マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第278話 デススターの母です、真相をお話しします

 アザゼルが告げたデススターの正体は、想像力に長けた俺とアイリスに強い衝撃を与えた。

 

「1億4000万歳……? ステータスもレベルもないみたいじゃし、ギルドカードが壊れておるんじゃないか?」

「なんだかよく分からないにゃ」

 

 しかしアンバーとミュールには意味がよく伝わっていなかった。

 俺はそんな二人にそれっぽく説明する。

 

「要するに生きているゴーレムだ。ステータスを持たないのは、外からやってきた証明みたいなものだろうな」

「なるほどのう」

「おかしいね、その話が本当なら悠長にしている余裕なんてないはず。アザゼルさん、どうしてデススターはデスマウンテンを()()()の?」

 

 アザゼルは数枚の写真を懐から取り出した。

 

「デススターを制御する者がいる」

 

 テーブルの上に放られて広がったその写真には、空を飛ぶ小さなこんぺい糖のような物体、デススターの棘の付け根の一つに括られたリングのような構造物、浮遊するもさもさとした銀色の触手が生えた一つ目の怪物が写っていた。

 

「それは『リング』の内より現れ、デススターの調査に(おもむ)いた我々に『(マザー)』と名乗った。『(マザー)』は魂を持たない人工知能であり、認知能力の異なる知的生命体同士の間を取り持つ万能の通訳だ」

 

 なるほど、こいつがドローンを飛ばしてアクアマリンの調査をしていたわけだな。

 想像するに、原住民の言語データでも収集(しゅうしゅう)していたのだろう。

 

「ふむ、こちらは生きていないゴーレムか?」

「ギガンティックタイタンを究極的に進化させたものと考えて欲しい」

「分かりやすいにゃ」

 

 この答えにはアンバーとミュールも納得した様子を見せた。

 

「『(マザー)』はデススターの行動を制御し、惑星に与える影響を最小限に抑えている。デスマウンテンを選んだのは意図的なものだ。なぜならあそこには、ポゴスタック帝国の蒐集(しゅうしゅう)したレアメタルが大量に眠っているのだからな……」

 

 我々が探し求めていたメル通貨の製造技術はこれで完全に失われた、と言ってアザゼルは深く肩を落とした。

 

「それはもう今更じゃないですか?」

 

 現代社会はキャッシュレスで回っているんだから別にいいじゃん。

 まぁ、ダンジョンの範囲外に住んでいる人間が割を食うと困るから探索者ギルドは赤字を垂れ流しながら手作業でちまちまとメル通貨を作っているわけだけどさ。

 

「……デススターがカースダンジョンのある東大陸に落ちなかったことだけが不幸中の幸いだ。さて、次は『(マザー)』がこの惑星にやってきた真の目的を話そう」

「目的……」

「デススターの職業欄に着目すると分かるが、あの者は未知の味覚を追求することに生涯を掛けている。しかしながら、ブルームーンのミスリルを味わうことは叶わなかったようだ」

「そうか、不壊性質!」

 

 アイリスはパチンと両の手を合わせた。

 

「『(マザー)』の要求はただ一つ。この惑星より立ち退いて欲しくばデススターの食に耐えうるミスリルを提供せよ、とのことだ」

 

 俺はこの時点でもう、この後に続く展開が読めてしまった。

 

「どうせ俺が世界樹の雫を飲んで、限界までミスリルを作れってことだろう。死ぬほど疲れるから、アザゼルが代わりにやってくれない?」

「世界樹の雫を服用して錬金術スキルを行使した実績のある者は君だけしかいない。君が私の為に世界樹の雫を用意できるというのなら話は別だが……」

「はい、もう結構です」

 

 血反吐を吐いてどれだけ頑張っても指名クエストの報酬は100万メル、これがAランク探索者の辛いところね。

 

「アザゼルさんがそう言うってことは、ミスリルプレートでは代わりにならないみたいだねー」

「デススターと我々では時間の感覚に大きな乖離があるようでな。ミスリルプレートでは、味わう前に溶けて消えてしまうらしい」

 

 アザゼルは懐から取り出した分厚い資料をテーブルに置いた。

 

「アイリス女史、君の考案したDCS(器用さ補正システム)術式を拡張したDCS装置を現在、デススターの直近に建造中だ。後日で構わない、意見を聞かせて欲しい」

 

 手に取った資料をパラパラとめくって目を通し始めたアイリスの口から、独り言が(こぼ)れ落ちる。

 

「うわー、まさか理論値の限界までやるつもり? これ、一体幾ら掛かるのかなー」

「およそ1兆メルだ。何万年でも待つと言われているが、億が一でも『(マザー)』の制御が外れたらこの惑星は核を食い尽くされて滅亡する。絶対に失敗は許されない」

 

 スケールが違い過ぎて眩暈(めまい)がしそうだ。

 

「のうアザゼルよ、その『(マザー)』の言っておることは真実なのか? わしらを(たばか)っておるのではないか?」

「そうにゃ、本当は嘘をついているかもしれないにゃ!」

 

 それは確かに言えている。

 さしたる対価もなく、惑星を人質に取って要求を突きつける。

 しかも広範囲に毒電波を垂れ流すおまけつきときたもんだ。

 

「もちろん裏は取ったとも。その為だけに審問官が3人、廃人になったがな」

 

 宇宙怪獣の心の中に侵入して記憶を読んだのか。

 1億4000年分の情報量だぞ、取捨選択しようがSAN値直葬待ったなしだ。

 

「デススターの(すみ)やかなる退去。これが我々探索者ギルドと魔道学院が導き出した結論だ。DCS装置の完成は来年を目途(めど)にしている。ハルト・ミズノ、君はそれまでの間に十分な準備をしておいて貰いたい」

「分かりました。その代わり、報酬は弾んでくださいよ」

 

 俺は両手で顔をぱふぱふするジェスチャーをした。

 いてて、左右から太ももの肉をつねられた。

 いいじゃんか、アザゼルのおっぱいは別腹なんだよ。

 

「……いいだろう。それでこの世界が救えるというのなら、安いものだ」

 

 まじでか、言ってみるもんだな。

 やはり、大きなおっぱいは世界を救うのだ……。

 

「さて、私はもう行くとしよう。また何か連絡したいことがあれば、ギルドの者を寄越してくれ(たま)え」

 

 立ち上がったアザゼルはスッと手をかざして椅子を装具に仕舞うと、そのまま応接室から退出していった。

 

 ソファにごろりと横になって話を聞いていたエクレアは、去っていく彼の背中にフリフリと手を振っていた。

 

「話は終わりね。アンタ達も日が暮れる前に帰った方がいいわよ」

「エクレア、何か用事でもあるのか?」

「さっきお主のハムカー御殿(ごてん)が完成したと言っておったぞ」

「マジか、仕事が早いな」

 

 俺がハムカー御殿(ごてん)の建築を依頼したメイソン工務店はアクアマリンでも一二を争う腕前を誇るドワーフのハムマン職人、メイソンが経営している小さな建築会社だ。

 

「困ったな。半年は先になると言われていたから、まだ何も準備ができていないぞ」

 

 一応、家具や小物類はアバロンの里やハイランドの里で手に入れたものがポーチの中に入っているが……。

 

「ハルトくん、とりあえずお引越しの方から進めよっか。わたしは家に帰って必要な生活魔道具を作っておくから、明日になったら迎えにきてくれる?」

「そういえば、凄いクーラーを作るって言っていたな。先に設置場所を見なくても大丈夫なのか?」

「家の間取り図はここにあるし、その場でいくらでも調整できるから大丈夫だよ」

 

 アイリスは分厚い資料をウェストポーチに仕舞って、ポンと叩いた。

 

「これで明日の予定は決まりじゃな」

「そうそう、アンタ達の家にアルテミスが遊びに行くと思うわ。悪いけど前みたいに面倒を見てあげて頂戴(ちょうだい)

「ああ、ちゃんと分かっているさ」

「ではまたのう、エクレアよ」

「じゃあねー」

 

 テーブルの後片付けを壁際で暇そうに待機していた守り人のテトラに任せたエクレアは、ビッグちょびハヤテぬいぐるみ(防水タイプ)を胸に抱えたまま部屋の奥の水路に飛び込んで去っていった。

 

 エクレアを見送った俺達は、ジャイアントサイズのソファから降りると――未だに土産菓子を食べている(いや)しいミュールをアンバーが脇に抱えた――応接室を後にしたのだった。

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