マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜 作:我島甲太郎
覚悟の炎にその身を燃やすギザードの頼みを引き受けた俺達は、とある人物に会う為に迷宮塔イーラへと向かうことになった。
「ではでは皆さん、また後日お会いしましょう」
「オーブリー、例の件は頼んだよ」
「もちろんですよぉ、兄さん。ワタシにドーンと任せて下さい!」
彼女にはブン屋の経歴を活かして一つの仕事を頼んでいる。
ざっくり言うと昨日の事件に関連したものだな。
イーラに号外をばら
「さよーなーらーぁー……」
オーブリーは空を飛んでアモロ新聞社の本社ビルに帰っていった。
彼女の存在が母親にバレたらギザードの計画がご破算になってしまうので、すべてが終わるまではアモロ新聞社にいる叔父に
外に足を用意しているというギザードについていくと、旅館の目と鼻の先の道路に一台の黒塗りの高級車が止まっていた。
ギザードは後部座席の扉を開くと、先に乗り込んで中から顔を出した。
「話の続きは車内でしよう。ほら君達も乗って」
「じゃあ遠慮なく」
車内はリムジンみたいに座席がL字型のソファになっていて、小さなテーブルの上には高そうな酒瓶とグラスが置かれていた。
クーラーの効いた涼しい空気が、真夏の日差しで火照った身体を冷やしてくれる。
文明の利器、最高……。
「このソファふかふかにゃ!」
「金持ってんのな。ダン族のボンボンみたいな真似しやがって……」
「僕はあんまり趣味じゃないんだけどね。女の子を乗せると喜ぶんだよ」
「お主の女遊びは健在か。変わっておらんようじゃのう」
「僕はイケメン(バードマン基準)だからね。女の子の方が放っておかないのさ」
ギザードはダンジョンマスターの直系のサブマスターかつ、Bランク探索者で魔力が高い上に美しい朱色の羽毛をしているというバードマン界におけるヒエラルキーの最上位に君臨している男だ。
彼が微笑みかけて壁ドンでもしようものなら、どんなハーピィであろうと恋に落ちることだろう。
「なあギザード、まさかとは思うが女を囲う為にダンジョンマスターになろうとしているわけじゃないだろうな?」
俺が疑いの目を向けると、ギザードはなんてことはないような感じで答えた。
「どちらかと言うと、認知している子供の将来を考えてというのが正しいかな」
「ハルトよ、こやつにはわしが知っているだけでも50人は子供がおってな。もちろん母親は全員違う女じゃ」
「なんという
少しは明るい家族計画を考えなかったのか?
……いや、それは女の方が許さないか。
「サブマスターになった当時はヤケになっていてね。二人のおかげで僕は真っ当な人間に戻れたけど、その代償は大きかったな……」
恋愛結婚するような一般家庭ならともかくとして、探索者の女はかなりドライだ。
万が一死んでもギルドの養成施設に預かって貰えるからシンママ上等なのである。
迷宮塔イーラでそんな女に群がられてホイホイ手を出したらこうもなろうな……。
「話を聞けば聞くほど属性が盛られていくんだが、ギザードはもう他に隠していることとかないよな?」
「……しいて言うなら認知した子供が500人を越えたことくらいかな」
「まるでゴブリン並みにゃ」
「ぐはっ!」
ミュールの口撃をもろに受けたギザードはソファにだらりと背中を預けて動かなくなってしまった。
「彼が死んだら500人の未亡人を生み出してしまう。これは失敗できないな」
「そうじゃのう、責任重大じゃ」
ギザードの子供達の将来を考えた俺とアンバーは少しやる気を出したのだった。
それからしばらく経ち、俺達の乗る黒塗りのリムジンは迷宮塔イーラ前の駐車場で停車した。
グラサンを掛けた運転手のハーフリングに礼を言って車から降りた俺がぐーんと背伸びをしていると、隣に立つアンバーが何やら言い出した。
「さて、あやつを訪ねる前にまずはミノダムバーガーに寄らねばならぬのう」
「昼前とはいえ、よりにもよってミノダムバーガーか……」
ミノダムバーガーはティアラキングダムに本社を持つハンバーガーチェーン店だ。
世界一のシェアを誇っているらしくマック並みにあちこちに建っているんだが、この店は出てくるハンバーガーの当たり外れがとても大きいのだ。
「なんじゃ、お主は苦手か?」
「最初に行った時、適当に注文したらひじきが山ほどサンドされたバーガーが出てきたんだよね……」
それ以来、俺はこの店の苦手意識が消えないままでいる。
モモちゃんに鍛えられたおかげで好き嫌いは無くなったが、それでもせっかく外食するのなら美味しいものが食べたいのだ。
「それは運が無かったのう、お主」
「アンバーはそういう経験ある?」
「わしもあぶらだけがサンドされた外れを掴まされたことはあるのじゃが、ひじきというのは初耳じゃな」
何でそんなものが平然と売られているのだろうか、
チェーン店なんだから不人気商品はメニューから下げて欲しいものだ。
「これから訪ねるアザミは大層な出不精で、何も世話をしなければ箱買いした保存食しか口にしないんだ。だから今回の計画の鍵になる彼の好物を持っていくことで機嫌を取ろうと考えたわけだね」
「それがミノダムバーガー?」
「そうじゃ。あやつはそこの『ぎゃくせいへきバーガー』が大好物でのう、昔は探索帰りによく食べに行ったわい」
「へー、どんなバーガーなの?」
「レタスとトマトが三段ずつ積まれたヘルシーバーガーじゃ」
思ったよりも普通だった。
まあ、面白い内容だったらとっくの昔に本のネタになっているか。
「ミノダムバーガーは2階にあるからね、まずはそこへ向かおうか」
そんな話をしながら、俺達は迷宮塔イーラの中に入っていった。
ここで迷宮塔イーラの施設配置を軽く解説する。
この迷宮塔の形は穴の開いた大きなひし形をしていて、中心部は広い中庭になっており、その中庭広場の中央にはダンジョンゲートの沈んだ海水プールがある。
マーメイドがダンジョンに出入りできるように、その海水プールは地下トンネルから迷宮塔の外にある海と直接繋がっている。
1階は入口から見て
入口から見て奥側に当たる部分はギルド関係者の住居となっているようだ。
2階から4階までは商業施設の入ったテナントが
そして6階から10階までが探索者向けの宿泊施設や賃貸住宅になっていて、11階から171階まではバードマン専用の住居となっている。
11階から上は階段すら用意されていないのだから割り切りが良いというかなんというか、ベリアルの苦悩が透けて見えるようだ。
10階建てとして一度完成させた建物に手を加えるのは、優れた建築家として名を残した彼に取って相当な覚悟が必要だったに違いない。
迷宮塔の完成から増築開始までの5年間の空白期間がそれを物語っていた。
俺達は迷宮塔イーラの2階にあるミノダムバーガーイーラ1号店にやってきた。
そう、イーラ1号店である。
迷宮塔イーラは171階建てなので住民の数も半端じゃないほど多い。
だから10階ごとにバードマン用の商業施設や学舎があるので、ミノダムバーガーもこの迷宮塔イーラだけで16店舗も存在しているのだ。
「と、いうことでやってきましたミノダムバーガー」
「やってきたにゃ!」
店内は日本のバーガーショップチェーン店とほとんど変わらない。
ただ違うのは、商品の名前が雑で中身が想像しにくいくらいだろう。
壁に貼られている新商品のポスターにも「ビンビンビンアーイクブーグ」とか「おんながもらえるセット」とか書かれている。
俺達は空いているレジカウンターに行ってメニュー表を見ながら注文を始めた。
「よし、俺はいつもの『Wトンカツミノダムブーグ』にしよう」
一番人気だからな、俺はこの店では二度と冒険をしないつもりだ。
「わしは『とりのしたいバーガー』にするかのう」
シンプルなチキンフライとレタスの挟まれたチーズバーガーだ。
「あちしは『ミノダムほんしゃビル』にするにゃ!」
サーロインステーキだけが五段積まれた
「僕は『じょうきゅうこくみんセット』一択だ」
普通のハンバーガーにフライドチキンとドリンク、車のオモチャ付き。
「あとは『ぎゃくせいへきバーガー』も頼めるかのう。すべてテイクアウトじゃ」
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
「うむ。支払いはイーラペイで頼む」
アンバーがギルドカードを端末にかざすと、イーラペイという音が鳴って決済が終わった。
出来立てのハンバーガーが冷めないうちに彼の
俺達は注文した商品の入った二つの紙袋を受け取ると、足早にその場を去ったのであった。