マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第58話 シジオウ・ノル

 俺達がジョニアート美術館の出口で偶然(はち)合わせたその男こそ、このティアラキングダムの国王、シジオウ・ノルその人であった。

 

 彼は黒装束を身に着けた二人の獣人の護衛に身を守られながら、静かにこちらを見つめていた。

 

「父ちゃんの(かたき)……!」

 

 アンバーに片手で引きずられながら床に転がっていた俺は、シジオウに飛び掛かろうとしたミュールを石の触手で(から)めとって地面に転がした。

 

「は、離すにゃ! あちしはあいつを一発ぶん殴らないと気がすまないんだにゃ!」

「お前の父ちゃんの(かたき)はガルムだろ。王様なんて殴ったら打ち首じゃすまないぞ」

「危ないところじゃったのう。よくやったなハルト」

 

 アンバーはようやく俺の手を放して開放してくれた。

 俺は()巻きになって地面に転がるミュールを尻目に立ち上がると、シジオウに目を向ける。

 するとシジオウは俺達を見下したような目をしてこう尋ねてきた。

 

「貴様ら、見ない顔だな。誰の許しを得てこのジョニアート美術館に入っている?」

「シジオウ様、こちらの方々はゲオルグ様の紹介で観光にこられたBランク探索者のアンバー様とその御一行でございます」

 

 アリウムが俺達のことを紹介すると、シジオウの隣にいる黒装束の獣人がシジオウになにやら耳打ちをした。

 

「リトルジャイアントのアンバーか、知らん名だ」

「名などどうでもよい。シジオウよ、お主には一つ聞かねばならぬことがある」

「言ってみろ」

「お主はなぜジャスティンを助けぬのだ。あの場所がノル王家にとって特別なものであることはお主も理解しておるだろうに」

 

 アンバーの問いかけに、シジオウは詰まらなさそうな顔をして答えた。

 

「正しく国税を納め続ける限り誰がダンジョンマスターになろうが構わない。それが国を統べる者として当然の答えだと思うが?」

「それでもオマエは王様かにゃ! ちゃんとキンタマ付いているのかにゃ!」

 

 シジオウは石の触手でぐるぐる巻きになった状態で床に転がるミュールを思いっきり見下してこう告げた。

 

「貴様の不幸などありふれたものに過ぎない。ただそれがジャスティンで起こっただけのことだ」

「ぐぐ……!」

「聞きたいことはそれだけか?」

「ぐうの音も出ないにゃ……」

「レスバが弱すぎる……」

 

 用事が済んだとばかりに(きびす)を返して美術館から出て行こうするシジオウに、俺は背中から言葉を投げかけた。

 

「俺からも一ついいか?」

 

 シジオウは立ち止まるとこちらに振り返った。

 

「貴様は?」

「俺はハルト・ミズノだ。あんたは何をしにここにきたんだ?」

「異なことを聞く。ジョニアートを鑑賞する為、それ以外に理由があるとでも?」

「じゃあ何で出口から入ったんだろうなぁ。まるで最初から()()が目的だったみたいじゃないか」

 

 ここには上級国民だけが楽しめる成人向けのジョニアートが展示されているのだ。

 つまり、こいつの目的は……。

 

「何が言いたい?」

随分(ずいぶん)と欲求不満みたいだな。ジャイアントオーブが恋しいかい?」

「不愉快だ。帰らせて貰う!」

 

 そう言い放つとシジオウは足早(あしばや)に去って行ってしまった。

 

「どうやら図星みたいじゃったのう」

「あの様子なら、ジャイアントオーブさえ取り返せば後はどうにでもなるだろうな」

「うむ。事後処理が楽になりそうじゃ」

「どうでもいいから早く解放してくれにゃー!」

「はいはい、もう王様を追い掛けたりするなよ」

 

 俺はミュールの拘束を解くと、余った石で等身大ライザフィギュアを作った。

 ちょちょいと色を塗ってから空中でくるくる回して細部を確かめる。

 褐色に日焼けしてスク水を着た状態でちょっと白いところを残すのがポイントだ。

 

 うん、これならいいかな。

 ついでに台座を作って倒れないようにしてから俺は操作を手放した。

 それを見たアリウムは目を輝かせながらこちらに詰め寄ってきた。

 

「このような完成度の高いライザフィギュアなど初めて見ました! ハルト様、素晴らしい腕前をお持ちですね!」

「そうですか? 俺なんてまだまだ半人前ですよ」

 

 俺のライバルは数百年にも渡って研鑽(けんさん)を積んできたハムマン職人だからな。

 それに比べたら競争度の低い美少女フィギュア作りなんて大した難易度ではない。

 

「もしよろしければこちらの人形、わたくしに(ゆず)っては頂けないでしょうか?」

「アリウムさんはライザ、お好きなんですか?」

「ええそれはもう! わたくしはライザの冒険の原画を見る為だけにこの仕事を選んだくらいですから! ここまで出世するのにとっても苦労したんですよ!」

 

 どうやら彼女は生粋のライザの冒険オタクのようだった。

 スク水が嫌になって家出したわけじゃないんだな。

 

 いや、それなら白スーツの下にスク水なんて着ないか。

 アルメリア・ダークエルフ族の生態は摩訶(まか)不思議である。

 

「魔力には余裕ありますんで、欲しいのならもう何体か作りましょうか」

「本当にいいんですか!? それでは魔道具制作に失敗して巨大化するライザのフィギュアと――」

 

 俺がアリウムのオーダーを聞きながら等身大ライザフィギュアを作っていると、シジオウが現れてからずっと固まった石のようになっていたファルコが今更になって動き出した。

 

「お前ら、よく王様にタメ口聞けるな……。オレは心臓が止まるかと思ったぜ」

「あんな小物よりもプリメラ・アクアマリンの方が百倍偉いわい。のう、ハルト」

「そうだぞ。所詮(しょせん)は親の七光りよ」

「腹減ったにゃ~」

「後5体だけ、5体だけ作ってください!」

「これは早まったかなぁ……」

 

 こうして俺達のジョニアート美術館への来訪は終わった。

 俺達は帰りにマツヤでテンカイ店限定うまトマハンバーグをご馳走になった。

 アリウムのマシンガンみたいなライザトークを聞きながら……。

 

 ちなみにエッチなジョニアートは見せて貰えなかった。

 俺にはそれだけが心残りだった。

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