マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜 作:我島甲太郎
ハムマン祭り当日、朝早く起きた俺達は朝食を済ませると宿を出発した。
今回はカウリンとカウルーも一緒だ。
カウラはハムマン祭りには興味がないらしく、宿で普段通り過ごすと言っていた。
俺達が港のフェリー乗り場まで行くと、そこには金色のハムマンのデザインがあしらわれた大きなフェリー「ゴールデンハムマン号」が停泊しており、その近くには多くの観光客が群れを成していた。
「うわぁー、早朝だというのに凄い人ですねぇ。ワタシもこんなに人が多いのは初めて見ましたよ」
空でホバリングしているオーブリーは、鳥足に掴んだ一眼レフカメラで器用にパシャリパシャリと写真を撮っている。
「ハムマンがいっぱいいるにゃ。一体どこからやってきたのかにゃ?」
ミュールが指差す先には、小型犬サイズから牛サイズまで大小様々なペットのハムマンを連れた観光客が車両用の渡し橋を通って船室に入っていく様子が見えていた。
「どこからって、ホテルからでしょ」
「あちしが言いたいのはそういうことじゃないにゃ……」
「どんな答えを期待していたんだ?」
「そう言われると困っちゃうにゃ」
「ほれ、乗り遅れないうちにわしらも行くぞ」
アンバーに急かされた俺達が乗客に紛れて渡し橋を通り船室に入ると、普段は車両や貨物が置かれている貨物室に綺麗なシートが敷かれていて、乗客がペットとゆっくり休めるようになっていた。
どうやらそこではハムマン愛好家達がペットのハムマンを連れて交流を行っているようだった。
「かわいいハムマンが沢山いるね、お姉ちゃん」
「そうですねカウルー。きっとみんな自慢のハムマンなのでしょうね……今回のハムマンコンテストも
今日の正午にはプンレク島にあるハムマン神社の前で世界一のハムマンを決めるハムマンコンテストが行われる。
10年に一度、世界中のハムマン愛好家が一挙に集うビッグイベントだ。
一介のハムマン職人としても、これは絶対に見逃せないな。
「ワタシは取材がありますのでここでお別れです。また後でお会いしましょう」
オーブリーはハムマンコンテストの参加者に取材を行うつもりらしい。
カメラを構えて突撃して奥にいるジャイアントハムマン連れの夫婦と話し出した。
「この船のデッキにはこっちから行くと近道なんですよ」
このフェリーに乗り慣れているらしいカウリンに案内された俺達は、通路を通って船の前方にあるデッキに出た。
振り返って上に伸びているブリッジを見上げると、操舵室の窓から乗組員に指示を出しているブルーノの姿が見えた。
「お父さん、今日もお仕事頑張ってるね。おーい!」
カウルーが両手で大きく手を振ると、気付いた乗組員がブルーノの肩を叩いた。
ブルーノがこちらを見て手を振り返すと、カウルーはにっこりと笑みを浮かべた。
「お姉ちゃん、さっきのハムマン見てこようよ!」
カウルーは今の挨拶で満足したらしい。
回れ右をして、もときた道を戻っていった。
「待ちなさいカウルー、走ったら危ないでしょう!」
「待たないよー!」
船室に続く通路を走って戻っていくカウルーをカウリンが追いかけていった。
「挨拶も済んだことだし、俺達は船内でゆっくりさせて貰おうかな」
「そうじゃのう。早いうちに席を確保しておかねば他の乗客に取られてしまうわい」
俺達が船内に移動すると、中の広いスペースに沢山設置されていた椅子席のうち既に半分以上の席が埋まっていた。
「あちしはちょっと船内を探検してくるにゃ」
ミュールはそう言ってどこかに消えていった。
まあ今の彼女なら海に落ちても大丈夫だし、放置でいいか。
俺達が適当に空いている席に座って、船内に流れているサクレアの曲を聴きながら船が出航するのを待っていると段々と眠気が襲ってきた。
昨晩ちょっと頑張りすぎたかな。
「アンバー、島に着いたら起こして……」
ふわふわと
プンレク島、中央大陸から少し離れたところにあるこの離島にはかつて大きなダンジョンがあった。
その恵みは大いに島を
長い時が経ちダンジョンが寿命を迎えると、スタンピードにより島は魔獣の
離島であることが幸いして、島民達は大陸に避難して事なきを得たそうだ。
それから数年後、中央大陸に避難していた島民達が恐る恐る島に戻ると、なぜかそこにはダンジョンから抜け出した魔獣は一匹もいなかったという。
不思議な思いを抱えつつも、島に戻った島民達が壊れた家を建て直し生活を再開したある日のこと。
森の中から黄金色に輝くジャイアントよりも大きなハムマンがやってきた。
その神々しいまでの美しさに、島民達はこのハムマンがダンジョンから出てきた魔獣を倒して島を守ったのだと確信したらしい。
森に消えたハムマンが再び姿を現すことはなかったが、このハムマンを島の守り神として
それだけではちょっと物足りないので、何かしらのイベントが欲しくなった島民達はこの黄金色のハムマンが現れた日を祭日にすることにした。
こうしてプンレク島では毎年ハムマン祭りが開催されるようになったのである。
「—―お主、お主起きんか。もう島に着いたぞ」
「ん……ふああぁ……」
アンバーに揺り起こされた俺は大きなあくびをして目を開いた。
どうやら、もうプンレク島に着いてしまったらしい。
周りを見ると、乗客はもうほとんど降りた後のようで空席ばかりだった。
「アンバー、みんなは?」
「ミュールはカウリン達と一緒に行くと言っておったぞ」
「そっか、なら今日は二人でデートだね」
「むふふ、そうじゃのう」
席を立った俺は、アンバーと手を繋いで歩き出した。
通路を通って階段を降りると、船室を抜けた先にある渡し橋を渡ってプンレク島の港に降り立った。
目の前に広がるのは田舎情緒あふれる木造家屋の街並みとその奥に広がる緑の森。
太陽の日差しに照らされた暑い夏の日、今日は絶好の祭り日和だ。