マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第69話 国境の街ユースト

 俺達が魔道列車から降りて駅の外に出ると、強い潮の香りが鼻をついた。

 どうやらこの駅は街の高い位置に建てられているらしく、手すりのある高台から見下ろした先には海へと続く広い街並みが広がっていた。

 

 眼下にはカラフルなレンガ造りの家が立ち並び、まるでオモチャの街でも見ているみたいだった。

 

「おお、これはいい港街じゃのう!」 

 

 気持ちの良い海風にふわふわの金髪をたなびかせながら景色を眺めるアンバーを横目に、俺は駅から出る時に貰ったガイドブック「みるだむ ユースト」を開いた。

 

「ふんふん、なるほど……」

 

 中央大陸東南部の端にあるティアラキングダム国境の街ユースト、この街はかつてはただの小さな漁村だったそうだ。

 

 ポゴスタック帝国の滅亡とその余波によるダンジョンスタンピードによって大陸中央部の交流が途絶えたことにより、ユーストは中央大陸東部と南部を繋ぐ貿易港としての役割を求められてどんどん規模が大きくなっていった。

 

 そして200年前に街の西に蓋をするように高くそびえ立っているディオゲネス山脈を貫くトンネルが作られて魔道列車が通るようになってから、この街は更に大きく発展したらしい。

 

「アンバー、この街には育ちたてのCランク迷宮があるんだって。行ってみる?」

「ここ最近はダンジョンに行ってないからのう。海都カナンに向かう前に少し肩慣らしをするのも悪くはないかもしれんな」

「ミュールはどう?」

「賛成にゃ。あちしもちょっとお小遣いが欲しいと思ってたところだったのにゃ」

「決まりだな。日が落ちるにはまだ早いから、まずは探索者ギルドに行ってそれからゆっくり宿探しでもするとしようか」

「ハルト、あちしが案内したいから『みるだむ』貰ってもいいかにゃ?」

「いいよ、ほら」

 

 俺がミュールに「みるだむ ユースト」を渡すと、彼女は冊子の中のマップを見ながら歩き出した。

 

 ミュールは赤い猫耳をピクピクと動かしながら、器用に人を避けて進んでいく。

 彼女は仮にも斥候職なので、こういった芸当は得意なのである。

 

 20分ほど歩くと、街の中心部にある大きな役所みたいな建物までやってきた。

 どうやらここが目的の探索者ギルドらしい。

 

 探索者ギルドの中に入った俺達は、タヌヨシに原稿を送る為に2階にあるギルド本部の銀行に行くことにした。

 

「アクアマリンまで封筒を送りたいのじゃが、頼めるかのう?」

 

 アンバーは銀行の受付に行くと、ギルド本部の職員さんに話し掛けた。

 

 少し離れた場所でミュールと長椅子に座って待っていた俺が暇つぶしに辺りを見渡してみると、どうやらこのギルド本部の銀行で働いているのはほとんどが一般採用の獣人種のようだった。

 

 まあ、ティアラキングダムは獣人種の比率が高い国なので珍しくもない光景だ。

 というかステータス特化型の種族が強いこの世界だとヒューマン自体が少数派だからそれも当たり前のことだった。

 

 ティアラキングダムのノル王家もあっという間に獣人に代わっちゃったしな。

 父親が誰だろうと必ず母親と同じ種族が生まれる母系社会の悲しき定めである。

 

「受取人はポンポコ出版のタヌヨシ様で間違いありませんね?」

「うむ。間違いない」

「2200メルになります。お支払いはどうされますか?」

「魔道マネーで頼む」

「では、こちらの端末にギルドカードをタッチしてください」

 

 アンバーが端末にギルドカードを当てると、ユーストペイという音が鳴る。

 

「こちらが領収書です。ご利用ありがとうございました」

 

 職員さんがアンバーに一枚の紙を手渡して「わしとこん棒7」の原稿が入った封筒の発送の手続きは終わった。

 

「ついでにいくらか現金を下ろしたいのじゃが……」

 

 ギルドカードシステムはアザゼルの開発したオーバーテクノロジーを利用しているので、魔道マネーでの決済や探索者ギルド銀行間の送金は迷宮都市にあるダンジョンの範囲内でしかできない仕様になっている。

 

 キャッシュレスは便利だが、ある程度の現金がないといざという時に困るのだ。

 アンバーは銀行から旅費を下ろすと、近くの長椅子で待つ俺達の(もと)へ戻ってきた。

 

「口座に印税が思ったよりも入っていてビックリしたわい。タヌヨシも頑張っておるようじゃのう」

「それだけ読者が増えてくれているのはありがたいね。次回作も頑張らないと」

「寄り道もほどほどにして、早めにアクアマリンまで帰らねばな」

「でも、取材的な意味では寄り道の方が大事じゃない?」

「そう言われると悩ましいところじゃのう」

 

 探索者ギルドから出た俺達は今夜の宿探しを始めた。

 ティアラキングダムの窓口になる街だけあって「みるだむ ユースト」にもよさげなホテルや宿が沢山載っていて目移りしてしまいそうだ。

 

 俺達が港方面に向かって大通りの歩道を歩いていると、港の方から何やら人の争う声が聞こえてきた。

 

「離せぇ! 俺は絶対にやつを倒しに行かないといけねぇんだぁ!」

「駄目だよお父さん! お父さん一人ではあいつには(かな)いっこないって!」

「だがよぉカウリン……!」

 

 どうやら右腕のない隻腕の牛獣人(ミノタウロス)の父親を、牛獣人(ミノタウロス)の娘が引き留めているようだ。

 その周りには漁業関係者だろうか、人だかりができている。

 

 む、よく見たらあの娘……乳が異様にでかい……!

 俺の巨乳センサーがビンビン音を立てているぞ!

 

「あやつら、何を騒いでおるのかのう?」

「分からん。だが俺は何があろうとあの娘の肩を持つぞ!」

「こやつ、乳に目が(くら)んでおる……」

 

 俺は野次馬根性に身を任せ人だかりに突っ込むと情報収集を始めた。

 

「おい、あいつらは何を騒いでいるんだ。誰か事情を知っているやつはいないか?」

 

 そう声を上げると、隣にいた漁師っぽい恰好をした色黒のヒューマンのおっさんが訳知り顔で事情を教えてくれた。

 

「ほら、この間プンレク島の近くにシーサーペントが出ただろう。ブルーノの野郎はそいつを倒しに行こうって騒いでんのさ。まったく、一度返り()ちにあって腕を無くしたばかりだってのに威勢のいいことだ」

「シーサーペント……Aランク海棲(かいせい)魔獣か」

「ああ、やつにはもう10隻も船が沈められている。おかげで今じゃ誰もプンレク島には近付けない。ハムマン祭りも近いってのに困ったもんだよ」

「ハムマン祭り……だと……」

 

 まさかとは思ったが、やはりそうか。

 プンレク島は別名ハムマン島と呼ばれていて、世界で最も多くの種類のハムマンが生息しているハムマン愛好家の聖地だ。

 

 ハムマン祭りは夏に行われるプンレク島のお祭りで、そこでは10年に一度だけ世界一のハムマンを決めるハムマンコンテストが開催されるのだ。

 

 俺も過去のハムマンコンテストの出場者を撮影した写真集は何冊も持っているが、どれも素晴らしい美ハムマンばかりだった。

 

「お主、何か事情は分かったか?」

 

 追いついてきたアンバーがミュールに肩車をされながら俺に声を掛けてきた。

 

「ああ、何でも近くのプンレク島にシーサーペントが出たらしい。そいつにはもう10隻も船が沈められたんだと」

「それで騒いでおったのか。ふむ、やるか?」

「やるしかないな。ハムマン祭りが俺を待っているんだ!」

「これは面倒なことになりそうだにゃ」

 

 なにおう、楽しいことになりそうに決まっているじゃないか。

 

「アンバー、とりあえずあのおっさんを取り押さえられる?」

「よかろう。わしに任せるがよい」

 

 アンバーは肩車されていたミュールの肩に両手を置いてスッと倒立するとバッと人だかりを飛び越えてミノタウロスのおっさんの方へ飛んでいった。

 

 そして争っていたミノタウロス親子を一瞬で引き()がし、ミノタウロスのおっさんの左腕をねじり上げ地面に抑え込んだ。

 

「わわっ!」

「ぐあっ! 誰だぁ、何をするぅ!?」

「公衆の面前で暴れるのはよさぬか。みな困っておろう」

「うるせぇ、何も知らないくせによぉ……!」

 

 俺は人だかりをかき分けて近くに行くと、石の触手を出しておっさんを拘束した。

 窒息しない程度に口枷(くちかせ)もすれば、うるさい男も静かになる。

 

「アンバー、もういいよ」

 

 俺がそう言うと、アンバーはミノタウロスのおっさんから離れて俺の隣に立った。

 人だかりの中からミュールも両手を頭の後ろに組みながらやってくる。

 

「あなた達は一体……?」

 

 突然の乱入者に困惑するミノタウロス娘の前に、俺とアンバーとミュールの三人が並んだ。

 

「俺達はアクアマリンからきたBランク探索者パーティー『こん棒愛好会』だ。シーサーペントを倒したいんだろう。どうだ、協力者は欲しくないか?」

 

 俺はミノタウロス娘の爆乳を凝視しながら自己紹介をするのだった。

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