マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第42話 竜牙の刃

 お昼の時間になったので、俺達はエレメンタル狩りを中断して精霊樹海から少し離れた場所にあるレンガ敷きの休憩所までやってきた。

 

 石で洒落(しゃれ)たハムマンデザインのテーブルと椅子を作った俺が親父さんから貰った重箱をテーブルに広げていると、アイリスがギルドカードを見せてきた。

 

「見て見て二人とも、こんなにレベルが上がったよー!」

 

 アイリス 14歳 ランクE 魔道具職人《クラフター》 Lv30

 魔力A 筋力D 生命力D 素早さD 器用さA

 

「器用さAになってるじゃん。やったなアイリス」

「ハルトくんは今レベルいくつ?」

「……23」

 

 俺のレベルは今日2レベルしか上がっていなかった。

 いや、2レベルも上がったというべきか。

 恐るべきはエレメンタル狩りの経験値効率である。

 

「わしは118じゃな。まあまあってところかのう」

「うわー、アンバーちゃんそんなにレベル高いんだー」

「どんどん差が広がっていくなぁ」

「わしが自慢できるのはこれくらいしかないからのう。もっと頑張らねばな」

「それ、ベストセラー作家さんが言うことかな?」

「わしはもうサインなどしとうない……」

 

 (つら)い体験を思い出して落ち込むアンバー。

 どうやら彼女は例のサイン会がトラウマになっていたようだった。

 

「ごめんよアンバー、早くご飯を食べよう。お腹が膨れたら元気も出るだろうさ」

 

 三段あった重箱の中には親父さんの作ったおにぎりと沢山の総菜が入っていた。

 今日の為に早起きして作ってくれたのだ、ありがたく頂こう。

 

 ……うん、やっぱり親父さんの作る料理は最高に美味い。

 モモちゃんも早くこれくらい上達してくれたらいいんだけどな。

 

「そうじゃのう、ほれアイリスも遠慮せず食うのじゃ」

「いただきまーす。……お、おいひい!」

「家に引き(こも)ってばかりいないで、たまには宿(うち)に遊びにきたらいいのに」

「ごくん。わたしも本当はそうしたかったんだけど、一人で出歩くと誘拐されたりしちゃうからねー」

 

 口いっぱいに頬張ったレイクルマエビフライを飲み込んだアイリスはこともなげにそう言った。

 

「おいおい、誘拐とは穏やかじゃないな」

 

 6歳児が保護者もなしに遊びに行けるくらいにはこの街の治安はいいんだぞ。

 

「ハルトよ、お主は忘れたか? 魔力の高いエルフには特別な価値があることを」

「……ああ、そうだったな。すっかり忘れていたよ」

 

 俺は転生初日にプリメラさんに酷く脅されたことを思い出した。

 あのプリメラさんがそう言うということは、前例が多くあるということだ。

 

 必ず母親と同じ種族の子供が生まれるこの世界では、魔力の優れた男のエルフともなれば引く手数多なのだろう。

 そしてその男のエルフを産むことができる女のエルフも……。

 

「家で技術と知識を(みが)いて、成人したら親と一緒にパワーレベリングしてから独り立ちするっていうのがこの街のエルフの慣習なんだー」

「それでアルメリアさんは俺達にここでの狩りを勧めたってわけか」

「うん。ここでレベル上げついでに集めたエレメンタルコアで魔杖(まじょう)を作って、それで集めた資金で独立するっていうのがうちのやり方なんだよねー」

「それならパワーレベリングを終えたアイリスはもう一人前ってこと?」

「まあね、だから今度からはちょくちょく遊びに行こうとは思ってるよー」

「おお、それは楽しみじゃのう」

 

 俺達が昼食を取りながらそんな感じの会話をしていると、遠くからブゥーンという音が聞こえてきた。

 どうやら他の探索者がやってきたらしい。

 

 しばらくして休憩所のそばに止まったオープンカーから4人の男達が降りてきた。

 

「おーいお前達、エレメンタル狩りは(はかど)っているか?」

 

 真っ先に声を掛けてきたのはドラゴニュートの男だった。

 タンクだろうか、彼は重装備を身に纏《まと》っている。

 

「ゲートまでの道ならもう掃除は済んでおるぞ。わしらが休んでいる今のうちに先へ進むがよい」

「そりゃ助かるねぇ、休憩所に三人しかいなかったから心配だったんだよぉ」

 

 アンバーの返答に、車を装具に仕舞った陽気なバードマンの男が喜びの声を上げた。

 彼はとても身軽な格好をしているので恐らく斥候職なのだろう。

 

「お前達みたいなひよっこがエレメンタル狩りだと? フン、冗談きついぜ」

 

 背中に大剣を背負った顔に傷のあるオーガの男が鼻で笑った。

 装具を使わない辺り、彼は自分の武器を自慢しているようだった。

 

「お前、バタフライの娘だな。アルメリアは壮健(そうけん)か?」

 

 最後の一人はダークエルフの男だった。

 じゃらじゃらといくつもの装具を身に着けている典型的な魔導士《ウィザード》だ。

 

「あー、もしかしてアカシア兄さん?」

「知っているのかアイリス」

「うちのえーと……15番目の兄だったかなー。確かBランク探索者やってたはず」

「兄多すぎだろ……」

 

 この分だとどこにアイリスの兄姉(きょうだい)が潜んでいるか分かったもんじゃないな。

 

「Aランク探索者パーティー『竜牙の(やいば)』のリーダーをしているディノガルドだ。お前達は?」

「わしはアンバー、Bランク探索者パーティー『こん棒愛好会』のリーダーじゃ。もっとも、そこのダークエルフはパワーレベリングの為に連れてきた未成年じゃがの」

「やはりそうだったか」

 

 アカシアはアンバーのその答えを聞いて納得したような表情を浮かべた。

 さっきの話を聞いた限り、彼もまたここでのパワーレベリングを経験しているようだったからな。

 スク水ダークエルフの隣にアルメリアがいなかったので心配でもしたのだろう。

 

「お主ら、ここでは見ない顔じゃが一体どこからきたのじゃ?」

「10年ばかり西大陸の方に行っていてな。先日こちらに帰ってきたところだ」

「ほう、それはご苦労なことじゃったな。何か収穫はあったかのう?」

「積もる話はいくらでもあるが、時間が惜しい。悪いが先に進ませて貰うとしよう」

「わしらもいずれは四層に行くつもりじゃ。その時に詳しい話を聞かせて貰うとするかのう」

「ああ、そうしよう。ではな」

「じゃあねぇお前ら、あんがとよぉ」

 

 彼らは俺達に別れを告げると、精霊樹海の奥に消えていった。

 

「強種族の寄せ集めみたいな感じで見るからに強そうなパーティーだったな」

「そうだねー、……あっ、重箱がない!」

「なんじゃと!?」

 

 気付いたらテーブルに広げていた重箱がなくなっていて、代わりに大量の金貨が積まれていた。

 それを見たアンバーが怒りに拳を握り込む。

 

「きっとあのバードマンの仕業じゃ。極まった斥候(スカウト)は気配を完全に消すことができるからのう」

「アンバー、探索者の窃盗は懲罰の対象じゃなかったか?」

「この程度のいたずらではギルドも目くじらを立てたりなどせんわい。お約束のように代価まで置いていきおって……これは次のネタに使えるのう」

 

 転んでもタダでは起きないアンバーだった。

 

「仕方がない、休憩は切り上げて狩りの続きでもしようか」

「ちゃっちゃと終わらせて早めの夕食を取らねばな。ゆくぞアイリス」

「うん、分かった。よいしょー!」

 

 またもやアイリスがアンバーの背中にドッキングした。

 走り出すアンバーを見送った俺は、テーブルの片付けをして席を立った。

 

「さてと、午後のお仕事頑張りますか」

 

 親父さんのお弁当で小腹を満たした俺達は、午後のエレメンタル狩りに(はげ)むのであった。

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