マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第54話 王都ラブオデッサ

 ドライブインユダで最高の夕食を終えた俺達は国道沿いの小さなモーテルで一泊すると、翌日の早朝から王都ラブオデッサに向けて車上の旅を再開した。

 

「見るにゃ! あれがこの国の名物の魔道列車にゃ!」

 

 広い三車線の国道を高速で走るオフロードカーから顔を覗かせたミュールが、遠くの線路を走る翡翠(ひすい)色の列車を指差した。

 

「ミュールはこれに乗ってアモロ共和国の海都カナンまで行ったんだっけ?」

 

 この翡翠(ひすい)色に輝く(きら)びやかな魔道列車は、世界最大の大国ティアラキングダムが莫大な国家予算を投じて製造したものだ。

 

 車体そのものが世界樹の枝を原料に使った超大容量の魔道バッテリーでできており、魔道列車の運用に掛かるランニングコストを極限まで抑えている。

 

 統一帝国時代、ポゴスタック帝国が万を越える数のギガンティックタイタンを建造してまで世界樹を求めた理由が分かるというものだ。

 

「そうだにゃ。今度はちゃんと客として乗ってみたいものだにゃ」

 

 兆単位のコストが掛かっているだけあって運賃もかなりお高いからな。

 マジックバッグのあるこの世界だと物資の輸送コストはそれなりに安いが、それでも一般市民が気軽に旅行できるほどの金額ではない。

 

「仕事が終わったらわしらはあの列車でアクアマリンにゆっくり帰るとするかのう」

「いいね。俺もアモロ共和国には一度行ってみたかったんだ」

 

 サワムラ氏の奥さんが経営しているという高級旅館に行ってみたいのだ。

 俺は親父さんからそこの宿泊券を貰っているから、なんとタダで泊まれちゃうのである。

 

「あちしも、あちしも一緒に連れてって欲しいにゃ!」

「ジャスティンでパーティーメンバーがお主の帰りを待っておるんじゃないか?」

「アイツらはあちしのことを売った薄情もんにゃ! もう知らんにゃ!」

 

 ミュールは既にうちのパーティーに加入した気になっているようだ。

 うちは「こん棒愛好会」だから小太刀の代わりにこん棒を持つことになると思うんだけど、本当に大丈夫なのだろうか。

 

 あ、そう言えばミュールに小太刀を返すのをすっかり忘れていた。

 

「おいミュール、一つ忘れていることがあるんじゃないか?」

「え、何かあったかにゃ?」

「小太刀だよ小太刀」

「そう言えば路地裏に置いてったままにゃ!? ああ、あちしの相棒が……」

 

 耳を伏せてしょんぼりとしたミュールに、俺はにこやかな顔をしてポーチから取り出した二本の小太刀の持ち手を差し出した。

 

「ほら、これが欲しかったんだろう?」

「そ、それはあちしの小太刀! 拾っててくれたのにゃ? ありがとうにゃ!」

 

 喜びの顔を浮かべたミュールは受け取った二本の小太刀を首輪の装具に仕舞った。

 よしよし、上手いことごまかせたようだな。

 

 俺が胸を()でおろしていると、アンバーがこっそり俺に耳打ちしてきた。

 

「(お主、今の今まで忘れておったな)」

「(へへへ、悪い悪い)」

 

 それもこれもおっちょこちょいなこの猫娘が悪いのだ。

 俺はミュールに責任転嫁した。

 

 国道を行くオフロードカーの車内には、サクレアの鉄道ソングが流れていた。

 

 

 アクアマリン市を旅立ってから3日目、俺達はいくつかの町を経由してついにティアラキングダムの王都ラブオデッサのすぐ近くまでやってきていた。

 時刻は既に夜になっており、車の前方はヘッドランプで照らされている。

 

「ラブオデッサが見えてきたにゃ!」

 

 街灯に照らされた三車線の国道の先に大きな都市が見えてきた。

 そこには遠目から分かるほどに多くの高層ビルが林立しており、その無数にある窓からは室内の照明の明かりが()れ出ていた。

 

「ラブオデッサは凄い都会じゃのう。わしは迷子にならんか心配じゃ」

「ここはオレのホームだ。オレが居る限り迷子になることは絶対ないから安心しな」

「そうか、ならええんじゃが。世話を掛けてすまんのう」

「オレもお前らのことは気に入っているんだ。好きなだけ頼ってくれていいぜ」

 

 何しろチューブ荒野で生死をともにした仲だからな。

 その原因を作ったのも俺達なんだけど、それは棚に上げておく。

 大事なのは俺の機転によって大きなピンチを切り抜けたという結果だけだ。

 

「ありがとうファルコ」

「フン、そういうのはガルムの野郎を倒してからにしてくれよ」

「そんなやつすぐにボコボコにしてやるわい。のう、ハルト」

「まあな、俺達『こん棒愛好会』は最強だ」

「最強にゃ!」

 

 そんな感じのことを話しながらも、俺達の乗るオフロードカーは王都ラブオデッサの中を走っていた。

 30分ほど経つと、とあるホテルの駐車場にオフロードカーは停車した。

 

 車から降りた俺達は早速ホテルにチェックインする。

 俺とアンバーが二人部屋、ミュールとファルコが一人部屋だ。

 

 荷物は全部マジックバッグに入っているので、俺達はそのままホテルのレストランで遅めの夕食を取ることにした。

 そこそこの値段の洋風ディナーを食べながらファルコが質問する。

 

「お前ら、明日からの予定を聞いてもいいか?」

「そうじゃのう、明日はジャイアント・ホールディングスの支社に顔を出して情報収集をするつもりじゃ。そして5日後にサクレアのライブで英気を養って、それから迷宮都市ジャスティンへ向かうとするかのう」

 

 それを聞いたファルコは呆れた顔をした。

 

「サクレアのライブチケットはとっくの昔に売り切れているぞ。今から手に入れるのは不可能だ」

「ふふーん、ところがどっこい。これを見るがよい!」

 

 アンバーがポーチから金色に縁取られたチケットを取り出して見せびらかした。

 ファルコは驚きつつも、低い声でアンバーに忠告した。

 

「おい、今すぐそれを仕舞え」

「どうしてじゃ?」

「持っているのを知られるだけでやべぇんだよ。分かるだろ?」

 

 サクレアファンクラブ上級会員専用スペシャル席のライブチケットだもんね。

 殺してでも奪い取りたいファンなんていくらでもいるだろう。

 

「確かにそうじゃな。わしが迂闊(うかつ)じゃったわい」

 

 ファルコの忠告を受けたアンバーはさっとチケットをポーチに仕舞った。

 周囲を見回してこちらを見ていた客に威嚇(いかく)をしたファルコは、少し考えてから納得したような表情を浮かべた。

 

「なるほどな。お前ら、カーターのおっさんから貰ったのか」

「そうじゃ。4人まで使えるらしいからのう、お主も一緒に行くか?」

「悪いな、オレは遠慮しておく」

 

 どうやら彼は未だにサクレアに会う決心がついていないようだった。

 

「そうか、まあええわい。他に連れて行くやつもおらんから、また気が変わったら教えてくれるかのう」

「ああ、そうさせて貰うよ」

 

 そう言ってファルコはぶどうジュースを飲み干した。

 

 これは実力行使が必要になるだろうな……。

 俺達三人はファルコに気取られないようにアイコンタクトを取ると、息を合わせてこくりと頷いた。

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