マイマイダンジョン〜転生して魔力極振りチート魔導士になった俺は現代知識で世界を救う〜   作:我島甲太郎

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第93話 アリだー!!

 三層のゲートを潜った先は、スタック銅で作られた暗いシェルターの中だった。

 外の安全を確認する為の分厚いガラス窓の上を青い何かがうぞうぞと動き回り、その隙間から光が差し込んだり消えたりしている。

 

 アザミがプロテクションで出入口を保護すると、アンバーがガラス窓のそばにある落下式の鉄扉(てっぴ)を引き上げて全員でシェルターの外に出た。

 

「おうおう、蟻さんがわんさかおるわい」

「き、気持ち悪いにゃ……」

 

 俺達を守る半透明の青い障壁の周りには、2mほどもの体高がある巨大な青い蟻の群れが(うごめ)いていた。

 ここはAランク迷宮イーラ三層、青鬼蟻塚(あおおにありづか)だ。

 

「ちょいと待っておれ、すぐに片付けるからのう」

 

 蒼銀色のこん棒、かいおう丸を取り出したアンバーがバリアの中から飛び出す。

 彼女がこん棒を振るうたびに青い蟻の身体がばらばらに千切れて吹き飛び、飛び散った蟻の透明な体液がプロテクションにびちゃりと張り付いていく。

 

「1分43秒。前よりも随分(ずいぶん)と処理が早くなったね」

 

 懐中時計を片手に時間を計ったアザミがブルーオーガアントの処理を終えて戻ってきたアンバーにタイムスコアを報告すると、彼女はこん棒を収納してうむと頷いた。

 

「わしもこの3年でかなりレベルが上がっておるからのう。これくらいは楽勝じゃ」

「へえ、今いくつ?」

「129じゃ」

「フォースが近いね。強くなるわけだ」

 

 レベルアップによる身体能力の向上は1レベルにつき1%程度と言われている。

 大体の目安として70レベルでレベル1の2倍、140レベルでレベル1の4倍だ。

 

 レベルが上がってステータスのランクが上がるごとにレベルアップに必要な経験値は増していくし、魔力が増えた分だけ更に必要経験値に補正が掛かる。

 

 金を積んでパワーレベリングをすればレベル70までなら余裕で到達できるが、レベル100を越えるには相当な長期間に渡って深層で狩りを行わなければならない。

 

 だから魔力が極端に低い為にレベルが上がりやすく、他のステータスが突出して高いギフトホルダーのアンバーは帰還者(リターナー)と並ぶ特別な存在なのだ。

 

 

 二人が雑談している間、俺はバリアの外に出て魔石の回収を行っていた。

 消滅していく青い蟻の死骸の下に転がる魔石を石の触手で拾い集めて袋に詰める。

 たまに生きている蟻が紛れているので、うっかり噛まれないように注意が必要だ。

 

 5分程度で回収が終わったので、俺達は四層のゲートへ向けて移動を開始した。

 この青鬼蟻塚(あおおにありづか)の地形はデコボコとした起伏のある荒野になっていて、そのあちらこちらに土を固めてできた巨大な蟻塚が建っていた。

 

 空を飛ぶギザードが俺達を安全な進路に先導しながら、蟻塚の周囲を警戒している青い羽蟻のブルーウィングアントを鳥足で構えた弓で射貫いていく。

 

 なお、飛行弓兵であるギザードのステータスは以下の通りである。

 

 ギザード・イーラ 24歳 ランクB 弓聖(スナイパー) Lv44

 魔力A 筋力D 生命力B 素早さB 器用さB

 

 通常のバードマンは魔力D~C程度が相場なのだが、高魔力の種族と交配を繰り返した為にダンジョンマスター直系のフェニキス族は魔力がかなり高くなるようだ。

 ギザードが探索者のハーピィにモテるわけである。

 

 ついでにアザミのステータスも確認しておこう。

 

 アザミ 39歳 ランクB 魔導具職人(クラフター) Lv86

 魔力S 筋力C 生命力C 素早さC 器用さA

 

 彼はアクアマリンにいた頃は毎週のようにエレメンタル狩りに勤しんでいたらしく、高魔力にしてはレベルが非常に高かった。

 

 

 俺達が蟻塚を避けながらデコボコした荒野を1時間ほど歩くと、遠くに小さく赤褐色のシェルターが見えてきた。

 あれが四層へ繋がるゲートがあるシェルターだろう。

 

 上層と下層を繋ぐゲートがどこの異界にあるかは完全にランダムだ。

 ただ下層に行くほど異界の数は減っていくので、必然的に同じ異界にゲートが存在する確率は高くなる。

 

 ばさりと羽音を立てて降りてきたギザードが困り顔で俺達に相談してくる。

 

「参ったね、シェルターの近くに蟻塚ができているみたいだ」

「それは面倒なことになったのう」

 

 ダンジョンの仕様上、ブルーアントの蟻塚は作ってはダンジョンに吸収されて消えていく(さい)の河原状態にある。

 

 一定時間で蟻塚が消滅するとそこに住んでいたブルーアント達はばらけて広がり、また土を集めて別の場所に蟻塚を建設するのでこの異界では安全なルートは常に変化し続けるのだ。

 

「帰りのことを考えると先に処理しておきたい。二人とも、頼めるかな?」

「任せて。行くよハルト」

「了解」

 

 俺達はシェルターの近くにある塔みたいな大きさの蟻塚のちょっと離れた位置にある高い丘の頂上に移動すると、起伏に身を隠しながら魔杖(まじょう)を取り出して構えた。

 

 俺が構えたのはブレイズノヴァの杖、そしてアザミが構えたのは狙撃銃みたいなメカメカしい魔杖(まじょう)だった。

 なんでも狙撃用にカスタムした魔杖(まじょう)でマナブラスト改というらしい。

 

「君は出入口を狙って。ボクは取りこぼしを処理する」

「分かった」

 

 俺が杖に魔力を込めると、赤い長杖の先に頭くらいの大きさの蒼炎の球体が発生してその内側に炎が渦を巻き始める。

 よーく狙って……発射!

 

「ブレイズノヴァ!」

 

 放物線を描いて飛んだ蒼炎の球体が、いくつも空いた蟻塚の入口の一つに直撃して急拡大する。

 攻撃範囲は蟻塚のサイズから見て10分の1にも及ばない、これは骨が折れそうだ。

 

 外部からの襲撃に対応する為に他の入口からドバっと飛び出してきたブルーオーガアントを、アザミが魔杖(まじょう)から発射した青い弾丸で一匹ずつ処理する。

 こちらに飛んできたブルーウイングアントはギザードが弓で片っ端から射落とす。

 

 俺が続けてブレイズノヴァをチャージして発射し他の入口を潰していくと、いきなり蟻塚の壁を破壊してでかいブルーアントが何匹も飛び出してきた。

 

 ジャイアントサイズの巨大蟻、ブルージャイアントアントだ!

 どうでもいいけどアントが重複して超言いにくい。

 トゲアリトゲナシトゲトゲみたい。

 

 流石にこれはアザミの使っているマナブラストの魔杖(まじょう)では対応できない。

 今こそ近接職の出番だ。

 

 こちらに(せま)るブルージャイアントアントとその後ろに守られるようにしてやってくるブルーオーガアントの前にアンバーとミュールの二人が立ち塞がった。

 

「やっとあちしの出番がやってきたにゃ!」

「ミュールよ、油断するでないぞ」

 

 素早さAの二人がシュバっと丘を駆け下りてブルーアントの群れに突撃する。

 アンバーが一匹ずつブルージャイアントアントの頭を叩き潰し、ミュールがその周囲を守るブルーオーガアントの首を跳ね飛ばした。

 

 

 ブルーアントとの戦争は20分ほどで終了した。

 俺達はブレイズノヴァを受けまくってドロドロに溶けた蟻塚を放置して地面に転がる魔石を回収するとシェルターへと向かったのだった。

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