マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第65話 弩伏坑道

 ゴブリン兵は俺達をエレベーターのすぐそばにある休憩所へと案内した。

 そこでゴブリン兵は振り返ると、禿頭を()でながら笑顔で話し掛けてくる。

 

「いやア、1年ぶりの客で嬉しい限りですワ。ガルムのせいでこのまま死ぬまで誰もこないとばかり思っていたんでねェ」

 

 ゴブリンの平均寿命は20年だ。

 そしてサブマスターになったゴブリンは宝珠生成の為に寿命が削られて更に短命に……なったりはしない。

 なぜならゴブリンは肉体の寿命よりも魂の寿命の方がはるかに長いからだ。

 

 

 サブマスターの寿命を捧げる宝珠生成システムは余りに非人道的ということもあり、昔から利用されることはほとんどなかった。

 しかし535年前にこのジャスティンのダンジョンマスターにゴブリンの男が()えられたことで、その有用性が明らかなものとなった。

 

 ティアラキングダムが建国された当初は広大な領地の復興の為に莫大な支出が行われていて、国家財政は常に火の車だった。

 当時、ティアラキングダムの宰相であったベネディクトはうんうん頭を悩ませた末に、ついにこの非人道的な宝珠生成システムを利用することを決断した。

 

 その頃はまだ月光教が力を持っていた時期で、迷宮討伐令から逃れる為に厳重に秘匿(ひとく)されていたBランク迷宮ジャスティンで秘密裏に実験は行われた。

 その結果、ゴブリンのダンジョンマスターとサブマスターが宝珠生成システムに最も適していることが判明したのだ。

 

 ティアラキングダムはこうして生成した宝珠を市場に流して財政を再建させ、国内にある他のダンジョンにも同様の仕組みを作ると、ある時を境に一気に市場へ宝珠を放出して宝珠相場を大暴落させた。

 

 その後、安価なゴブリンダンジョン製宝珠で市場を寡占(かせん)状態まで持ち込んだティアラキングダムは莫大な外資を国内に呼び込むことに成功する。

 こうしてティアラキングダムは広大な領地しか持たない貧乏国から世界最大の強国まで成り上がったのである。

 

 

 どうでもいい歴史設定で話が()れたのでそろそろ本編に戻るとしよう。

 

「アンバー様にはこちらの装具をお貸ししまス。どうぞご自由にお使い下さイ」

 

 ゴブリン兵が差し出したジャイアントサイズの指輪型装具を受け取って腕に()めたアンバーは、虚空から銀色に輝く巨大なつるはしを取り出した。

 アンバーはそのつるはしを両手に持ち前後にぶんぶんと振った。

 

「これが噂に聞くドフス鋼のつるはしか。わしも一度使ってみたかったんじゃ」

「流石はリトルジャイアントのアンバー様ですネ。ジャイアント用のつるはしもお手の物ですカ」

「わしのことを知っておるのか?」

「はイ。ジャスティレベリングのジャイアント達は私の仕事仲間でしたからネ。アンバー様のお話は耳にタコができるほど聞きましたとモ」

 

 このジャスティン迷宮四層の弩伏(どふす)坑道はアクアマリン迷宮三層の岩塊(がんかい)台地下層と並ぶ、この世界におけるパワーレベリングの聖地だ。

 

 ここに出現する()()はブロンズゴーレムとスチールゴーレムの二種類。

 前者はゴブリンでもなんとか倒せるくらいには弱いが、後者はジャイアント並みの筋力がないと傷一つ付けられない。

 

 だからガルムが弩伏(どふす)坑道で働くジャイアント達を迷宮都市ジャスティンから追放したことで、この異界はずっと開店休業状態になっていたのだ。

 

 俺達はゴブリン兵からこの弩伏(どふす)坑道での話をいくらか聞いた後、今回の目的であるスチールゴーレム狩りに興じることになった。

 

「ではわしらは狩りに行ってくるからのう。また後で話を聞かせて貰うとするわい」

「えエ、お昼になったらお会いしましょウ」

「ランタン、ありがとうにゃー」

 

 ゴブリン兵から借りた魔道ランタンを片手に持ったミュールが、ギルドカードのマップを見ながら入り組んだ洞窟内を先導する。

 

 少し歩くと、2mほどの大きさの銀色をしたゴーレムの上半身が壁際から列を成すように生えているのが見えてきた。

 そのゴーレムの目の前に立ったアンバーは、つるはしを取り出して頭上に構える。

 

「そおい!」

 

 ガツンと音を立てて銀色のゴーレムの上半身が砕けた。

 何度か殴って完全に破壊すると、その隣のゴーレムの前に立って更に砕き始める。

 

 少し離れたところにいるサクレアがギルドカードを見ながら驚きの声を上げた。

 

「わっ、凄い勢いでレベルが上がっていきます!」

「オレもだ、この感覚は癖になりそうだぜ」

「これであちしも最強の忍者になれるのにゃ!」

 

 この地面から上半身だけが生えているゴーレムは一切動けない上に受肉しており、倒しても魔石を落とさない代わりに経験値と金属が手に入るという旨味の塊のような存在だ。

 

 冒険の果てにこのダンジョンを見つけたミン・ノルとその仲間達は、ここ弩伏(どふす)坑道に足(しげ)く通いレベルを上げて手に入れた金属で武器を鍛えると、グライズ帝国に対して反旗を(ひるがえ)して長い戦いの末に故郷を取り戻したのだ。

 

「ハルト、そろそろ金属の回収を始めた方がいいんじゃないかにゃ?」

「そうだなミュール、すぐに始めるよ」

 

 俺はアンバーが砕いたゴーレムの残骸を石の触手で(から)め取ると、アンバーから預かっているAランクのポーチ型マジックバッグに詰め込んでいく。

 

 ドフス鋼を回収していると、近場のスチールゴーレムを掘り終えたアンバーがこちらにやってきた。

 

「本来のスチールゴーレムはもっとぽつぽつとしか生えてこないのじゃが、ゴブリン達が暇に飽かせてブロンズゴーレムを狩り尽くした結果、スチールゴーレムだけになったというわけじゃ。わしらは本当にラッキーじゃのう」

「今生えているのはこのダンジョンの1年分のスチールゴーレムってこと?」

「うむ。再湧きを考慮するとおおむねジャスティレベリング1ヶ月分といったところじゃな」

 

 通常なら何億メルも掛かるようなパワーレベリング費用がタダになるのはお得に過ぎるな。

 しかもドフス鋼のおまけつき、これが今回の報酬と言っても過言じゃないだろう。

 

「むふふ、わしらでこのスチールゴーレムを一人占めして経験値をしこたま稼ぐぞ!」

「稼ぐのにゃ!」

 

 こうして俺達は丸一日掛けて弩伏(どふす)坑道でのパワーレベリングを行った。

 休憩所でゴブリン兵とお昼を食べたりもしたが、その辺りは割愛(かつあい)することにする。

 

 ガツンガツンと硬い金属が砕け散る音が鳴り響くその暗い洞窟の中には、サクレアの即興(そっきょう)炭鉱夫ソングが流れ続けていたのだった。

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