、対岸の交易都市マーレまでやってきた。

 この地にはかつてマーレ王国と呼ばれる小国が存在していたが、ややあって月光教の直轄地の一つになり、現在は探索者ギルドの管理下に置かれている。

 

 西大陸との交流を活発化させる為に関連企業に対して免税措置を行ったりしているそうで、交易都市マーレは海都カナンや国境の街ユーストとはまた一味違った大都市に発展していた。

 

 昨日クレセントを観光した時にも似たような光景を見たが、海沿いの漁港ではブルームーン海峡で水揚げされた多種多様な魚介類が競りに掛けられている。

 どいつもこいつも見上げるほどのビッグサイズで、距離感がバグってしまう。

 

 競りで売っているのはマーメイドの探索者パーティーと専属契約をした漁師だな。

 海流の激しい海の中で悠長に解体してマジックバッグに入れるなんてできっこないので、頑丈なロープで上手いこと海上まで引き上げて大きな船で陸地まで運ぶのだ。

 

 漁港を一通り見て回った俺達は、市場近くの商店街にある老舗の食堂で海鮮丼をたらふく頂いた。

 エクレアがお勧めするだけあって、2時間半並んだだけの価値がある美味い店だ。

 

 腹ごなしにグンシモールマーレ店でショッピングをしたりなんかして、日が暮れたらサキュバス・グループの高級娼館にあるキャバレーでお酒を飲み、上階のラブホテルに行って夜の修行をする。

 

 行く先々でベテランサキュバス嬢から教わった高等技術をミュール相手に色々と試して、少しずつ自信も付いてきた。

 これなら、あのシルキーにも勝てるかもしれない。

 

 

 さて、安全な中央大陸に戻ってきたからにはハムカーの旅も終わりになる。

 マーレ郊外にあるフライス航空の小さな飛行場から、毎度おなじみ小型プロペラ飛行機、忍者ハヤテ号で出発だ。

 

 4人乗りだとちょっと狭いので、ハーフリング化した俺がアイリスの膝の上に収まることでどうにかする。

 後頭部に感じるおっぱい枕……最高の座り心地だ。

 

 なお、アンバーは後ろの荷物置きでクッションの中に埋もれている。

 ずっとこのままだと流石に可哀想なので、時々交代するとしよう。

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