マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜 作:我島甲太郎
ハムマン祭り会場から離れた俺達は、カウリンに案内されてプンレク島の観光名所を何ヵ所か巡った後に帰路についた。
ゴールデンハムマン号のデッキの上のベンチに座り夕暮れに染まる海を眺めながら、あそこがよかっただの、ここが変だっただのと話していると、隣に座るカウリンが
「皆さん、明日にはここを
「うむ。じゃから今夜がユーストで過ごす最後の夜ということになるのう」
その隣でベンチの背に寄りかかってハムマンのお面をいじっていたカウルーが姉に同調するように言葉を
「みんな、ずっとうちに住んでくれたらいいのに」
アンバーがいなければそうしたかもしれないな。
それくらいには
でも、この世界に生まれ変わった俺にとっての実家は親父さんとモモちゃんのいる鬼の隠れ家亭なんだ。
だから涙を飲んで理想のおっぱいアイランドに別れを告げなければならない。
「俺達はアクアマリンの探索者だから、帰りを待っている人が何人もいるんだ。……いやミュールは違うな。何ならミュールだけでもここに残ったら?」
「ここには強くなったあちしを満足させる敵がいないから、残るのは難しいにゃ」
俺はジャスティンからついてきた猫娘を里親に出そうとしたが、ベンチの下で丸くなっているうちの猫娘はその要求をやんわりと拒絶した。
……向上心があるようだから、もう少し修行の難易度を上げてやるとしよう。
「そうですか、それなら仕方がないですね……」
「カウリンよ、そんなに落ち込むでない。わしがオーブリーに宿の宣伝を頼んでおるからのう、きっとすぐに忙しくなるじゃろう」
ハムマンコンテスト会場で少しだけ話したが、オーブリーはプンレク島で1泊してから海路でアモロ共和国の海都カナンに帰ると言っていた。
どうやら魔道列車のお高い運賃は経費では落ちないらしい。
「宣伝ですか?」
「そうじゃ。
アンバーの励ましの言葉を受け取ったカウリンの目に光が宿った。
彼女はベンチから立ち上がると胸に抱えていたハムマンぬいぐるみを高く掲げた。
「そこまでされちゃったら、私も今まで以上に頑張らないといけないですね。だって私は
ハムマンぬいぐるみを抱きしめて振り返ったカウリンがカウルーに呼び掛ける。
「カウルーももうすぐ初等学校を卒業するんですからね。忙しくなったら宿の仕事をちゃんと手伝ってくださいよ!」
「えー、私は卒業したらおじいちゃんの牧場で就職するつもりなんだけど。そこに彼氏もいるし……」
どうやらカウルーは酪農家志望のようだった。
しかも10歳にして既に彼氏持ちらしい。
「そ、そんな……カウルーに先を越されるなんて……!」
カウルーの突然の告白に衝撃を受けた彼氏いない歴20年のカウリンがハムマンぬいぐるみをぽとりと床に落とした。
風に
「危ないにゃ。あちしがいなかったらせっかくのプレミア品が海の
ミュールからハムマンぬいぐるみを受け取ったカウルーがお礼を言った。
「ありがとう、ミュールちゃん」
二人がそんなやり取りをしている間に、カウルーの裏切りを受けて涙目になっているカウリンはしゃがみ込んでベンチに座る俺の足に
「ハルトさん、やっぱりうちに残ってくれませんか……?」
「まあ、頑張ってイイ人でも探すんだな……」
足に押し付けられたカウリンの爆乳の感触に鼻の下を伸ばしながら、怖い顔をしたアンバーに腕をぎゅーっと痛いくらいに抱かれている俺は空を見上げてそう告げたのであった。
翌朝、俺達は
プラットフォームにあるベンチで待つことしばらく、予定されていた時刻通りに
魔道列車の昇降口でアンバーが車掌に切符を差し出すと、ギルドカードの確認の後にカシャリと音を立てて切符が切られた。
魔道列車に乗り込んだ俺達は通路を歩いて取っていた部屋の扉を開いた。
中は狭い個室みたいになっていて、窓際には小さな二段ベッドが
これはいわゆる寝台車ってやつだな。
俺達はユーストで結構な時間を使ってしまったので、これ以上の寄り道はせずにアモロ共和国の海都カナンまで直行することにしたのだ。
予定では明日の昼過ぎには海都カナンの駅に到着するはずだ。
「あちしは上がいいにゃ!」
「お主の好きに――」
アンバーの返事よりも先に靴を脱いで床に放り出したミュールは、上のベッドによじ登って丸くなった。
まだ朝だっていうのに、ぐうぐうと寝息を立てている。
彼女ならのび〇君といい勝負ができそうだ。
「ミュールはよく寝る子じゃのう。1日の大半を寝て過ごしておるんじゃないか?」
「こうなる前にスキルの練習をさせようと思っていたんだけどな。まあいいか」
俺は靴を脱いでベッドに上がると、窓際に座って駅の売店で買った新聞を開いた。
週刊アモロ新聞の一面には「プンレク島を
日付を見るとどうやら3日前に発行されたものらしい。
カラー写真には俺達がシーサーペントを背景に並んでいる姿が写っていた。
「わしは本でも読むとするかのう。よいしょっと」
靴を脱いだアンバーはベッドに上がって俺の隣に座り肩をくっ付けると、ポーチから取り出した本のしおりを外して続きを読み始めた。
魔道列車の狭い個室の中には、紙をめくるカサカサという音だけが響いている。
それから少しすると、汽笛が鳴って魔道列車が走り出した。
俺とアンバーが大きな窓から景色を眺めると、カラフルなレンガ造りの街並みが少しずつ離れていく様子が見えていた。
「ユーストはええ街じゃったのう」
「さらばユースト、またいつか……なんてね」
俺達は楽しい時を過ごしたティアラキングダム国境の街ユーストに別れを告げ、アモロ共和国の首都、海都カナンに向けて旅立つのであった。