マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜 作:我島甲太郎
アモロ共和国の首都、海都カナンに到着した俺達はひとまず迷宮塔イーラの探索者ギルドへと向かうことにした。
「お腹が減ったにゃ……」
とはいえ時刻は昼過ぎで、俺達の隣には腹ペコの猫娘が立っている。
まずは腹ごしらえからするべきだろう。
「安心するがよい、わしがすぐにおすすめの飯屋に案内してやるからのう」
アンバーは13歳の時に故郷のハーフリングの里を飛び出して探索者となった。
最初の2年は西大陸の探索者ギルド本部がある迷宮都市で活動し、成人して15歳になってから中央大陸の海都カナンへ拠点を移した。
それから2年ほどをこの街で過ごし、彼女がBランク探索者に昇格したのを契機に所属する探索者パーティーが解散したことでアクアマリンへ移住することとなった。
まあこん棒ミュージアムやこん棒愛好倶楽部の総本山があるというのも、アンバーがアクアマリンを根拠地に定めた理由の一つだろう。
「で、ここがそのおすすめの飯屋か……」
駅から徒歩10分、俺達は一軒の瓦屋根の料理屋までやってきた。
その店の看板には達筆な文字で「かまめしどんFC」と書かれている。
「釜めし専門店、かまめしどん
「いい匂いがするにゃ~」
まあ、日本の食パン専門店に比べたらまだまともな店名をしているか。
俺は特に突っ込みを入れることなく、入口の引き戸をガラリと横に引き開けた。
店内は店の外観からイメージした通り、和風の装いをしていた。
「いらっしゃいませー、三名様ですね。こちらのお座敷席へどうぞー」
バイトっぽい若いヒューマンの店員さんに座敷席に案内された俺達は木のテーブルに備え付けてあったメニュー表を開いてうんうん悩み始めた。
分厚いメニュー表には100日通ってもコンプリートできそうにない数の釜めしがラインナップされていた。
こうも料理の種類が多いと、何にするか迷っちゃうな……。
「今のあちしの胃袋ならこのジャイアントサイズもいける気がするにゃ!」
「ジャイアントサイズは20人前じゃぞ。悪いことは言わんから、こっちのオーガサイズにしておくがよい」
「ちぇっ、食べ切れなかったらおにぎりにして持って帰ろうと思ったんだけどにゃ」
「それは流石に貧乏性が過ぎるぞ……」
一体どのような生活を送ったら食べ切れない量を注文しておにぎりにして持ち帰るという発想ができるのか。
いや、コメ〇珈琲みたいな持ち帰り前提の店なら分からなくもないけどさ……。
結局、ミュールはオーガサイズの
俺はのどぐろ釜めし、アンバーはハーフリングサイズの
備え付けのポット型魔道具から湯呑みにお湯を注いで粉末緑茶を茶さじに一杯。
俺が回転寿司屋にありそうなお茶を飲んでいると、ミュールがこれからの予定を尋ねてきた。
「お昼を食べたらイーラの探索者ギルドに行くって言ってたけど一体何をしに行くのかにゃ? あちしは魔力を使っちゃったから探索に行くのは難しいにゃ」
「あれだけ列車内で話していたのに覚えていないのか?」
「あの時はずっと必死だったから全然記憶に残ってないにゃ!」
「そっか、ごめん……」
俺と同じくお茶を飲んでいたアンバーは湯気の立つ湯呑みをことりとテーブルに置いて彼女の質問に答えた。
「わしの元パーティーメンバーがイーラの探索者ギルドでサブマスターをしておってな。そやつに会いに行くのじゃ」
「確かそのパーティーメンバーはバードマンとダークエルフだったかにゃ?」
「そうじゃ。フェニキス族のギザード・イーラとアルメリアの息子のアザミじゃな」
彼らの詳しいプロフィールは「わしとこん棒」3~4巻を読めば大体分かる。
家出した妹を探している一般サクレアファンの
「お客様ー、お待たせしました。ご注文の釜めしが炊き上がりましたよー」
早いな、注文して20分も経っていないのにもう炊き上がったのか。
木製の釜の
俺が
尾頭付きのノドグロが丸々一匹使われた
このノドグロは地球のものとは違って、頭にトサカみたいなトゲが生えていた。
「おおこれじゃこれ、やはりここに寄って正解じゃったのう」
隣に座るアンバーは箸で持ち上げた金色の鯛の切り身を小さなお口でぱくりと
「はふはふっ、生き返るにゃあ~」
俺の対面に座るミュールは5人前くらいはありそうなオーガサイズの釜めしを
今更だけど、ワーキャットって猫舌じゃないんだね。
いや、化身したら猫舌になるのかもしれない。
その辺りのことは後でミュールに聞いてみるか……。
「ぼけーっとしてないで早くお主も食べんか。せっかくの釜めしが冷めてしまうぞ」
「おっと俺としたことが。では、いただきます」
両手を合わせた俺は、箸でノドグロの身をほぐすと熱々の炊き込みご飯と一緒にお口の中に放り込んだ。
すると白身魚の柔らかな食感を追いかけるように、大豆大のお米に染みたノドグロの出汁の旨味が噛みしめるたびに湧き出してきた。
俺はもぐもぐしながらノドグロの頭と骨を取っ払って二口、三口と食べ進める。
おお、少し飽きてきた頃に顔を覗かせるお焦げがいいアクセントだ。
香ばしいお米のカリカリとした食感がたまらない。
……少し下品だが、最後はあったかいお茶を注いでお茶漬けでも作るか。
釜を持ち上げてズズズと
俺は米粒一つ残さず平らげると、両手を合わせて今日の昼食に別れを告げた。
「ごちそうさまでした……」
異世界に生まれ変わっても和食は俺の心を掴んで離さなかった。
やはり俺は心の底から日本人なんだなぁ、と感じた午後の昼下がりであった。