マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第56話 テンカイ城

 グライズ帝国の帝都ロストセンチュリアを舞台にした最後の決戦でついに皇帝ウルフロード・グライズを倒した軍師ミン・ノルとアルビオン解放軍は、グライズ帝国による中央大陸東部の支配に終止符を打った。

 

 ミン・ノルは帝都で盛大な式典を行うと、中央大陸東部全土を領地とするティアラキングダムの建国を宣言する。

 

 その記念として帝都の名前を自らが愛する王妃オデッサの名前から取り王都ラブオデッサへと改名すると、帝城を改装したテンカイ城に居を構え仲間達とともに戦禍で傷ついた街の復興に尽力した。

 

 グライズ帝国の圧政から解放された人々はこのミン・ノルの偉業を(たた)え、彼のことを解放王ミン・ノルと呼ぶようになったのである。

 

 ――10分で読めるティアラキングダムの歴史

 

 

 俺達はファルコに案内された老舗(しにせ)のとんかつ屋で昼食を取ると、オフロードカーに乗り王都ラブオデッサの中心地までやってきた。

 

 テンカイ城の周辺には建築制限が掛けられているようで、この辺りには高層ビルのような建物は一つも建っていない。

 

 俺達の乗るオフロードカーは、緑に(いろど)られた美しい公園の間に通った道路を抜けて巨大な赤褐色の城壁の近くにある広い駐車場で停車した。

 車を降りると、ミュールが城壁を背にして俺達にドヤ顔をする。

 

「これがこの国のシンボル、テンカイ城にゃ!」

「……テンカイ城、見えないんだけど」

「小さなことは気にしないにゃ!」

 

 俺は手に持っていた「みるだむ ラブオデッサ」を開いて、テンカイ城の解説ページに目を通した。

 

 どうやらこのテンカイ城を囲む巨大なドフスブロンズ製の城壁には部外者の侵入を防ぐ為の結界が張られており、バードマンなどが空中から侵入できないようにしているようだ。

 

「まずは城門に向かおうか。そこで入城の受付をしているからな」

 

 ファルコの案内を受けて俺達が解放されている城門まで行くと、分厚い城壁の中にある窓口で事務服を着たハーフリングの女性が安楽椅子にもたれて昼寝をしていた。

 

「コイツ寝てるにゃ。サボりはいけないのにゃー」

「ここに人がくることなんて滅多(めった)にないからな。おい! 起きろ!」

 

 ファルコが窓口のガラスをバンバン叩くと、昼寝から目覚めたハーフリングの女性が大きなあくびをしてからこっちを見て話し掛けてきた。

 

「誰かと思ったらファルコかい。そちらさんは?」

「ウチの客。アンバー、チケットを出してくれ」

「これでええかのう?」

 

 アンバーがゲオルグ氏から貰ったチケットをガラス張りの窓口の下にある隙間から差し入れると、ハーフリングの女性がそれにハンコを押してアンバーに返した。

 

「入場記録取るからそこの端末にギルドカードをかざして。それが終わったら入って良いから。じゃああたしはもう寝るわ~」

 

 あくびをしたハーフリングの女性は再び安楽椅子にもたれて眠り始めてしまった。

 それを見たファルコはため息をついて、俺達に愚痴をこぼした。

 

「この人はいつもこうなんだよ。こんなんで高い給料貰っているなんて、(うらや)ましいったらありゃしないぜ」

「年寄りじゃから仕方ないじゃろう。余り無理をさせるのはいかんぞ」

「マジか。こいつ30代つってたのは噓だったのかよ」

 

 アンバーは同族の年齢なら見ただけですぐに分かるらしい。

 俺にはロリババアとババアロリの区別がまったく付いていなかった。

 

 端末にギルドカードをタッチした俺達は、結界を抜けて城壁の中に入っていった。

 ファルコの解説によると、受付の端末に情報を登録したことで俺達のギルドカードは一時的に結界を通れるパスポートになったのだそうだ。

 

 城壁の中は広々とした公園のようになっており、そのあちこちには大きな建物が建っていた。

 そしてその中心にそびえていたのは巨大な白亜の城、テンカイ城だった。

 

「ほへー、あちしも実物は初めて見るにゃ。凄い綺麗にゃー」

「あれだけ自信満々だったのは何だったんだ?」

「細かいことは気にしなくていいにゃ!」

 

 俺達は舗装された道を歩いて目的地であるジョニアート美術館へ向かっていった。

 その道の途中にはなぜか牛丼チェーン店のマツヤがあった。

 

「なぜこんなところにマツヤが……」

「マツヤはティアキン民のソウルフードなんだぜ。王様だって毎日食いたいのさ」

 

 そんなマックが好きな大統領みたいなことを言われても困る。

 

「アンバーはどう思う?」

「わしがもし王様になったら城の隣にリブトンでも建てるかのう」

 

 どうやらこれがこの世界の人間のスタンダードらしかった。

 俺が王様になったら鬼の隠れ家亭を城の隣に建てることにしよう。

 

「ほら、美術館が見えてきたぞ」

 

 ファルコが羽指した先に、なんか大きい前衛的な建物が建っていた。

 美術館ってどうしてこう変な建物が好きな建築家に設計を依頼するのかなぁ。

 後世に残るものだからって気合を入れすぎてもいいことないだろう。

 

「変な建物にゃー」

 

 俺は心の底からミュールに同意した。

 

 俺達が美術館の入口に立つと、美術館の中から白いスーツを着たダークエルフの女性がやってきてこちらに挨拶してきた。

 

「アンバー様御一行でいらっしゃいますね。わたくし、当ジョニアート美術館のガイドを務めております、アリウムと申します」

「つかぬことをお聞きしますが、アルメリアさんのご家族の方でしょうか?」

「ど、どうしてそれを……!」

「いやいや、スク水を着たダークエルフなんて他にいないでしょ」

 

 白いスーツの胸元からよく見覚えのある紺色の生地が顔を覗かせていたのである。

 

「はぁ、ママの知り合いなら取り(つくろ)う必要がなくなったわね。ハルトくん、ママは元気にしている?」

 

 いきなりくん付けか、どうやらこれが彼女の素のようだった。

 

「アリウムさんが彼女と何年会っていないのかは知りませんが、あの人なら今も楽しく男漁りをしていますよ」

「そっかぁ……。その分だとまだ店の跡継ぎは見つかっていないみたいね」

「それがのう、居るんじゃ。天才魔道具職人(クラフター)の14歳になる娘がのう……!」

「うっそだー、そんな話全然聞いたことがないわよ」

「お主、見せてやるがよい!」

 

 俺は装具からアイシクルカノンの魔杖(まじょう)を取り出してアリウムに見せつけた。

 

「えっ、嘘……これ本当に魔杖(まじょう)!? なんて緻密(ちみつ)な術式なの……」

 

 彼女も一流魔道具職人(クラフター)の娘らしく、魔方陣には詳しいらしい。

 白くどでかいこん棒を()でたりさすったりしながら感嘆(かんたん)の声を上げている。

 

「……確かに、本物のようね。なぜこん棒の形をしているかについては聞かないでおきましょう」

 

 聞かれたら喜んで答えるけどね。

 俺達はBランク探索者パーティー「こん棒愛好会」だってな。

 

「おしゃべりもいいけどにゃー、あちしらは早くジョニアートが見たいんだにゃ」

「おっとこれはわたくしとした者が大変失礼いたしました。それではすぐにでもジョニアート美術館へ参りましょう。皆様をわたくしがご案内致します」

 

 こうして俺達は、白スーツスク水ダークエルフのガイドにジョニアート美術館を案内されることになったのであった。

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