マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第274話 テバール再び

 更にルメー砂漠の上空を飛び続けること数時間、俺達はようやくルメー首長国連邦の首都テバールまで辿り着いた。

 

 円形の城塞都市の外周をしばらく飛ぶと、城壁の外側に隣接するように造られたテバール飛行場が見えてくる。

 

 何度も拡張工事が行われた跡がある滑走路は砂除けの石壁で囲われており、その内側には城壁にくっ付いた石造りの空港ターミナルに高い管制塔、そして巨大な格納庫が建っていた。

 

 他の街との交流の全てを飛行機に頼っているルメー首長国連邦のハブ空港ということもあり、これまで見た中で一番の規模を誇っているようだ。

 

「こちら登録番号000番、忍者ハヤテ号。着陸許可を頼むにゃ」

 

 航空無線機のランプが点灯して管制塔に繋がったことを確認したミュールは、受話器を持ち上げて管制塔との通信を開始した。

 

『確認しました。城壁から一番遠い、3番滑走路をお使いください』

「了解にゃー」

 

 ミュールは受話器をガチャリと元の場所に戻して通信を切った。

 ホバークラフト機構を発動した忍者ハヤテ号は、難なく滑走路に着陸する。

 

 開いたコックピットから飛び出して大地に降り立つと、砂を踏んだ靴がじゃりっと音を立てた。

 

「やっと着いたねー」

「ようやくじゃな。さて、既に連絡は届いておるはずじゃが……」

 

 俺がハーフリング化を解いてヒューマンに戻っている間に、ミュールは忍者ハヤテ号を装具に仕舞う。

 

「とりあえずターミナルに行くか」

「ここの飛行場、結構混んでいるみたいにゃ。危ないから遠回りするにゃ」

 

 俺達は砂除けの石壁沿いに敷かれた歩道を歩いて、空港ターミナルに向かった。

 ターミナルの付近にはフライス航空で運用されている最新機種とは違う、旧式のデザインをした小型プロペラ旅客機が何機も待機していた。

 

 ターミナルの出入口――扉すらない全開放型—―から出てきた褐色肌の女性客室乗務員に続いて、大荷物を抱えた砂漠の民がぞろぞろと行列を作って歩いている。

 

 荷物のあちこちからピン〇ーみたいなペンギンのマスコットキャラクター、ミノリューのイラストが見え隠れしているのを見るに、ルメー首長国連邦で唯一のグンシモールで観光した帰りってところか。

 

 彼らとすれ違うようにしてターミナルの中に入ると、入ってすぐの場所にある広いフリースペースで侍女服を着たダークエルフの女—―アデニウムが俺達を出迎えた。

 

 中央大陸に着いてすぐシルキー宛てに速達便で手紙を送っていたんだけど、俺達の到着予定日はしっかり伝わっていたようで何よりだ。

 

「ハルト様、アンバー様、ミュール様、お久しぶりです。そして初めまして、と言った方がよろしいでしょうか。アイリス教授」

「一応、姉妹だからね。わたしのことはアイリスでいいよーん」

「では、アイリスさんとお呼びしましょう。初めに、あのようなショートメールをお送りしてしまった不手際を深くお詫び申し上げます」

 

 アデニウムは姿勢も正しく、深々とお辞儀をした。

 

「俺を呼び出す為にわざとではなく?」

「アレは私のミスです。シルキー様がどうしてもとおっしゃるものですから試してみたのですが、まさかああなってしまうとは……」

「失敗は誰にでもあるから気にしたりしないさ。アデニウム、俺への用件を聞かせて貰ってもいいか?」

「その件については、屋敷でお話ししましょう。どうぞ、こちらです」

 

 俺達はアデニウムの後ろに続き、ターミナル内にある城門の入口—―武装した衛兵が居たが顔パスだった――を通って都市内に入った。

 外で待機していたラムダ(ラクダみたいな魔獣)に乗せられて、街中を移動する。

 

 敷地面積の限られたテバールの街は既に開発の限界まで達しているから、車やバイクを走らせる車道を確保する余地が残されていない。

 

 無理に機械化を推し進めて事故を多発させるくらいなら、ラムダと荷車だけで運用するのは砂漠の民の文化を守るという意味でも間違った選択ではないだろう。

 

「うんうん、活気があっていいところだねー」

 

 アイリスは街中をきょろきょろと見回して、すこぶる興味津々といった様子だ。

 おのぼりさん全開だが、流石にこの街でダークエルフに手を出すようなやつはいないよな……?

 

「国営の孤児院を作ったと聞いておるが、治安の方はどうじゃ?」

「犯罪率はここ10年で半分以下にまで下がりました。それでも、治安の面ではアクアマリンには遠く及びませんね」

「血を流した甲斐はあったかのう?」

「……ええ」

 

 続けてアンバーは、先ほど俺がダンジョンの塔でロンド族の(まじな)い師ミミルから受けた忠告をアデニウムに伝えた。

 

「あの方々は、やはり勝手に動きましたか……」

「俺達はアクアマリンで平和に暮らしたいんだ。頼むからやり過ぎないでくれよ」

「行政府の中にも改革を望む者は少なからずいますが……これ以上の争いは私も本意ではありません。よくよく、周知しておきましょう」

 

 これで万事解決なんて甘い話あるはずがないが、少なくともメッセンジャーとしての役割は果たしたと言っていいだろう。

 

 

 それからしばらくして、俺達は街の中心地にそびえ立つダンジョンの塔のすぐそばにある族長の屋敷の前までやってきた。

 前回きた時とは違い、屋敷の周囲には対人結界が張られているようだ。

 

 衛兵が持ってきた端末に俺達のギルドカードを登録している間に、やってきた使用人がラムダを獣舎へと連れて行った。

 

 門を潜った俺達は美しい花の咲き乱れる庭を横目に、でかい木の屋敷の中へ。

 邸内の廊下を歩いていると、くすんだ髪色をした褐色肌の侍女がやってきた。

 

「よっ、久しぶり。あん時は世話になったぜ」

 

 このフランクな態度、間違いなく俺達が拾ってシャールに押し付けたストリートチルドレンのビーバーだ。

 

「ビーバー、ハルト様をシルキー様の部屋に案内しなさい」

「分かっているって。ほら、ついてきな」

 

 どうやらアンバー達とはここでお別れのようである。

 

「じゃあ、行ってくる」

「ハルト、頑張るのじゃぞ……!」

「ああ、1日でカタを付けるさ」

 

 そう言い残して歩き出した俺はビーバーの案内を受けて屋敷の奥の奥、族長の部屋の前までやってきた。

 そこで振り返ったビーバーは俺を見て、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべる。

 

「ハルトの兄ちゃんがどんだけヤれるか知らないけどさ。今のシルキー様はかなりヤバいぜ」

「そんなに?」

「老若男女問わず、1時間持った試しがねぇ。搾りかすみたいになっておしまいさ」

「そいつはヘビーだな、心して掛かるとしよう」

 

 ビーバーが横にどいたので、扉の前に立った俺はドアノブを(ひね)って押し開けた。

 部屋の中央には天蓋付きの大きなベッド、そして部屋の奥にはガラスで仕切られたバスルームが見える。

 

「ハルト先生……」

 

 ベッドの中を隠す薄絹のようなカーテンの向こうに彼女はいた。

 シルキー・カーン。

 あらゆる人を魅了する魔性の相を持つ、ルメー砂漠の支配者だ。

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