マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第55話 ジャイアント・ホールディングス

 中央大陸北東部のアマゾン地方の奥地にある古代遺跡に隠されたダンジョンを発見したミン・ノルとその仲間達は、この特別なダンジョンで魔物を倒しレベルを上げることで大きな力を手に入れた。

 

 ミン・ノルはダンジョンで手に入れた金属で鍛えた武器を手に取ると、仲間達とともにグライズ帝国の圧政から人々を解放する為に立ち上がった。

 

 多くの犠牲を払いながらも軍師ミン・ノル率いるアルビオン解放軍は帝国軍を打倒し、グライズ帝国の支配からいくつもの国々を開放していった。

 

 8年間にも及ぶ長い戦いの(すえ)、ついにアルビオン解放軍はグライズ帝国の帝都ロストセンチュリアまで駒を進める。

 

 皇帝ウルフロード・グライズとの最後の決戦が始まったのである。

 

 ――10分で読めるティアラキングダムの歴史

 

 

 翌日、ホテルのバイキングで朝食を済ませた俺達は王都ラブオデッサの一等地にあるジャイアント・ホールディングスのティアラキングダム支社を訪れていた。

 ガゴリウス氏が子供の頃から持ち歩いていたという大きなルーペのロゴが目印だ。

 

 ジャイアントサイズの高層ビルの入口にあるジャイアントサイズの自動ドアを通ると、ジャイアントサイズの受付……の横にある人間サイズの受付に向かう。

 アンバーは受付にいるエルフの女性に声を掛けた。

 

「わしはアクアマリンからきた探索者のアンバーじゃ。ゲオルグはおるか?」

「お客様、ゲオルグ様とアポイントメントは取っておりますか?」

「取っておらん。じゃがわしの名前を伝えたら必ず会ってくれるはずじゃ」

「分かりました。念の為、ギルドカードを確認させて頂いてもよろしいでしょうか」

 

 アンバーが受付のエルフさんにギルドカードを提示すると、彼女は耳のイヤリングに指を添えて念話でどこかとやり取りをした。

 

 少し待つと、遠くの方からドシンドシンと音を立てながら高そうなスーツを着たジャイアントの男がやってきた。

 

「アンバー殿! お久しぶりです!」

「おおゲオルグ! 息災(そくさい)にしておったかのう」

「ええ。アンバー殿に立ち話をさせるわけにはいきません、すぐに部屋まで案内しましょう。どうぞ、こちらです」

 

 俺達はゲオルグ氏の背中について歩きジャイアントサイズのエレベーターに乗ると、ビルの最上階にあるジャイアントサイズの社長室までやってきた。

 

 ジャイアントサイズの応接ソファに座った俺達に、ジャイアントの秘書の女性がジャイアントサイズの最高級紅茶とジャイアントサイズの最高級茶菓子を提供した。

 

 俺達がジャイアントサイズのでかいティーカップに四苦八苦していると、向かいのソファに座るゲオルグ氏がこう切り出した。

 

「アンバー殿が我々を尋ねた理由など聞くまでもありません。コバルトファミリーの件ですね?」

「お主、良く分かったのう」

「アンバー殿の武勇伝を我々こん棒愛好俱楽部のメンバーで知らぬ者はおりません。私はあなたがこの事件を知れば必ず立ち上がると信じておりました」

「そこまで言われるとちょっと恥ずかしいのう」

 

 アンバーは赤くしたほっぺたを人差し指でかりかりと()いて照れている。

 

「それで、ジャイアントのお前らは連中のことをどこまで知っているんだ?」

 

 ファルコがソファーの肘掛けに身体をもたれながらゲオルグ氏に尋ねる。

 するとゲオルグ氏はソファの背後に控えていた秘書から渡されたジャイアントサイズの書類をテーブルに広げた。

 

「ジャスティンから帰ってきた社員達から聞き取り調査を行った結果、分かったことがいくつかあります」

 

 ゲオルグ氏はテーブルに広げられたジャイアントサイズの書類のうちの一つ、コボルトの写真が載っている履歴書のような紙を指差した。

 

「まずガルムというコボルトの経歴について。この男はかつては探索者として活動していましたが、ダンジョン内での殺人で探索者資格を剥奪(はくだつ)された過去があります。その後王都ラブオデッサに本拠地を持つマフィア組織コバルトファミリーの幹部となり、王都の高級娼館で女衒(ぜげん)などを行っていたようです」

 

 探索者ギルドから取り寄せたらしいガルムのステータス表にはこう書いてあった。

 

 ガルム 35歳 ランクC 斧勇士(ウォーリア) Lv76

 魔力C 筋力B 生命力C 素早さC 器用さA

 

「レベルはそれなりに高いみたいだが、この程度のステータスで上級探索者を(そで)にできるようなものなのか?」

「そう、それが問題なのです」

 

 ゲオルグ氏は次にテーブルの上にあるジャイアントサイズの写真を指差した。

 その写真には高そうなクッションに乗せられている卵のような形をした青白く輝く宝玉が写されていた。

 

「ジャイアントオーブ。どうやらガルムは手にした者にジャイアントの力を与えるこの宝玉を所持しているようなのです」

 

 ジャイアントオーブは絵本「魔道具職人(クラフター)ライザの冒険」シリーズに毎回のように出てくる魔法のアイテムだ。

 本物は絵本に描いてあるものとは見た目が異なるみたいだな。

 

「おいおい、ジャイアントオーブなんて御伽話(おとぎばなし)の中だけのものじゃなかったのか?」

 

 ファルコが(いぶか)しんだ様子でそう質問する。

 

「多くの者はそう思っているでしょう。しかし一部の者だけが真実を知っています」

 

 ゲオルグ氏がアンバーに視線を投げかけると、アンバーはしたり顔で解説する。

 

「これはジャイアント・ホールディングスの創始者、ガゴリウス氏が西大陸の実家から持ち出した家宝なのじゃ。彼はこの宝玉をティアラキングダムのオークションに出品したが、すぐにそれはキャンセルされた。なぜならこのジャイアントオーブはノル王家が1年分の国家予算を出して買い取ったからじゃ」

 

 大国の国家予算1年分って一体いくらなんだよ。

 どんだけ欲しかったんだ、ジャイアントオーブ。

 

「ガルムはジャイアントオーブの力によって得たジャイアントのステータスと獣人の化身スキル、この二つの力によってコバルトファミリーのボスまで成り上がり、そしてジャスティンすらも手に入れたのです」

 

 化身スキルとは獣人種固有の身体強化スキルのことだ。

 ざっくり言うと使用者のケモ度レベルを上げることができるんだが、身体を変化させずに身体能力だけを引き上げることもできる。

 

 高レベルの獣人種は大抵の場合、この化身スキルを使って戦闘を行う。

 なお、ミュールはまだこの化身スキルを扱えないようだった。

 

「彼がティアラキングダムの国宝をどうやって手に入れたのかまでは私には調べられませんでした。ただ一つだけ分かっているのは、ノル王家がこのガルムの凶行に対して緘口令(かんこうれい)を敷いてまで情報封鎖を行っているということだけです」

 

 ゲオルグ氏は知りうるすべての情報を話し終えると、ジャイアントサイズのティーカップを手に取って紅茶を飲んだ。

 

「ノル王家はなぜそんなことをしているんだ。おいミュール、何か心当たりがあることはないか?」

 

 俺がミュールに聞くと彼女はボロボロとこぼしながら(かじ)っていたジャイアントサイズのクッキーを口から離すと、適当に意見を()べた。

 

「そうだにゃー、今の王様のシジオウ・ノルはすんごい無能だって話にゃ。何でも王妃様に隠れてこっそり娼館に通っているとかいないとか、そんな感じの噂を聞いたことがあるにゃ」

「娼館、娼館ねぇ……まさかな」

 

 ノル王家の男性は代々とある特殊性癖を持っていると噂されている。

 ヒントは「魔導具職人(クラフター)ライザの冒険」シリーズ。

 

「そやつはこっそりジャイアントオーブを娼館に持ち出して、うっかり置き忘れでもしたんじゃないかのう」

「で、それをガルムが見つけて自分のものにした。そして王様は失態を隠す為に全部なかったことにしたってわけか。ありえそうな話だ」

 

 ファルコが俺達の考察をそう結論付けた。

 

「仕方がないのう、結局わしらが何とかするしかないというわけか」

「そうだな。ゲオルグさん、貴重な情報をありがとうございました」

 

 俺はゲオルグ氏に頭を下げて礼を言った。

 

「雇われ社長の私にできることはこれくらいしかありませんから、お気になさらず。話は変わりますが、皆様はこれからどうされるおつもりなのですか?」

「あちしらは今週末にあるサクレアのライブに行って英気を養ってから、ガルムを倒しに迷宮都市ジャスティンへ向かうつもりなのにゃ!」

「これを見よゲオルグ、知り合いから貰ったのじゃ。(うらや)ましいじゃろう?」

 

 アンバーがポーチから金で縁取られたチケットを取り出してゲオルグ氏に見せびらかした。

 

「これはこれは、残念ながら先回りされてしまったようです」

 

 ゲオルグ氏が残念そうな顔をして、大きな指先に摘んでいた金で縁取られたチケットを羽のデザインがあしらわれた金の指輪の中に仕舞った。

 

「まさか、ゲオルグさんも……!」

「はい。私はサクレアファンクラブの上級会員、会員No.004です」

 

 ゲオルグ氏は恥ずかしそうに頭を()いた。

 

「カーターに続いて二人目のナンバーズが現れたにゃ……!」

「皆様は今日の予定はまだ決まっておりませんよね? でしたらライブチケットの代わりにこちらを差し上げましょう」

 

 ゲオルグ氏は別の指輪から一枚のチケットを取り出すと、裏にサインをしてからアンバーに差し出した。

 

 受け取ったアンバーの持つそのチケットを横から見てみると、ジョニアート美術館特別招待券と書かれているようだ。

 

「おっ、これはいいものを手に入れたな。ティアラキングダムの上級国民しか入れないジョニアート美術館のチケットじゃねぇか」

「今回は私が保証人になりますから、皆様でぜひ楽しんできてください」

「色々と助かったぞゲオルグ。お主とまた会う日がくるのを楽しみにしておるわい」

「ええ、その時はまたアンバー殿の武勇伝を聞かせてください」

 

 俺達は玄関まで見送りにきてくれたゲオルグ氏と社員一同に別れを告げると、ジャイアント・ホールディングのティアラキングダム支社を後にするのだった。

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