マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第277話 魂の証明

 朝食を終えた俺達は、すぐに族長の屋敷を後にした。

 シルキーにはギリギリまで引き留められたが、アデニウムのおかげでなんとか逃げ出すことができた。

 

 たった一晩でアレだけ搾り取られたんだ。

 ズルズルと滞在を引き延ばしたら、俺は干物になって死んでしまう。

 

「すっかり忘れていたが、まだ一つ懸念(けねん)が残っていたな……」

 

 いつもの流れでテバール飛行場を出発し、ルメー砂漠を越えてアクアマリンに向かう忍者ハヤテ号の機上から、俺は遠く北東の方角にデスマウンテンの影を見た。

 

 アイリスの膝の上で—―当然ハーフリングスタイルだ—―双眼鏡を覗き込んでみると、まーじでデスマウンテンの横っ腹にこんぺい糖みたいな形の銀色に輝く塊がめり込んでやがる。

 

「ハルトくん、わたしにも見せて。……うわー、本当だ」

 

 持っていた双眼鏡をアイリスに渡した俺は、柔らかなスク水おっぱい枕に頭を預けて目を閉じた。

 お昼にはアクアマリンに着くはずだから、それまで仮眠を取ることにしよう。

 

「どれ、わしにも見せい」

「あちしも見たいにゃ……」

「ミュールちゃんはしっかり前を見ててよー」

 

 ローディアで7連勤をした時よりも、積み重なった疲労は大きかったようだ。

 あっという間に俺の意識は深い闇の中に落ち、みんなの話し声は遠のいていった。

 

 

 パシャリと冷たい水が頬を打つ感触に目を覚ました俺はパチリと目を開いた。

 天井の模様と照明の形に見覚えがある。

 どうやらここは、アクアマリン探索者ギルドの応接室(豪華な方)のようだ。

 

「アクアマリンに着いたなら、起こしてくれたらよかったのに」

 

 横になっていたジャイアントサイズのソファから身を起こすと、アンバー達の背中越しに普通サイズのソファに座る人魚の姿が見えた。

 夢も見ず熟睡していた俺の顔面に冷や水をぶっかけてくれたのはエクレアだな。

 

「どれだけ起こしても起きなかったのはお主の方じゃろう」

「それはもう、ぐっすりと眠っていたからねー」

「運ちゃんにアンバーの弟と勘違いされてたにゃ」

 

 アンバー達はアクアマリン飛行場からハーフリングタクシーに乗って探索者ギルドまでやってきたのだろう。

 

「ちゃんと訂正したんだろうな?」

 

 俺は念じてヒューマン姿に戻ると、右手に握り込んでいたハーフリングオーブを黒髪に隠れた右耳のピアス型装具に仕舞った。

 

 結構伸びてきたみたいだし、今度行きつけの理容室—―巨乳のお姉さんが理容師をしている、たまにおっぱいの当たる素晴らしい店――に行って切って貰おう。

 

「しておらんから、変な噂が流れるかもしれんのう」

「そこはしておけよ……」

 

 俺はアンバーとアイリスの間に割り込むように、ソファの端に腰を下ろした。

 テーブルの上には西大陸や西方諸国の土産菓子がこれでもかと積まれており、エクレアはビッグちょびハヤテぬいぐるみ(防水タイプ)を胸に抱いていた。

 

「アンバー達から旅の話を聞いていたけど、随分(ずいぶん)と好き放題していたみたいじゃない。このエロ助」

 

 つまり旅の土産話が一通り終わったから俺を起こしたってことか。

 壁に掛けられた時計を見るに、既におやつ時は過ぎているようだ。

 

 お昼を抜いて腹ペコの俺は、開封済のペガサス饅頭(ずんだあん入り)を一つ手に取って大口でかぶり付いた。

 ううむ、これは熱い緑茶が欲しくなるな。

 

「そのエロが無ければ、俺はテバールでシルキーENDを迎えていたぞ」

「あの国がどれだけアクアマリンに依存していると思っているのよ。その時は外交交渉で取り返していたわ」

 

 エクレアはルメー首長国連邦の国営商社に対して無償で土地を貸与したり、輸入作物の関税率を大幅に引き下げたりしている。

 大使のシャールが黒塗りの高級車を乗り回したりできているのはそれが理由だ。

 

「待て、わしらが捨てられる前提は止めてくれんか」

「わたしはハルトくんと暮らせるならどっちでもいいかなー。……あ、やっぱり上に怒られるからダメかも」

「街から追い出されて潜入作戦とかやってみたかったにゃー」

 

 どんどん話が脱線していっているので、俺は軌道修正を試みる。

 

「エクレア、そろそろ本題に移らないか」

「本題ぃ~?」

「ほら、隕石だよ。デスマウンテンの」

「ああ、アレね。今一番詳しいやつを呼び出しているところだから、もうちょっとだけ待っていなさい」

「詳しいやつ……アザゼルのことか?」

 

 俺が尋ねると、コンコンと応接室の入口の扉がノックされる音がした。

 

「そうね、って噂をすれば……」

 

 ガチャリと音を立てて扉が開き、魔導士(ウィザード)服を着た長髪の天使が入室してきた。

 その額には金属製のサークレットが()められている。

 

 俺の巨乳アイは、彼の服を盛り上げる二つの双丘が間違いなくアザゼルのおっぱいであるということを確認した。

 

「久しいな、『こん棒愛好会』よ」

「再びお主と相見(あいまみ)える日がこようとは、思いもしなかったわい」

「君達ならば必ず次元の狭間(はざま)より生きて帰ると、私は予感していたとも。しかし……あの強情な娘をよく更生させたものだ。驚いたぞ、ハルト・ミズノ」

 

 ユニエルの心変わりを更生と称するか。

 かつてアザゼルが師としてどのようにユニエルと接していたかが、言葉の節々から垣間見えるようだ。

 

「それはまぁ、成り行きでして……」

「成り行きでどうこうできるようなものではない。きっとそれが、君の運命だったのだろう」

 

 探索者ギルドの初代ギルドマスター、最上級天使アザゼルはコツコツコツと足音を立てながら部屋を歩くと、大小二つのソファの間にスッと手をかざした。

 彼は虚空より現れた小さい背もたれの付いた椅子に腰掛け、優雅に足を組んだ。

 

「さて、私も忙しい身だ。何から知りたい」

 

 俺が口を開こうとするよりも早く、アイリスがシュバっと手を挙げた。

 

「はいっ、あの隕石の正体について教えてください!」

 

 アイリスはまるで子供のように目をキラキラと輝かせている。

 こんな姿、初めて見るぞ。

 学生時代の彼女は目上の人を相手にする時、いつもこんな感じだったのかなぁ。

 

「アイリス女史、良い質問だ。まずはこれを見てくれ(たま)え」

 

 アザゼルが懐から取り出してぺらりと見せた紙片。

 その一枚の紙切れには、デスマウンテン隕石騒動の始まりである全ての元凶のステータスが印刷されていた。

 

 ********** 141018541歳 ランクE 美食家(グルメ) Lv-

 魔力- 筋力- 生命力- 素早さ- 器用さ-

 

「デススターは高度な知性と魂を持つ無機生命体だ。星を喰らう者……我々現生人類では手の施しようのない、生ける終末装置と言えよう」

 

 なんてこったい。

 異星人の宇宙船どころか、モノホンの宇宙怪獣じゃないか。

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