マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜 作:我島甲太郎
その日の晩、俺とアンバーはホテルのスイートルームで、ベランダに続くガラス戸から入ってくる青白い月明かりを照明代わりにして愛を
「はっ、はっ、はっ……ふぐぅ、ふ、深いのじゃ……!」
「アンバー、アンバー……!」
本当は全部の仕事を終わらせるまでは我慢するつもりだったんだけどな。
ジョニアート美術館で成人指定のエッチなジョニアートをお預けされた俺が「じゃあ、アンバーが代わりに相手をしてくれるよね?」と聞いてみたところ、彼女は恥ずかしそうな顔をしてこくりと頷いたのだ。
ファルコのおかげで割とスケジュールにも余裕がありそうだったので、もう遠慮をしないことにしたのである。
「ハルト……わしはもう……!」
「くっ……!」
俺達の盛り上がりも頂点に達しつつあったその時。
ベランダに続くガラス張りの引き戸がコンコンと音を立てた。
「ん?」
冷や水をかけられた俺は動きを止めて、カーテンの開け放たれていたガラス戸の方に目を向けた。
するとそこには青白い月明かりに照らされるようにして、黒装束を身に
「誰じゃ!?」
ドッキングを解除したアンバーが薄手の掛け布団で身体を隠しながら
「お楽しみ中のところすまないが、急用だ」
「お前は、あの時の……」
目前にいる彼は今日の昼間、シジオウの護衛を務めていたワーウルフの男だった。
黒髪黒目、黒毛をした黒ずくめのワーウルフ。
アンバーはいつでもいかずち丸を取り出せるように身構えつつ、招かれざる客に用件を尋ねた。
「わしらに何の用じゃ。言っておくが、わしらは強いぞ」
「知っている。だから俺はここにきた」
「どういう意味じゃ」
ワーウルフの男は、
「……ティアラキングダムの危機だ。頼む、力を貸してくれ」
俺とアンバーは顔を見合わせた。
何やらとんでもないことが起こったらしい……。
俺達は眠っていたファルコとミュールを叩き起こしてスイートルームに呼び出すと、黒装束の男から詳しい話を聞くことにした。
「このベッド、何か変な匂いがするにゃー」
ダブルベッドに寝転がったミュールが俺達の愛の
アホ猫め、そういうの恥ずかしいからやめてくれないかな。
「まずは自己紹介しよう。俺はノル王家直属の親衛隊隊長、クロだ」
彼は懐からギルドカードを取り出してステータスを表示した。
クロ 42歳 ランクA
魔力B 筋力A 生命力A 素早さA 器用さA
「アンバーよりレベルが高い人間なんて初めて見たよ」
「
ミュールの疑問に、椅子に逆向きに座っていたファルコが解説をする。
「
ファルコの確認するようなその問いにクロはこくりと頷いた。
「お前達は既に察しているとは思うが、コバルトファミリーのボス、ガルムはジャイアントオーブを人質にして迷宮都市ジャスティンの支配権をノル王家に承認させた。これは公表されていないだけで、既に公的なものとして認められている」
「それが国軍を動かせない理由か」
「じゃが、お主らだけでジャイアントオーブを取り戻そうとは思わなかったのか?」
アンバーがベッドに座る俺の
「ガルムは王家
それだけノル王家にとってジャイアントオーブは大切なものなのだろう。
ならどうしてその国宝がガルムの手に渡ることになったのか。
その真相を知る為、俺はクロに問いただした。
「肝心なことを聞くが、どうやってガルムはノル王家からジャイアントオーブを手に入れたんだ?」
「1年前、シジオウ様は宝物庫からジャイアントオーブを持ち出すと、懐妊中の王妃様に隠れてこっそり王都の高級娼館に向かったのだ。そして高級娼館の支配人をしていたガルムに宿代と
真相はおおよそアンバーの推測通りのようだった。
暗い顔をしたクロは
「それは俺が有給休暇を取ってサクレアのライブに行っている間に起きた出来事で、気付いた時には既に手遅れだった。ガルムは部下を引き連れてジャスティンを強襲し、ノル王家に対して脅迫状を送り付けた。後は知っての通りだ」
暗部の人間も有給休暇は取るんだね。
しかもサクレアのライブって……。
「まさか、あんたもサクレアファンクラブの上級会員とか言い出さないよな?」
「良く分かったな。俺はサクレアファンクラブ上級会員、会員No.001だ」
そう言うとクロは羽のデザインがあしらわれた金の指輪から金に縁取られたチケットを取り出した。
「あのナンバーズの中でも幻の存在と言われているオリジンにゃ!?」
その筋の人間にしか伝わらない業界用語を使わないで欲しい。
クロはチケットを指輪に仕舞うと、真剣な眼差しをしてこう告げた。
「本題に入ろう。今日の夕方、覆面で顔を隠した複数人の男がノドグロミュージックに押し入りスタッフを暴行するという事件が起きた。そしてその場に居合わせた一人の女性が連れ去られた。その女性の名前は……サクレアだ」
その言葉を聞いたファルコは椅子から立ち上がって叫んだ。
「サクレアが誘拐された!?」
「にゃんだって!?」
ついでにベッドに寝ころんでいたミュールも飛び上がって驚いた。
「調査の結果、その男達はコバルトファミリーの構成員であることが分かった。そして誘拐事件の直後、ジャスティンへ向かう国道を一台の大型トラックが走り去るのを確認している。間違いなくサクレアを乗せたトラックだ」
「参ったのう、お主。これは場合によっては国が滅ぶぞ」
「アンバー、そこまで言う?」
「もし彼女の身に何かあれば、その原因がノル王家にあることが
どうやらシジオウは湖に沈められるくらいじゃすまないようだ。
のちの歴史書にサクレア革命なんて名前で記載されてしまいそうだな。
「タイムリミットは4日後に行われるライブ当日までだ。それまでの間にガルムを倒してサクレアを救出しなければならない。お前達だけが頼りだ。頼む、俺達の希望を助けてくれ……!」
深く頭を下げたクロに、俺の
「サクレアはわしらが必ず無事に助けよう。じゃから安心するがよい」
「恩に着る……!」
「うむ。わしらに任せるがよい」
アンバーは腕を組んでうんうん頷いた。
俺はベッドから立ち上がって拳を振り上げた。
「そうと決まれば話は早い、今すぐ迷宮都市ジャスティンへ旅立つぞ!」
「あちしらでガルムのやつをとっちめてやるのにゃ!」
「待っていてくれ、サクレア……!」
こうして俺達は誘拐された歌姫を救出する為に立ち上がるのであった。