マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜 作:我島甲太郎
メイソン工務店で新居の鍵を手に入れた俺達は、バイクに乗ってハムカー
生垣に囲われた広い庭を持つ3階建ての豪邸、今日からここが俺達の家だ。
大通りに向いているハムケツの扉(車を五台止められる駐車場がある)は店舗部分に繋がっているので、まずは脇の路地にある門扉を通って横っ腹の玄関口からお家に入ろう。
俺は先ほど貰った認証鍵をドアノブの上の端末に当ててロックを解除した。
現代におけるホームセキュリティは物理鍵ではなく、ギルドカードを用いた個人認証が基本だ。
まずは手持ちのマニュアルに従って俺達3人のギルドカードを鍵として登録する。
他に登録が必要なのはアイリスと……アルテミスくらいかな。
ハムケツの扉でも同じことをするつもりだが、先に邸内を見て回ろう。
「リビングだけでわしの実家が丸々入るくらい広いのう。贅沢なことじゃ」
「それ、長老の家が小さいだけでしょ」
1階の半分を占める生活用スペースはゆったりとくつろげるリビング空間だ。
大きなガラスの掃き出し窓からは天然芝の生えた広い裏庭が見えており、コの字型のダイニングキッチンには最新式のシステムキッチンが完備されていた。
家の外壁は
これは
「あちしの部屋はどこにゃ!」
ミュールは店舗部分と繋がる廊下にある階段をダッと駆け上がっていった。
「やれやれ、せっかちなやつじゃ」
俺とアンバーは店舗部分と地下の物置をちょっと確認してから2階に上がった。
2階には宿屋でもやるのかと言われそうなくらい沢山の部屋と大きなバスルーム、そして洗面所の隣には細長い衣装室がある。
「こんなに部屋、必要じゃろうか」
「絶対、必要になるって」
何しろ、俺には嫁が3人もいるからな。
後10年もすれば、子供部屋は一杯になってしまうだろう。
俺の寝室—―愛の巣とも言う—―にと広めにした一部屋を除けば変わり映えのない個室をさらっとチェックした俺達は、3階に続く階段を
開きっぱなしの扉の先には、何もないだだっ広い一室とそのど真ん中に大の字で寝転ぶミュールの姿があった。
「あちしの部屋はここがいいにゃ!」
「言っておくけど、ここ書斎だぞ」
空がよく見える明かり取りの天窓には、もちろんUVカット加工のされた耐魔ガラスが使用されている。
月光浴を楽しみながらのんびり読書ができるような快適空間にするつもりだ。
「……今からでも変更できないかにゃ?」
「それはできぬ相談じゃ、諦めるがよい」
「ぬーん、残念にゃ」
床から起き上がったミュールはぴょんと飛び上がって天井に取り付くと、天窓を開けて屋根の上に登っていった。
そこには何もないと思うが……まぁ、好きにさせておこう。
「さて、これで一通りは見て回ったかのう」
「それじゃあ、俺はアイリスを迎えに行ってくるよ。アンバーはその間に家具を設置しておいてね」
「うむ、わしに任せるのじゃ」
後のことをアンバーに任せた俺は、バイクに乗って人魚通り商店街にある魔道具工房バタフライへと向かった。
道すがら、商店街の八百屋で新鮮な野菜類を買い込んでポーチに突っ込んでおく。
鬼米のストックは十分にあるし、乾き物も旅の前に用意した分が残っている。
お昼は外食をする予定だから、夕飯と明日の朝ご飯の準備だけをしておこう。
さほど時間も掛からず最低限の買い物が終わったので、俺は勝手知ったる魔道具工房バタフライの扉を開いた。
店内のカウンターにはスク水の美少年、どうやら今日の店番はアザミのようだ。
「あ、ハルトだ。アイリスを迎えにきたの?」
「うん。どうよ、トランスオーブの
「イイ感じだよ。もうちょっとしたらお披露目できるかもね」
「そりゃあよかった。ところで、それは?」
カウンターの上にはカメラのような魔道具の部品が散らばっていた。
アザミは耳に指を添えて、念話でアイリスに連絡をしながら答えた。
「映写機の整備しているのさ。ボクが君に頼まれてアイリスの代わりに作ったやつ」
「ああ、そう言えばそんなこともあったな」
フィルム映画の撮影に必要な機材はアイリスが大昔に作ってあったものの、放映する際のことを全く考えていなかった俺はアザミに映写機や専用の映画フィルムの設計を依頼していた。
「既存特許の組み合わせの割に将来性がありそうだったから引き受けたけどさ。ティアラキングダムの方でも売れているみたいだよ、これ」
アザミは棚から取り出した手のひら大の映画フィルムを俺に見せびらかした。
どうやら巻き芯の部分に仕込んだマジックディスクがフィルムの動きに連動して、録音された音源を再生するハイブリッドな仕組みになっているようだ。
「ハムカーTHEMOVIEの公開もまだなのに、情報が出回るのが早いな」
ちなみに世界初の映画館はアクアマジャイアントランドに作られる予定だ。
朝にヴィオラが言っていたメイソンの大きな仕事というのもそれが関係している。
「どこにでも嗅覚の強い人間はいるものさ」
アザミが椅子の背もたれに背中を預けると、ぎしりと椅子が
それと時を同じくして、工房の奥の地下に続く階段からアイリスが姿を覗かせる。
「おはよー。ハルトくん、マジックコンテナを運ぶの手伝ってくれない?」
アイリスの後ろには念動スキルでぷかぷかと浮かんだ1m四方のマジックコンテナがぞろぞろと列を成すように続いていた。
地下の倉庫から持ってきたようだが、これは4tトラックが必要になりそうな数だ。
「一度にまとめて運ぼうとしないで、少しずつでよくないか?」
「……あっ」
気が抜けて落下しそうになったいくつかのマジックコンテナを、俺は生み出した石の流体で支えた。
「危ないなー。マジックコンテナはもっと大事に扱いなよ」
そう文句を言うアザミの周りには、ちゃっかりプロテクションが張られていた。
マジックコンテナは非常に頑丈に作られているが、もしも壊れたら中身が飛び出してこの工房の中は大惨事なことになるのだ……。
「ごめーん、アザミ兄さん」
手を合わせてちろりと舌を出したアイリスは、お茶目な感じで謝った。
「とりあえず俺のハムカーで運べるだけ運ぶから、アイリスは邪魔にならないところにマジックコンテナを積み上げておいてくれ」
「了解だよーん」
俺は石の流体で6つのマジックコンテナを抱えたまま工房の外に出た。
人魚通り商店街の道路は車が2台すれ違って通れない程度には狭いので、徒歩で大通りに出てから石の流体を変形させたハムカーに積み替える。
ハムカー
自宅と魔道具工房バタフライを4往復した俺は、喫茶リブトンでテイクアウトしたランチセットを抱えたアイリスを助手席に乗せて新居に帰ることになったのだった。